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住所不定無職日記1日目 カレー屋に住む


 今日から住所不定無職だ。
 昨日までは実家暮らしの住所特定アルバイターだったけれど、アルバイトをやめて実家も出たから晴れて住所不定無職となった。

 昨日の夕方に実家を出て、歩いて40分くらいのところにあるホステルに移住した。歩いて40分と近いのは、そもそも実家が市街地のすぐそばにあり、ホステルも市街地の駅のすぐ近くにあるからだ。

 この日は、ブッキングドットコムを使って1泊で予約していた。駅の裏手の人気のない通りを少し行くと、圧倒的に客の来なそうなカレー屋があった。宿と同じ会社がカレー屋を営んでいて、カレー屋の上の階が居住スペースとなっているそうだ。

 カレー屋の店員さんが入口に近づく私に気が付いて手招きをするから、そのままカレー屋に入った。香辛料の匂いが鼻についた。店員さんはそのままフロントがわりをしていて、無人チェックイン機の使い方を教えてくれた。店内を奥まで突っ切って階段を上がり、ドミトリーを見学した。

 部屋は20人部屋だった。1.5メートル四方のコンテナみたいな空間が上下になって部屋の左右に5つ並んでいる。中にはマットレスと枕と布団が置かれていた。上段のスペースに上がるための低い梯子が上下を繋いでいる。見渡すとカーテンが2ヶ所しまっていたから先客は2人だろう。この時期なのでおそらくこれ以上は増えないはずだ。部屋は思ったよりも天井も奥行きもあって広々としていた。

 ドミトリーと扉を隔てた風呂とトイレは誰もまだ使っていないみたいに綺麗だ。シャワーは2ヶ所、トイレは3ヶ所。ドライヤーも2つあった。棚にはタオルが山積みになっていていた。事前にチェックした口コミ情報とは違い、ドミトリーの入り口の共有スペースには、ロッカーの他に冷蔵庫と電子レンジとケトルがあった。調理台やIHはない。

 荷物をベッドに置いて一階に降りると、カレー屋の店員さんに声を掛けた。使用していい設備、リネンの交換の確認だ。事前情報では通り挟んで向かい側にある新館にキッチンがあると聞いていた。

 カレーを仕込んでいたお姉さんは手を止めて申し訳なさそうに、配管トラブルで新館を閉鎖している旨を教えてくれた。ランドリーも使えないそうだ。残念だったけど同じ価格帯のホステルが同じく40分ほど離れた街の反対側にあり、そこにもキッチンがないことは確認済みだった。そちらはランドリーはあるけれど冷蔵庫がないことも。

 寒いしこれ以上歩きたくないので、この宿に連泊することを決めた。連泊の割引がないかお姉さんに聞くと、ふわふわとした口調で「ちょっと待っていてくださいね〜」と言って新館へ走っていった。よく見ると、帽子から覗くショートカットの毛先が青緑色で素敵だった。

 しばらくするとお姉さんは小柄な外国人の男性を連れてきた。宿の予約周りを担当しているらしい。聞けば南仏出身という男性は左腕に複数の模様を重ねたブレスレット見たいなタトゥーを入れていて、それは今まで見てきたタトゥーの中でもかなりおしゃれなものに見えた。

 男性は少し割引した20連泊の施設料金を計算して提示してくれて、私はその金額での宿泊を決めた。しばらくの付き合いになるということで、お姉さんとお兄さんに自己紹介し、一度宿を離れて駅に戻った。生活雑貨を買うためだ。

 百円ショップで少しの生活用品を買い、これからの節制を胸に刻みながら中華料理屋に入り、麻婆茄子定食を食べて気合いを入れた。

 これから旅行者のような気持ちでこの街での新しい生活を始める。

家計簿

■ダイソー ステンレスマグ、蓋付き電子レンジボウル、麦茶のパック、折り畳みナイフ

■中華料理屋さん 麻婆茄子定食1180円


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