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再・住所不定無職日記54日目 蒸しパンを蒸した

 朝は6時に目が覚めて、やっと早く起きれたと心でガッツポーズをした、までは覚えているが、もう一度スマホをみたら7時45分でがっかりした。すっかり早起きができなくなってしまった。
 インドから帰ってきてから、急性の軽い気管支炎、急性腸炎、アレルギー性のひどい鼻炎と1週間おきにどこかの具合が悪くなり、病院のはしごをしては、ほとんど寝て過ごしていた。起き上がることもできないような胃の痛みにインドの生水でピロリ菌でも拾ったかと慌てて病院に行ったが、インドでぴんぴんしていて腹痛一つ起こさなかったと話すと、「日本の方がストレスなのかもね」と独り言みたいにいって14日分の数種類の胃薬を出してくれたが、3日も飲めば治った。だけど次は滝のような鼻水が出て呼吸が苦しくなってやっていられなかった。そんなこんなしているうちにあんなに早く起きれたのにすっかり寝坊助になっていた。

 布団の中で少しだけ今日の作戦を考えたが、起きるのを諦めた。6時に起きて7時からやっているカフェに行くのが好きだった。逆に8時から11時までは外に出にくいのだ。
 会社を辞める半年ほど前からマンションの共用部を掃除してくれるシルバー人材センターのおばちゃんと仲良くなった。最初は挨拶くらいだったのに、気がついたら毎日立ち話をし、年末には手作りのおしるこをいただいた。お礼を言うと、次は手作りのシチューがドアノブにかかっていた。
 他人の作った食事がむかしは食べられなかった。学生時代は給食もまともに食べられなくて、牛乳と個包装のパンくらいしかひどい時は食べられなかった。いただきますの号令と同時に読書を開始する姿を見て、担任から注意されたのも思い出だ。
 そんな私が他人の料理を食べることを鍛えられたのは新卒の頃だ。初めての上司が料理好きな男性で、いつもアパートのドアノブに手作り料理をかけてくれた。もちろん気持ち悪かったが、言えずに心療内科で相談して泣いていた。結局断るために勇気を出すよりも、もらってしまう方が楽だったから移動するまで2年ほどもらい続けた。味の感想を求められるからそのうち少しは食べるようになった。南蛮漬け、春巻き、おでん、炊き込みご飯、クリスマスにはタッパーにたっぷりと赤ワインの匂いがぷんぷんするビーフシチュー、皿に盛り付けられたオードブルまで置かれていた。
 今更だけど、そもそも他人からものをもらうことへの抵抗感があがった。でも人生を振り返ると不思議なくらい途切れることなく、常に私にものを恵んでくれようとする関係性が存在した。気がつけばいつもコミュニティに一人は私に食料をくれるひとが生まれてしまうのだった。

 インドでしばらく家を空けて久しぶりに再開した掃除のおばちゃんは、私の姿を見て大層喜び、次の日にはドアノブに紙袋に入った赤飯が掛かっていた。前回いただいたシチューの面取りして同じサイズにそろえた具材を見たときに、おばちゃんが料理好きだとすぐ伝わった。だから、自分で炊いたであろう色が薄めの赤飯も美味しかった。嬉しかったが、きっとまたずっとずっと貰い続けてしまうから、おばちゃんにはなるべく会わないようにしたいのだ。おばちゃんの掃除の時間はエンカウントしないように、外出を控えていた。

 11時まで来年受ける院試に向けて勉強をしていた。転職エージェントからは選考の結果が明日くると聞いていたから、今日はのんびりでいいだろう。12時になってルームメイトたちが出勤すると、蒸しパンミックスをこねて蒸しパンを蒸した。400円で150gのミックスが3袋。1袋で小ぶりなアルミカップ6つ分できたが、手間とコスパを考えると近所の惣菜屋の110円4つ入り芋蒸しパンの方が安いからもう買わないかな。
 13時まで英語の勉強をして家を出た。ピニール・プラスチックゴミと生ごみがいっぱいになったから玄関に置いておいたが残っている。2ヶ月前から暮らしているモンゴル人のルームメイトは絶対にゴミを捨てに行かなくていらいらする。

 家から徒歩で3分の喫茶店へいく。途中によったコンビニで集中力が切れた時用にお菓子を買おうとする。カフェなんか行ってるが、無職なので節約するにこしたことはないからガブリチュウで手を打つ。
 チェーンのカフェはwi-fiが安定していて電源がほぼ全席にあるせいか、近所の大学の生徒や教授らしき人で常に溢れていて、かつ客が長居をしつづけるから私も居座りやすくてよく来てしまう。
 机が結露で濡れるのが嫌だから氷抜きのアイスティーを頼んで、午後は統計を進めた。大学時代のテキストを引っ張り出してきたが、練習問題の回答が最悪すぎてキレそうになる。計算式は書かずに解だけ、論述は該当ページを参照しろのみ。
 2時間ほどで集中力が切れ、ガブリチュウを口にそっと放り込んだ。私の前からいる客たちはみんな勉強していて、やっぱり一人も帰らないので図書館で借りていた本を読み、4時間ほど滞在した。

 図書館に読んだ本を返し、予約していた本を借り、駅のフリースペースで少し英語の勉強をして帰った。帰り道に駅にある産直市場的なコーナーに立ち寄った。ひび割れて不揃いな米の販売をしていて、先週5キロ1200円という格安の表示を見たからなんとしてもゲットしたいと足繁くチェックしているのだ。今日も見つからなかった。冷蔵庫の奥に眠る納豆を早く食べたい。

 家に帰るとルームメイトたちと台所の順番が被らないように素早く晩御飯を作って食べる。デザートには自家培養したヨーグルトを食べた。
 数少ない冬の楽しみといえばカスピ海ヨーグルトの培養だ。市販のカスピ海ヨーグルトを1L170円の牛乳で増殖させている。常温保存で培養できるが、ひんやりとした冬以外は怖いからやらないと過去に痛めた腹に誓っている。

 食後は勉強できなくて、でも旅の記録をまとめるのも手につかない。WEBサイトを作って、写真をアップして、あとは文章を書くだけだけど、それが進まない。読書をして、暇だから日記を書いて、この後は筋トレをして寝る。たまに通ってるジムのスタッフさんがメニューを送ってくれたので、次行く日まで継続してやると約束した。
 明日はハロワだ。



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