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デザインの力は動物保護のために何ができる?

動物保護は、決してWWFやWAZAなどの組織と動物専門家だけが活動すれば良いという課題ではない。地球の住民全員と関わりがあり、環境保護のように生活化・一般化すべき課題だ。

しかし、現状としては動物保護に関心があるとしても、気軽に保護活動に参加できず、また保護活動の入り口さえ分からない場合が多い。
日本ではまだましだ。ボランティア活動や動物保護の宣伝と教育は頻繁に行われている。しかし、こんな日本さえ動物を物として扱う人がいる。
動物保護に関心があるかなしか、どちらにせよ、更なる宣伝と教育、一般人でも気軽に参加できる保護活動が必要だろう。

「動物とのコミュニケーションを視点とする体験のデザイン」ー修士研究
ところで、動物専門家ではないデザインを学んでいる自分は何ができるだろうと考えた。

イギリスの自然保護活動家ジェーン・グドール(Dame Jane Morris Goodall)には「知ることで関心が生まれ、関心があることで行動が生まれ、行動することで命に希望が現れる」と語っていた。行動を促すに最も重要であり、切り口とするのは知ることだ。動物保護を一般化して広範囲に注目を集めれば、本格な保護活動に身を投じる人も増えてくるだろう。

知ることには様々なアプローチがある。自分は動物と心の距離を近づける「コミュニケーション」することに着眼した。ここでいう動物とのコミュニケーションは、会話ではなく、人間が一方的に動物の立場に身を置き換える、匂いや気配などを感じとるなど感覚と感情に任せたものを指す。
つまり、体験を通して動物の立場と気持ちを理解し、感情的に動物へ近づくことによって人間と動物との非言語的コミュニケーションを促進することだ。感情的に近づいただけではなく、近づきたい気持ちと行動、近づいているプロセスも「動物とのコミュニケーション」として認識する。

今まで、このような体験の多くは動物園の中にある。しかし、動物園は日常的ではなく特別な場所であり、動物園に入らない限りは体験に触れるチャンスが極めて少ない。前文の言ったように、生態教育や動物保護教育は、多くの人にとって大事な教育であり、一般化すべきため、本研究のビジョンには「動物園に限定しない体験」を置いている。

本研究の目的は、動物への共感を深めるためのデザインアプローチを提案することだ。研究のプロセスとしては、動物とのコミュニケーションを感じとる要素を明らかにした上、体験に生かすことを検討するのだ。ターゲットは20代の若者と設定しているが、他の年齢層にする可能性も今後検討したいと思っている。

「動物とのコミュニケーションを視点とする体験のデザイン」ー仮説提案
研究の結果として、以下の5つの動物とのコミュニケーションを感じとる要素を仮説として提案した。

1.人間と動物と比較することにより動物とコミュニケーションする
2.動物に関する豊富な情報提供により動物とコミュニケーションする
3.身体的に動物と同じ体験をすることにより動物とコミュニケーションする
4.動物を中心に能動的に考えることにより動物とコミュニケーションする
5.動物と接触しないコミュニケーション

1.人間と動物と比較することにより動物とコミュニケーションする
動物の外見を人間と比較、または人間化にする表現の事例が多くあり、動物を人間化したスタンプなどもある。それに対し、動物の立場に置き換えるもとやチャンスが少ない。動物園や展覧会でも、動物の歯などだけを展示することが多くみられるが、人間や人間の熟知している動物と一緒に並べるのが多くない。そのために、このような比較に注目し、更なる強調することにより動物とのコミュニケーションが促進されるのではないかと推察した。
2.動物に関する豊富な情報提供により動物とコミュニケーションする
動物園では動物について簡単な情報提供が行われている。しかし、放養スペースの変わらない背景壁に省略されたのは、常に変化している風景と、動物とその環境との相互作用、これを提示することによって動物へ深く理解できる可能性が予備実験でみられる。現状と一般知識だけではなく、動物にまつわる五感にわたる情報と広く深い情報を提供することによって好奇心が満足された上、動物への理解、気持ちへの共感、興味の喚起に影響している。
3.身体的に動物と同じ体験をすることにより動物とコミュニケーションする
本研究の予備実験では、猫と同じもの(野菜と肉)を食べることによってコミュニケーションする実験を実施した。その以外に、動物の動きを真似するや関連研究でも挙げられた温度を体感するや魚眼レンズと昆虫の複眼を模したレンズを設置し知覚を共有するなどという可能な範囲内で同じ体験をし、共に感じることを通じて動物とコミュニケーションできるのではないかと推察した。
実際にも、「ペットと一緒に食べるご飯」と「猫気分クッキー」が市販されている。
4.動物を中心に能動的に考えることにより動物とコミュニケーションする
動物園では、動物についてクイズを設置したり、危惧種の現状と未来について長文を書いたりしている。来園者がそれについて考えることによって動物への感情が強まる。提示された情報を受ける一方ではなく、自ら繰り返して考えることに意義がある。このような動物を中心とした思考を更なる拡散し、個人だけではなく人とシェアし、または議論することを体験の一環とすれば、動物とのコミュニケーションが促進されるのではないかと推察して提案した。
5.動物と接触しないコミュニケーション
動物とのコミュニケーションとは、必ずしも動物と接触することはない。動物園で実施する体験は動物と触れ合いながら、動物を観察しながらというメリットがある。しかし、一般の動物園では、触れ合いによる動物のケア問題や生息環境に関する情報の誤りなどの課題が存在している。本研究の背景とビジョンの「動物園という特定な場に限定しない体験」を踏まえ、動物園に行くことを前提とせず、より広範囲の広がりを目指している。

検証実験はワークショップで実施した。「共生関係」と「食う、食われる関係」を持つ4種の動物(ワニ、イシチドリ、オオトカゲ、カプバラ)の立場に置き換え、人間であるスタッフが行う環境開発による生息地の縮小と破壊、そして動物の習性を保つために制限された時間、動き(動物のある姿勢を真似する)と成功条件により、自分が役する動物にとって最適な行動を考えて行動する。提案した仮説はワークショップの内容として表現する。

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体験については、コロナ時期に場所などが制限されたが、にワニのしっぽやイシチドリの翼を着用し、木や川を再現すると、動物園やイベント、学校の授業、スマートフォンアプリケーションなど多様な方法で行う可能性が見えた。

デザインの力は動物保護のために何ができる?

デザインの力を言い出すと、環境デザインや建築などの専門技術により動物園の環境エンリッチメントに役たつと想像が付きやすいだろう。

しかし、動物保護課題をより広く拡散して注目を集めるために、動物保護活動を一般かするために、今までと異なる形の「知る」という入り口が必要だ。そのクリエイティブな入り口を生み出すのはデザインの力だと思う。
自分は今後「デザインの力は動物保護のために何ができる」という問いを核とし、答えを探究していくLabを創立し、様々なデザイナーを呼び寄せてデザインの力で挑戦していきたいと思っている。

動物保護領域において、デザインの力の活躍に期待している。


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