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忘るまじ我らの夏を

祖母の話。

祖父母の家で今年も花火を見た。隅田川花火大会がとてもよく見える。この日に家族で集まってご馳走を頂くのが昔から恒例のイベントで、前職でどうしても休みが取れなかった時以外は毎年行っている。

祖母は80歳を過ぎてもとても身体が健康で、薬を飲む治療は全く受けていない。優しくてめちゃめちゃ働き者のおしゃれさん。本当にすごい。
祖父もわりかし元気で、外に出るときは腰が軽く痛いから湿布貼るレベルの症状はあれど、ほとんど病気がない。物知りでちょっと不器用だけど優しくて自治会の役員も未だにやっている。すごすぎる。
原因不明のアレルギーで一年以上耳鼻科に通ってる自分が恥ずかしくなる。


いつも数ヶ月から半年に一度は祖父母の家には行っていた。
最初にあれ?と思ったのは、去年、忙しすぎた前職を辞めたとき、半年振りぐらいに祖父母の家に行ったときの話だったと思う。

私が直近に話したことを祖母が何回か聞くようになった。そして祖母が数分前に話したことを初めて話したかのように何回か話してくれる。
それでも祖母が小さい頃の話、私の母を育てていた頃の話、数年前の話はしっかり覚えている。
祖父は「すぐ忘れちゃうんだよな」と私の方を見てこっそりつぶやいた。

どうしよう、と思った。これはまずいんじゃないかと内心焦って母にも話した。母は私よりも祖父母の家に行くようにしていたので、もちろんわかっている。
それでもお家はちゃんときれいにしていたり、家事に関しては問題無いので様子見、となった。


それから何度かは遊びに行っていたけど、三ヶ月ぶりぐらいに昨日花火を見に行った。
相変わらず祖母はいろんなものを食べて食べて、と出してくれる。ご飯があるよ、アイスもあるよと。昔から変わらない。
ほらあれもこれも飲みなよと勧めてくれる。お茶があるよ、コーヒーがあるよ、冷たいジュースもあるよと。父にはビール飲みなよと。昔から変わらない。
変わらないんだけども。
それじゃアイスほしいなと、私はアイスをひとつ頂いた。
食べ終わった側から、アイスがあるよ、モナカも白くまくんも、ガリガリ君もあるよ。食べない?と何度も聞かれてしまった。その度にありがとう、食べたから大丈夫だよ。と答えた。

父は飲み終えたばかりで大丈夫ですよと答えているのに、何度もビール飲まない?と聞かれていた。
ご飯についてももうお腹いっぱいだから大丈夫だよと何度答えても、それで足りるの?まだあるんだよと何度も何度も聞かれてしまった。

祖母は優しい。
美味しいご飯をお腹いっぱいたくさん食べさせようとしてくれる。
優しいからつらかった。どうしたらいいんだろう。

その後一緒に花火を見た。
きれいだねと一緒に見たことずっと忘れないでほしいと思った。
どうしたらいいんだろう。

帰り際にみんな帰っちゃうと寂しいなと言って、祖母がぽろぽろ涙をこぼしていた。
こんなこと初めてだった。家は全然遠くないんだけど、心苦しかった。

実は他にもいろいろ思うことはあったけど、なんか泣けてしまって書きたくなくなってしまった。書いたら本当のこととしてしっかり記憶に残ってしまうようで。


暗いことは考えたくはないけど、逃げてもいられない話でもあるから、気持ちを整理したくて書き始めたけど、書きながら泣けてきて、しんどいなと思う。
私はいつまで孫でいられるんだろうか。
誇りなんです、祖父母ともに。大好きなんです。

どうしたらいいんだろう。
私にできることはまめに顔を出すことぐらいなんだろうか。
切ないな、無力だな。
しんどいな。

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