5/23

今日は暑いね。私が小学生の頃ってまだそんなに暑くなかった、真夏でも丁度今日くらいの気温だったような気がする。風が吹けば涼しいくらいの心地よい暑さ。
空を捕まえたい。絵の具を零したみたいなぐちゃぐちゃの白い雲が風にゆっくり流されていくのが見える。

今日は3日前に申請しておいたおかげで午後に2時間の外出ができた。入院してから初めて病院の外に出た。近くの大きな商業施設まで道に迷いながら歩いて、車や人や電車とたくさんすれ違った。今まで何も感じなかったけれど、こんなにたくさんの人が毎日生活をして、世の中の色んなものを動かしているってほんとうは凄いことなんじゃないかと思った。
商業施設まで急な坂を下って線路を越えて、頑張って歩いたらちゃんと到着した。窓から毎日眺めていたところに歩いて辿り着けたことに感動した。この商業施設に来ることが目的になっていて、着いたら何をしようって全く考えていなかった。とりあえず煙草が吸いたくて仕方がなかったので喫煙所に行った。友達、煙草嫌いなのに喫煙者だって黙っていてごめんなさい。問題がひとつあって、病院に煙草を持ち込むのが絶対に不可能なことで、もし外で買っても全部捨ててから帰らないといけない。でも優しい看護師さんに外で吸う分には感知できないですねと言われた。
作戦を考えた。600円出して十何本も捨てて帰るのは勿体ないし煙草にも申し訳ない。手持ちの現金も心許ない。ならば喫煙所にいる優しそうな人に声をかけて100円で1本買い取らせて貰えないか交渉すればいいんじゃないか。
喫煙所にはひとりしか居なくて、若いメガネのお兄さんだった。マルボロの箱が横にある。チャンスだと思って、自分でもびっくりするくらい簡単に声を掛けられた。
お兄さんはとても優しい方で、何回かお金払うと言ったのに100円要らないから1本吸いなと、火まで貸してくれた。優しさに感動して、1週間ぶりの煙草の美味しさに感動して泣きそうになったけど耐えた。本当に美味しいですねと感謝と共に伝えたら笑っていた。少々雑談をして、最後お礼に目の前の自販機で買った缶ジュースを渡したら「元気でね」と手を振ってくれた。

商業施設を離れて、公園を過ぎて、住宅街を歩いた。明日、外泊デートで、好きな人に久し振りに沢山会えるので、前髪を完璧に真っ直ぐに切っておきたかった。歩いていたら住宅街の真ん中でガラス張りの美容院を見つけた。表に値段表が貼ってあるところは安心。
飛び込みで断られるかもと思ったけど、大丈夫だった。明日大事なデートなんですと言ったらそれは一大事だと言って要望を念入りに聞いてくれた。前髪が短くなって嬉しい。すごく綺麗に切ってもらった。550円。帰る時水色の飴を貰った。

商業施設に戻って、目の覚めるような青色のワンピースを買うか迷って、結局諦めて、でもお店を回れただけで十分満足して帰路に着いた。帰りは近道を見つけて思ったより早く帰れた。5時までまだ時間があったので屋上でのんびりした。天気がいい。外の世界は思ったより恐くなかった。自販機で買った冷たいココアが美味しい。
夕ごはん何だろう。
空を捕まえる。
今日は早めに眠る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?