阿部真央 Acoustic Live Tour “I’ve Got the Power”
全10公演、久しぶりの全国ツアー
ツアー初日の名古屋公演、折り返しの石川公演、最終日の大阪の3公演に参加することができた。
ツアータイトルでもある“I’ve Got the Power”
ツアー当時の最新曲であり、長年所属した事務所を独立する最中に書かれた曲。
”I’ve Got the Power(私は力を得た)”
今回の通称”IGPツアー”は、まさに新たな力を得た阿部真央が過去も現在も未来をも魅せてくれたツアーだったと感じる。
これまで自分が行ったライブの感想をライターの真似事の様な文章で自己満足的に覚え書き程度で書き残すことはあっても、誰かに見てもらうぞ!とかそういう気持ちで文章を書いたことはなかった。
だけど、今回のツアーに関しては ”この感動を絶対に忘れたくない、気持ちを薄れさせたくない。なんだったら誰かと共有したい” その気持ちが強くて、後から見返した時にせめてその時の想いだけでも思い出せる様に、誰かに「そーだった!」と思ってもらえる様に書こうと思った。
それくらい居ても立ってもいられない程に感動が溢れたツアーだった。
2023年9月にリリースされた”Acoustic -Self Cover Album-”を中心に構成されたセットリストは、まるで”らいぶ No.8”を彷彿とさせる様なベスト版の様なセットリストだった。
今回のツアーではキーボードにミトカツユキ、ギターに和田健一郎と、2022年辺りから見る機会が増えた3ピース編成でのライブ。
何より事務所を独立してから初めてのツアー。
新しいチーム、新しく立ち上げた自主レーベル。
阿部真央を取り巻く環境が大きく変わって初めての全国ツアーだ。
そんな新体制で迎えるツアーの1曲目に披露されたのは「じゃあ、何故」
セルフカバーアルバムの中で唯一のアコギ弾き語り曲からのスタート。
所属していた事務所からの独立。大きな一歩を踏み出して臨む初めてのツアーの1曲目を原点である弾き語りに選んだのはあべまの再スタートを意味しているのかな?なんて感じた。
どの公演にも共通していたのが”あぁ baby どうして〜” この歌い出しから明らかに調子が良いのが分かったことだった。
何度もCDで、ライブで聴いてきた曲。なのにいつも以上に伸びやかで芯のある歌声に序盤も序盤から期待でドキドキが止まらなくなった。
一声一声にパワーが詰まっている様である。
そんなドキドキを引きずったまま2曲目には、阿部真央の名刺代わりの1曲 「貴方の恋人になりたいのです」
”ジャッジャジャジャッジャジャ”ってブラッシングの音がこれまではあな恋の合図だった。
今回のツアーではミトさんの奏でる優しいイントロが新しいあな恋の合図に。
あべまの歌声、曲の雰囲気に合わせた鍵盤の音色がまるでオルゴールを聴いてる様な感じで本当に暖かい気持ちにさせられた。
音や歌声に聞き惚れる中で気づいたのがギターの和田さんのあべまを見守る本当に優しい視線だ。
初日の名古屋公演の終演後、たまたま和田さんとお話しすることができたため、そのことをご本人に直接お伝えした。
「真央ちゃん気持ちよさそうに歌ってるな〜、今日も良い声してるな〜って思って見てたんよ〜」って。
きっと和田さんは無意識だったと思うが、あべまを見守るあの優しい表情から醸しだす空気は間違いなく会場中のファンに伝わっていて優しい空間を作る要素の一つとなっていた。
序盤からウォーミングな2曲でまったりしていたところへ「どうしますか、あなたなら」「Believe in yourself」と立て続けにアッパーな2曲!
正直この流れで、いや、今回のアルバムのコンセプトを考えた時にこの2曲が入ってくるなんて予想ができなかった。
先ほどまでの暖かい気持ちに一瞬で熱が加わり、手拍子でリズムを取っていた手が一斉に頭上に上がる瞬間はとても爽快だった。
あーもう本当に楽しい楽しい楽しい(語彙力)
個人的に「Believe in yourself」の”休んだっていいさ また前を向けるなら 確かな一歩を踏み締めて行こう” この部分をライブで聴くと毎回無意識に涙が溢れてしまう。
努力して頑張っても全く報われない。人生の中ではそういうことが往々にしてあって、大人になると休むことを良しとしない風潮が蔓延する。逃げ場がない日々に全部投げ出したくなることもある。
そんな中、あべまは”休んだっていいさ”と歌ってくれるのだ。
歌を通して背中をさすってくれた上に背中を押してくれる様な気持ちになる。
誰にも評価されずに耐え忍んだ日々は無駄じゃないとあべまが肯定してくれる。と、文章を書きながら自分の涙の理由が分かった気がした(笑)
漠然と頭の中にあった気持ちを文字に残すと新しい気づきがある(笑)
ファイナルの大阪公演では2番のサビ前の歌詞を間違えてしまい、その部分をその場でリベンジ(笑)
間違えた部分を歌い終えた後は、キリの良いところまで高速で歌うという中々見ることのできないシーンが見れたのだが、あんなに高速で歌っても一切歌唱力が落ちない所に”さすがベテラン!”と思惑ガヤを飛ばしてしまった(笑)
「ベテランはこんなミスしないんだけどね(笑)」と笑いながらツッコむあべま。
命を燃やす様に歌う姿とゆるーいMCのギャップ。これも阿部真央のライブの魅力の一つだ。
ここで再び「boyfriend」「15の言葉」とメロウな曲のゾーンへ。
アッパーな2曲の熱で一瞬忘れそうになるが、Acoustic-Self Cover Album-を主軸にしたライブなのである。
あべまの歌声は、一発で会場の空気を変える力がある。対バンイベントなどで他のアーティストのファンの方が「あべまちゃんが歌い始めた瞬間空気が変わった!」と嬉しい感想をよく見聞きする。
そういう感想を見る度に「そうだろう!そうだろう!」と嬉しくなっていたが、歌声一つで会場の空気どころかニコニコしていた人達を一瞬で聴き込ませるモードの顔付きに変えてしまうのはまるで魔法の様だ。
ちなみに名古屋では「15の言葉」の歌い出しで「わt・・ふふふーん」と完全に歌詞が飛んで演奏を止めてしまい会場の爆笑を誘うという事件もあった(笑)
それでも仕切り直しでは”そんなことあったっけ?”と言わんばかりに見事に空気を変えていた。あべまのパフォーマンスの前では些細なミスなどただの盛り上げる為のスパイスでしかない。
あべまとミトさんが向かい合って寂しげで影のあるイントロをセッションの様に奏でて始まった「未だ」
一層力強く歌い、ギターをかき鳴らす最後のサビ部分、特に「懐かしいあの日の残像も」この部分のエッジの効いたビブラートが個人的に大好きなのだけど、原曲よりもアコースティックの方がそのポイントがより際立って聴こえて本当に鳥肌が立った。
あべまもインタビューで言っていたが、アコースティックであるが故にあべまの歌がより一層映えるんだというのを一番感じた瞬間だった。
さっきまであんなに優しく歌い上げていたのに、次の瞬間には鋭い目付きで攻めてくる。予想ができない展開に鳥肌を越えてゾクゾクした。
「未だ」でそんなことを強く感じた所に続く「コトバ」「嘘つき」
後にこのツアーの事を振り返った時、間違いなくこの流れを思い出す人が多いのではないだろうか。
言わずもがな圧倒的なあべまの歌唱力に加えて、表情や仕草を含めた表現力が爆発していたのがこの流れだと個人的には思う。
シックでモノトーンな雰囲気の「コトバ」
”心を隠して許すことはキレイじゃない〜そう信じてる”
訴えかえける様に、圧倒的な声量でこの部分を歌うあべま、そんな儚くて寂しいモノトーンな雰囲気に眩しい光が差し込む様な感じがした。
それくらい感情を揺さぶる魂のこもった圧巻の歌声だった。もはや歌声のシャワーである。
そして続く「嘘つき」のあべまのパフォーマンスが胸が苦しくなる程に切なかった。
この曲のレコーディング時のテーマは ”絶望”
全曲解説で「どこまでも絶望を目指した」と話していたあべま。
その目指した絶望を目の当たりにした瞬間だった。
もちろん音源からも絶望は感じられるのだが、消え入りそうな儚い声、何もかも失ってしまった様な切ない表情、救いがない空気感、この絶望はライブでしか感じ取れない。
何か大事なものを愛でるように撫でるように包み込む仕草、最後に片手に掴んだ物に視線を落とし「ここにきっと戻ることを懲りもせず」と悲しそうに歌う姿が脳裏に焼き付いて離れない。
2023年7月のFCイベント、京都での岡崎体育とのツーマンでも嘘つきは披露されたが、弾き語りでなく100%歌うことに集中することで表現の幅が尋常じゃないくらい増幅していると感じた。
アルバム「You」までの歌詞のほとんどは実体験が元になってるとインタビューで読んだことがある。
きっと「嘘つき」もそうなのだろう。
あべまにあんな表情させやがって!!と思う気持ちもあるけど(笑)この切な過ぎる大名曲が生まれたのはその経験のお陰で、そのリアルさがあべまの圧倒的過ぎる表現力を通して自分達の経験や記憶に触れて共感するから猛烈に感動するのではないだろうか。
感情が昂り抑えが効かなくなってる所に、ステージでは中央に椅子が用意され「私だけすいませんね」と腰を掛けるあべま。
今回のセルフカバーアルバムに収録するかどうするか最後まで悩んだ曲として「いつの日も」「側にいて」(公演によって歌い分けられていた)が披露された。
この2曲はカバーアルバム『MY INNER CHILD MUSEUM』にピアノ弾き語りでacousticの発売より以前に収録されている。
2曲とも初期の阿部真央を代表するラブソングだ。
しっとりと、時に熱を込めて歌い上げられるラブソングは先ほどの感情の昂りを落ち着かせてくれる様に優しい時間であった。
MCを挟み「Don't leave me」
ここのMCでは「元はレゲエ調で録る予定だった」と驚きのカミングアウトが飛び出した。
ピアノの旋律とあべまの歌声が綺麗な名バラードとして知れ渡り、あべまと仲良しの歌手のASCAもカバーしているこの楽曲がレゲエ?!と誰しもが「!?」となったのではないだろうか。
そんなカミングアウトの後でありレゲエ要素を探しながら聴くも、ただただ曲の切なさと世界観の美しさに圧倒され全くレゲエを感じることはできなかった(笑)
いつか披露される時が来たら良いな。
IGPツアーで個人的に1番涙が止められなかったのが続く「sailing」だ。
阿部真央史上最もスケールの大きい壮大で美しいラブソング。
最後の方で口いっぱいに空気を溜めて全身を使って声を出す姿はまさに全身全霊。
その姿、歌声があまりにも壮大で、もはや阿部真央という楽器なのではないか?と思ってしまう程であった。
「みんなの心の奥に橋をかける」とツアー前に掲げられたテーマを遂行する様に届けたいという想いが全面に出てたシーンに感動を全身に浴びた様である。
嗚咽を漏らすレベルで泣いて周りを心配させてしまったのはここだけの話・・・。
「キャリアが止まると思った。こうやってツアーができて皆んなの前で歌えていることは奇跡。」
「どうにもならないのであれば自分でハイエースを運転して各地で投げ銭ライブでもやろうかと考えていた」
と、長年所属したYAMAHAからの独立に際して逆境に立っていた事、それに伴い離れていく人がいたことが述べられた。
そんな中、離れていく人ばかりではなく新しく力を貸してくれる人、縁が繋がって今のチームがあり今ツアーがあると。
あべまにとって「歌」とは生きることであり生きる意味、歌うことが生きているということ。死ぬまで歌い続ける。
そんなMCを挟んで披露されたのはツアータイトルにもなっている「I’ve Got the Power」
”この声はどこまでも突き抜けて”
その通りどこまでも突き抜けていく歌声は、今ツアーのセットリストの中で一番力が込められていた。
どんな逆境に立とうともこれからも歌い続けていくという強い意志、覚悟をひしひしと感じた。
感動の絶頂の中、「傘」「I never knew」とダンサンブルでチルいサウンドの楽曲が続く。
ステージを左右目一杯使い、ステージの先端まで来てファンサを交えながら歌うあべま。
目に映る観客一人一人と目を合わせてたんじゃないだろうか。
あまりの距離感の近さに驚く最前列の観客、その様子に歌っている最中にも関わらず思わず笑ってしまうというシーンも印象的で微笑ましかった。
そしてライブでの定番曲「I wanna see you」「ロンリー」と続いて本編が終了したのだが、
本編最後のこの2曲に今までのライブやツアーとは全く違うあべまと客席の距離感の近さを感じた。
「I wanna see you」のシンガロングパートで「もっと!そんなんでいいの?!」とあべまが客席を煽っていたのである。
これまで、あべまがライブ中に観客に何かを求めることにどこか恐縮、遠慮している様に感じていた。そんなあべまがグッと手を引っ張る様に観客に声を求めているのだ。
そんなあべまの煽りに応える様に、会場中の一体感、声のボリュームが更に増した瞬間が今ツアーで一番熱くなった瞬間だった。
これまでも決して距離があった訳ではないが、明らかに演者と観客の見えない距離が縮まっていて嬉しくなった。
そしてアンコール。
1曲目と最後の3曲目は全公演共通で「MY BABY」と「ストーカーの唄」
あべまが気分で選曲していたという2曲目は、「モットー。」「伝えたいこと」「デッドライン」「私は貴方がいいのです」「ポーカーフェイス」
名古屋では「モットー。」金沢では「私は貴方がいいのです」大阪では「ポーカーフェイス」であった。
モットー。とポーカーフェイスはまるでバンドセットのライブなんじゃないか?と錯覚するくらいの盛り上がり!
モットー。ではあまりの盛り上がりに間奏でoiコールが起きるほどで、あべまも思わずニンマリして嬉しそうだった。
何より個人的に一番驚いたのが「私は貴方がいいのです」
まさかこの曲をライブで聴ける日が来るとは思わなかった(涙)
初期中の初期に作られた大名曲、中々ライブでは披露されないレア中のレア曲である。
一本のライブから摂取できる感動や興奮を余裕で超えている状態の中でこんな嬉しい曲が聴けてしまうなんて・・・と金沢公演ではこの1曲のインパクトが群を抜いて凄まじかった(笑)
今回のIGPツアーは、「みんなの心の奥に橋をかける」というテーマが掲げられていた。
参加された方々の心にはどんな橋がかかったのだろう?
言葉にすると安っぽくなってしまうが、壮大だけど繊細で、落ち着きのある色だけどカラフルな、見る角度によって全然色も形も違うけどとてつもなく洗練された橋が自分の中にはかかったと感じている。
これほどまでに没入感の強いツアーは初めてで、ツアーファイナル後のロス感といったらもう・・・笑
阿部真央のライブやツアーに参加する度に、「過去最高だった!」と思うが、間違いなく今回のIGPツアーが自分にとって過去最高の阿部真央ライブであったと断言できる。
アルバム「NOW」、ソロツアー、Zeppツアー、東京ガーデンシアターでの15周年イヤーファイナルと、これから更に盛り上がっていく15周年イヤー後半戦が益々楽しみである。
あっべーーーま!!おーーー!!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?