ダンスワークショップ in わかち座

鈴木ユキオ「0からはじめるカラダ」
わかち座ダンス普及事業説明会レポ
【後編】・・・・・その2

☆野村「(一般参加者に)何か質問ありますか?ユキオさん菜緒さん白身さんに、私に対してでも。

☆スタッフ(中川)「小説を書いたりしてるんですけど、年齢で肉体の衰えを感じるんですね。創作脳の衰えも感じるんですけど、創作されている方はみんなどうやっているのか教えてほしいです。

☆ユキオ「確かに体力は・・・すごくよくわかります。特に私の場合、カラダを使うので。やっぱり体力的には落ちるし、多分それと連動して意欲って言うんですかね、モチベーションの維持が大変なこともあります。

若い頃は、『朝まで稽古』とか無茶できるし、何時間稽古しても別に寝りゃ戻る、ってしていたのが難しくなってきますよね。

だから、その分をカラダの使い方でカバーできるように改善していくというか、無駄な力をどうやって使わないようにできるかという模索があって・・・。

無駄な力っていうのは、書くことや芝居でも何でもあるんじゃないですかね。たぶん。

若い頃って力があるからそんなことあんまり考えなくても、むしろ考えないからこそ出来ちゃうことがいっぱいあると思うんです。でも、出来なくなってくることで、あっ、もうちょっとカラダの使い方を考えなきゃなとか。コントロールすることで、同じ効果をよりストレスフルに出す方法を自分で模索する必要が出てくると思います。

例えば危険に見せるシーンがある時に、若い頃は、そのまま危険にやればいいんですよ。思い切り飛び込めばいいんです。

でも、歳をとるとそれができない、ケガしちゃうから!治りも悪いですし。

でも、同じ「危険」を感じさせるために、どうすればいいのか・・・。

例えば、野球選手でストレートが遅いピッチャーは緩急の差を使うんです。

160キロの速球でも打たれる人は打たれちゃう。

でもカーブとか遅い球ばかりに慣れさせておけば、100キロの球でも凄く速く感じさせることができる。

感覚的にどう感じさせるかって事ですね。

それは音楽でもそうで、ピアノでもとても抑えた小さな音まで幅広い音色を聴かせれば、響かない場所でも大きな音を感じさせられるとか。大音量を感じさせるために、アンプを使わなければいけない訳じゃ無い。

つまりは『感覚をどう動かす』か、観客に速く感じさせるとか、強く感じさせるってのは、その振れ幅の問題だったりするわけですよね。

そういうことを考えると、表現に対して凄くおもしろみが増してくるんです。

若い頃の思いっきりそのままやる感じや面白さとは全く違う、微妙な面白さですね。それは伝わる事ではないかもしれないけど、自分の中の探求としてはとてもおもしろい視点です。

年齢を重ねた円熟さにもつながることだし、それは、文章でも他分野のお仕事でもおんなじだと思うんですよね。

『あ、なんだ、そうすればいいんだ』って気付くまでがしんどいと思うんですけど、その辺自分が折り合いつけていくのが楽しみでもあるというか。

実際、やり続けるためには、もうその探求をやるしかないって事だと思うので。

そんな感じで今はカラダと向き合ってます。

そして、その結果、そういう自分自身への探求が、人に伝える時にどんどん役に立つんです。

昔だったら『いや、それは違うよ』としか言えないことが、ここをこうしたらカラダがこうなるから、こういうふうになるんだよって、言葉でより鮮明に伝えられる良さにもなるから。

僕自身たくさん教わってきたし、それプラス自分が発見してきたことを伝えていく時期にもなってきていると思うので。そういう作業はムダじゃないというか、人にどうやって伝えられるのかなという楽しみも、以前よりさらに増えていますね。

☆スタッフ(中川)「ありがとうございます」

☆参加者(女性)「健康的に暮らすために、ダンスのために日常で食事とか気を付けている事、ダンサーとしての気を付け方もあると思いますが一般的な暮らしの中で、こういうこと改善したら良くなるよとか教えて欲しい」

☆菜緒「私自身あんまり真面目ではないですが、少しお話しすると、私はクラッシックバレエ出身でいわゆるテクニックを勉強してきた側で、ユキオさんは舞踏という日本で生まれたダンスを学んできていて、バレエとは少し違う所から経験されているので、言葉で誘導する振付が多いんです。

たとえば、すごくちっちゃいセーターを無理矢理着てくださいって言われると、こうなる(きついセーターを着る仕草)じゃないですか。

この動きがダンスになって行くんです。

『左手を曲げて右手をこうやって、ワンツースリー・・・』じゃなくて、『すっごいちっちゃい黄色いセーターを着る』というイメージで動いていると、それがダンスになって、私の振付になって行く。

みたいなふうにワークをすることが多いので、そういう言葉でイメージしてカラダを動かすみたいな訓練を日頃からちょっとだけ・・・もちろんずっと考えているわけではないですが(笑)

歩く時とかも、ただゆっくり歩くというと難しいけど、床にティッシュが敷いてあってそれを動かさないように歩くって考えると、ちょっとだけ敏感になれるんです。自分が自分のカラダに対して。

なんか、そういうことの積み重ねをたまに一人で遊んだりしています。

そうやっているうちに、自分がちょっと踊っている気分になってきて楽しくなったりとか、ちょっと無心になれる。

ただ歩いているだけなんですけど、楽しくなってきたりして、心とカラダを少しつなげているというか、そういうことはありますね。

☆ユキオ「(参加者女性に)何か運動はされてます?」

☆参加者(女性)「運動は、はい週に3〜4回はピラティスを、DVD観ながら自分で自宅で1時間程。

5〜6年前から日本舞踊を。

それ以前はスポーツクラブでよくあるプログラムを。

カラダを動かすことは小さい頃は苦手で、カラダがかたくてコンプレックスでしかなかった。

20代になってスポーツクラブに通ってストレッチをするようになったら、カラダが想像以上に柔らかくなったんですが、この頃テレワークになっただけじゃないと思うんですが、カラダが動かなくなって。

自分に対してすごく不信になってしまったんです。自分のカラダが自分じゃない気がして。自分のカラダを維持する、自分のカラダと対話するのにこのワークショップならできるんじゃないかなと思いました。私の中で自分のカラダ、自分自身で対話しながら意識してみようかなと。」

☆ユキオ「けっこう、良いですよね。このワークショップは(笑)」

☆司「(笑)そういうことですよね。できそうっていうか、やってみたい?」

☆参加者(女性)「すごくワクワクしてます」

☆ユキオ「けっこう僕のワークショップ、いろんな人が来るし、演劇の人や美大生とかサラリーマンの方とかも。立ち方とか意識の仕方とか、帰りの電車の中でやってみます、みたいな人がけっこういますよ。電車の窓を鏡にして電車の中でやってみますとか。日常でカラダや感覚を意識することが楽しいというか、ちょっとした意識で変われるのがいいですよね。

スポーツはスポーツで良いと思うけど、一番大事なのは、中のこと。

日舞や伝統舞踊なんかもそうですね。中の事が大切なんです。

『形から入る』っていう言い方もあるくらい、最終的には形もとても重要だとは思いますが、僕が思うに、大人は特に、中が大事というか。

大人の人って、言葉できちんと理解できるじゃないですか。しかも大人になって型が確立しているバレエダンサーになるわけじゃない。

そうなった時に『形』を一生懸命やるよりも、何でカラダが、何でそのカラダになったんだろうって頭で理解してもらった方が、面白いダンスにつながると思うんです。

その形をやりたいわけじゃなくて、結果そこに持っていけるっていうのが、大人の方の楽しみ方というか。

大人に成れば成るほど、言葉で考える事ができるからこそ、その思考から中が変わるんです。

例えば、背骨が積み木のように連なっているとします。その積み木が徐々にずれてきたら、強引に筋力で引き戻してギリギリの力で立たせるより、積み木を素直に最初から積む方がぜったい楽じゃないですか、みたいなことで。

『こうやるからこうなるんだな』と実感しながら体を作っていくんです。

自分の骨を型に落ち込めるのではなく、どこにどう乗せれば体が気持ちよく動くかを考えながら動いた方が、ヘルシーで気の流れが良くなる。

究極、それはすでにあるダンスの型にたどり着くのかも知れないけど、それはそれでいいんです。

どっちから進んでも本質は同じだと思います。ただ、私は思考という過程(プロセス)を大切にしたいので、形という結果を問わないところから始めるのも大事だと思います。そのプロセスに美しさを感じるというか、意識の流れを見ているんですよね。

その人がどういう意識や考えを持っているかっていう事を僕は見ているので。

手の形を見ているのではなくて、カラダのエネルギーのようなものを体を通して見ている気がします。そして、それはその人の目に現れるんですよね。

何をどう意識しているか。

見せるために形をやっているのか。

自分にとっての『動く』ってことに集中してやっているのか。

自分のカラダや動きに集中して動いている。それが僕は美しいと思います。

もちろん『20のカラダの証』のような作品にするためには演出はしなければいけないけど、本人たちがそこに集中してくれたらもう、それだけで十分。

あとは照明さんがやってくれますから自信持って!・・・って。

そういう意味でカラダに意識するって、けっこうカラダにとっては良い事で。

なんか食事とかもね、けっこう流行りとかあるじゃないですか。いろいろ試したり興味はあっても完璧にやるって得意じゃなくて、けっこう自然に食べたりしてるし、お酒もね・・・お酒、飲みます(笑)。年に 2回くらい調子が悪くて止めますけど。ほんと、飲んじゃうんですよね。

あまり気にせずにやってるけど」

☆野村「そこが面白いところかも知れないですね。生活と表現の分かれ目というか、混ざったゾーンでどう暮らすかみたいな。

このワークショップでも、本当に最終的に『20のカラダの証』みたいな公演をやるって決めて始めるわけじゃない・・・中で、踊るってことを通してどういう生活に反映されるのかとか、先ほど健康って話があったし、実は面白いポイントかも知れないですね」

☆ユキオ「ここでしか出来ないやり方っていうのがあると思います。

ここで、それぞれ向き合ったプロセスを共有して、何か、最後には形にして見せられたらいいかなって」

☆野村「面白いですね。ちなみに今日(ここは)初めて?」

☆ユキオ「はい、初めてですね」

☆野村「ここのファーストインプレッションはどうですか?」

☆ユキオ「うん。来て、いきなりピクニックみたいに、そこ(屋外の木陰)で犬と子どもと昼寝した。何かそういう良さがありますね。

海外のレジデンス施設とか劇場で滞在制作やワークショップをするときは、一回6時間とか、時間が長いことが多いのですが、お昼になるとみんなのんびりランチしておしゃべりしてて。僕は『あー、もうちょっとしゃべっててくれないかな』って思うくらい、みんな気にせず、その時間も含めてワークショップを楽しんでる。『ああ今日もピクニックしよう』って、庭でごはん食べながら、ダンスの話をしたりとか。

なんか、そういう雰囲気がここにはあるような気がしています。

あと、想像していた以上にしっかり劇場空間が作られていたという・・・」

☆野村「あー、この場所」

☆ユキオ「公共ホールとは違っていても、しっかりと作られていて・・・

こっち側では建込みが始まって、ああ凄いって。凄い良い場所・・・」

☆参加者(男性)「ちょっと、いいですか?」

☆ユキオ「はい」

☆参加者(男性)「今日もそうなんですけど、映像の中でも圧倒的に男性が少ないですよね。なんかそういう思うことはありますか?海外の映像とか見てると、けっこう男も女も同じぐらいの人がいます」

☆ユキオ「たしかに」

☆参加者(男性)「日本的な何かあるんでしょうかね?」

☆ユキオ「都会はだいぶ変わってきているようには思います。都会でやるワークショップなりクリエイションは、わりと男性も多いですよ」

☆参加者(男性)「増えてきている?」

☆ユキオ「ええ、昔より。

でも、実際増えてはきてるけど、やっぱり習い事効果っていうのも大きくて、女の子は小さい頃からダンスやバレエを習う比率が高いように思います。だから、大人になっても圧倒的に女性の方が、ダンスに関わる人が多いのも事実です。海外の方が確かに混ざっている印象がありますね。」

☆参加者(男性)「気持ちの上で、精神的な自在性って言いますか、潜在的なね。それは圧倒的に男性は自在性が少ないってことですか?そういう感覚はお持ちですか?音を聞いてカラダがスッと動いてしまうとか、そういう感覚的な自在性が圧倒的に男性の方が劣るとか」

☆ユキオ「いや、それは関係ないと思います」

☆参加者(男性)「関係ないですか?」

☆ユキオ「たぶん、教育の問題、触れる機会の問題とかだと思いますね。

だから今の子たちはもう変わってきてると思います。ダンスがとても身近にある、男女問わず。そして、圧倒的にテレビとかメディアでのダンスが盛んで、ストリートダンスだと男性もいっぱいいますから。

ジャンル的な問題もありますし、若い世代ではそんなに気にしなくなってきていると思います。

 (司に)東京に来てもらったワークショップでもけっこう男性いましたよね」

☆司「いました」

☆ユキオ「だから、意外と僕がやってるワークでは男性比率は高いです。徐々にそうなって行くと思いますよ」

☆参加者(男性)「そうなってほしいですね」

☆ユキオ「そうですね」

☆参加者(男性)「ありがとうございました」

・・・・以上でアーティストトーク終了です。
最後までご覧いただきありがとうございました。

ここで「鈴木ユキオダンスワークショップ
『0からはじめるカラダ』」の参加者募集のお知らせです。
ダンス未経験の方大歓迎です!
地域で創造的な活動を始めてみませんか。
ダンスを通して一緒に場を育みませんか?
▼日時
10月17日(日)13:00〜16:00
11月23日(火祝)13:00〜16:00
❈鈴木ユキオさんによるワークショップのあいだの期間に、週に1回程度直売所に集まって、復習や練習をする時間を設けます。一緒に、創造的で楽しい場を育てていきましょう。
▼会場
ブルーベリーガーデン黒岩直売所
▼対象
高校生、一般
❈18歳以下の参加には保護者の承諾が必要です。
▼定員
各回6名程度
▼参加費
高校生:無料 一般:各回 2,500円
▼応募締切
10月15日(金)必着

メールか電話にて、氏名・性別・連絡先・応募のキッカケをおつたえの上お申し込みください。
▼お問合せ・お申込み
わかち座(担当:司)
メール: wakachiza@gmail.com
電話: 080-5108-5544

ブルーベリーガーデン黒岩直売所
小諸市御影新田966-1

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