'23 凱旋門賞 傾向と予想

お久しぶりです。

今年もこの季節がやってきましたね。
昨年は短評A⇒B⇒B決着にもかかわらず血迷って馬券を外したので、今年は当てていきたいところ。

'22 凱旋門賞 短評|ui (note.com)
(↑昨年の記事)

例のごとく、情報の取捨や馬券購入については自己責任でお願いいたします。


傾向

ロンシャン競馬場が改修された2018年以降、直近4年は道悪で行われたこともあり、2分30秒台の決着が続いている凱旋門賞。
そこで(狭義)ドイツ血統が台頭しているのは最早お馴染みで、

19年1着 Waldgeist ⇒母父 Monsun, 母母母父 Acatenango
20年2着 In Swoop ⇒父 Adlerflug, 母母父 Konigsstuhl
21年1着, 22年3着 Torquator Tasso ⇒父 Adlerflug, 母母父 Acatenango
21年3着 Hurricane Lane ⇒母父 Shirocco
(22年1着 Alpinista ⇒血統非該当も, 独GI・3連勝)
22年2着 Vadeni ⇒母父 Monsun

のように確変状態。

しかしながら、今年の天気予報は晴天続きで散水も行われない模様。
となれば、上記の傾向から外れた決着となる可能性は低くないでしょう。
凱旋門賞=(狭義)ドイツ血統 という見方がポピュラーになりつつある(?)今年だからこそ、逆張りする価値はあるかと思います。

勝ち時計が2分30秒を切った年を遡って今年の土台となる傾向を仮説したいところですが、2015年以前は改修前のため、あくまで参考値ということで。(尤も、2010年まで遡っても4年しかありません)

2011年 良 16頭 R2:24.49
1着 2. Danedream 牝3 11人気
2着 9. Shareta 牝3 15人気
3着 11. Snow Fairy 牝4 8人気

2014年 良 20頭 2:26.05
1着 3. Treve 牝4 7人気
2着 4. Flintshire 牡4 11人気
3着 15. Taghrooda 牝3 1人気

2015年 良 18頭 2:27.23
1着 14. Golden Horn 牡3 3人気
2着 11. Flintshire 牡5 5人気
3着 5. New Bay 牡3 2人気

2018年 良 19頭 2:29.24
1着 6. Enable 牝4 1人気
2着 15. Sea of Class 牝3 2人気
3着 9. Cloth of Stars 牡5 10人気

上記好走馬について血統を整理したのが以下。
(Flintshire は重複カウント)

〇:5代内包 をベースに、◎:父or母父直系、☆:5代内クロス、△:5代以前に内包。
Golden Horn の ※ は Sadler's Wells と 3/4 同血にあたる Nureyev のクロス持ち。

Danzig を父or母父直系に持つ馬が実に12頭中8頭(のべ9頭)で傾向は顕著。これに該当しない馬は Mill Reef≒Riverman, Sadler's Wells, Nijinsky, Mr.Prospector, Buckpasser の中から4本以上内包していることが共通。
対して狭義ドイツ血統持ちは2011年1着 Danedream のみでした。

予想

今年の出走予定馬に対して同様に整理したのが以下。
(ゲート番ではなく馬番順であることに注意)

凡例は先程と同じ。

これと戦歴を踏まえて総合評価を振り分け、昨年同様に【A】~【C】評価を短評形式で解説していきます。

短評

同評価内は馬番順で並べています。

【A】Bay Bridge

2018年3着 New Bay を父に持ち、母方から Danehill, Mill Reef (クロス), Sadler's Wells を持ってくる形で血統傾向にはかなり合致する本馬。

戦歴的にも

'23 タタソールズGC ⇒2着(1着 Luxembourg と半馬身差)
’23 ガネー賞 ⇒3着(2着 Simca Mille とアタマ差)
'22 英チャンピオンS ⇒1着(2着 Adayar, 4着 Baaeed など)
'22 プリンスオブウェールズS ⇒2着(1着 State of Rest と1馬身差)

など、今回人気を集めそうな Simca Mille、その他骨っぽいメンバーの中で好走歴あり。

今年のプリンスオブウェールズSと昨年のエクリプスSは5着に敗れましたが、前者については出遅れてスムーズさを欠いた分はありそうで、後者は相当なハイレベル戦。
また、両レースに共通していたのは「明け3戦目」だったこと。本馬が明け3戦目だったのは生涯14戦でこれらの2戦のみ、かつ共に生涯最低着順タイということで、本馬にとっては臨戦過程がパフォーマンスを左右する大きな要因となっていると思われます。

今回はプリンスオブウェールズSから2ヶ月休養、セプテンバーSを叩いて2戦目ということで、臨戦過程的にも問題ないでしょう。「2400mを試した」という主旨の陣営のコメントもあり、確信をもってここに臨んできたと思われます。

昨年の英チャンピオンSで Adayar と Baaeed を破ったのは今回のメンバーの中でも上位の実績で、当時のように内枠から先行するのが勝ちパターンの本馬にとって6番というゲート番も僥倖。

単純なステップとしての前走への疑問と、英チャンピオンS以降の勝ち切れなさから控え目な人気になると読みますが、狙いは十分立つと思われます。

【A】Hukum

血統的には Baaeed の全兄にあたる本馬ですが、主戦場は中距離。
Sea the Stars×Kingmambo×Singspiel ということで傾向にも合致しています。

戦歴的には、重賞5勝で挑んだ昨年のドバイSCでシャフリヤールの7着に敗れましたが、0.2秒差と小差。その後は英国に戻ってコロネーションCを圧勝しながらも、約1年間戦列から離脱。
それでも復帰戦のG3で昨年の英ダービー馬 Desert Crown を下し、KGVI&QES では Westover とのデッドヒートを制してG1・2勝目を飾りました。KGVI&QES は今年の欧州芝中距離 GI の中では最もメンバーが揃った1戦で、戦歴的な強調度は高いでしょう。

あくまでデータ的に割引材料があるとすれば、6歳以上の馬は本レースと相性が悪く、馬券になったのは 2009年7人気2着の Youmzain(牡6, この年まで3年連続2着)、勝利したのは1932年1人気1着の Motrico(牡7, 勝利はこの1例のみ) まで遡るということでしょうか。
そもそも6歳まで現役を続ける一線級の馬が少ないという話もありますが、

2020年
1人気6着 Enable 牝6
2人気7着 Stradivarius 牡6

という例もあるように、強ち軽視できるデータでないのも確か。どこまで印を重くするかは悩ましい1頭かと思われます。

【A】Ace Impact

父は英チャンピオンS勝ちの Cracksman、母父は仏ダービー馬 Anabaa Blue の本馬。Sadler's Wells 直系で Danzig 3本持ち、Riverman も内包して Allegretta クロス(Torquator Tasso も持ってましたね)のおまけつき。

戦歴的には言わずもがなで、仏ダービー(レコード勝ち)を含む5戦全勝で臨む3歳勢の筆頭格。

(↑仏ダービーは本命でした)
従来のレコードは 2019年の Sottsass が記録した 2:02.90 でしたが、その年の1,2着馬は

1着 Sottsass ⇒'19ニエル賞1着→'19凱旋門賞3着→…→'20ガネー賞1着→…→'20凱旋門賞1着
2着 Persian King ⇒…→'20イスパーン賞1着→…→'20ムーランドロンシャン賞1着→'20凱旋門賞3着

と共に凱旋門賞で好走。今年の2着馬 Big Rock は今回出走してきませんが、少なくとも来年あたりまでは注目に値すると思われます。
正直言って若干手薄感のある今年の古馬勢に対してであれば、勢いそのままに3歳での戴冠も可能性がありそうです。

(余談:近年、3歳での勝利馬は前走で古馬混合G1を勝利しているケースが多く、古馬混合G1未勝利での戴冠となれば 2010年の Workforce 以来、古馬混合G1未出走での戴冠となれば 2006年の Rail Link 以来です)

【B】Onesto

以下昨年の見解より。

Frankel × Sea the Stars で Urban Sea 3×3, Miswaki 4×4。3代母以降は微妙も血統的にはこれだけで及第点でしょう。
本馬でさらに強調したい点は2走前のパリ大賞で既に同舞台実績があること。
映像ではワンステッキ程度しか使っていないように見え、それで逃げ粘る2着馬を最後方から差し切ったのは世代戦とはいえ評価できる勝ち方。
勝ち時計も稍重で 2:27.76 は馬場を補正すれば 20年の Mogul(その2,3着馬は同年の凱旋門賞で2,4着)と19年の Japan(同年凱旋門賞で4着)の中間になるはずで、過去比較でも優秀。厳密には凱旋門賞との馬場状態の違いを考慮する必要がありますが一つの指標にはなるでしょう。
昨年のパリ大賞からも英セントレジャーを経由して Hurricane Lane が凱旋門賞で3着に入っており、単純なステップとしても注目。本馬は当日稍重までなら。重になったらやや下げます。

昨年の凱旋門賞では後方から進め10着に敗退。直線では内から進出しながらもラストで完全に脚が上がっており、上記の通り道悪が堪えた可能性は高いと思われます(と事前見解から言っておきながら、本馬から買って外した人間がいるらしいです)。
その後はジャパンカップで来日、ヴェラアズールと0.7秒差の7着に敗れましたが、4角~直線で完全に前壁となった中での健闘でした。

今年はイスパーン賞を取り消してジャックルマロワ賞からの始動でしたが、スパートを踏み遅れた中で4着は悪くない内容。
前走の愛チャンピオンSは大敗でしたが、Auguste Rodin の勝ち時計 2:02.68 は過去10年の中で最速(本馬が2着だった昨年は重馬場で勝ち時計 2:12.10)であり、本馬なりには走っていたとも捉えられます。

今年は良馬場想定、それでいて馬柱の汚さから昨年8.3倍→執筆時点60倍~であれば、穴で握っておく選択肢は十分にあると思われます。

【B】Westover

昨年は【D】2番手でしたが良馬場の血統傾向+戦歴から【B】まで上昇。
Frankel × Lear Fan で、母母は Lycius × Nijinsky × Round Table と、昨年の不良馬場よりは良馬場の方が向きそうな構成。

昨年の英ダービーでは直線前壁から完全に脚を余して3着、その鬱憤を晴らすように愛ダービーで圧勝した本馬。
その後の KGVI&QES では5着大敗も、凱旋門賞では6着とそこそこ健闘。
今年に入ってからは

ドバイSC2着(イクイノックスと0.6秒差)
→コロネーションC2着(Emily Upjohn と0.3秒差)
→サンクルー大賞1着(ドバイSC3着, 次走バーデン大賞1着の Zagrey に0.2秒差)
→KGVI&QES 2着(Hukum と0.0秒差)

と中距離路線で安定した成績を残しています。
サンクルー大賞は正味ドバイSCの焼き直しのため強調はできませんが、Hukum と同様の理由で KGVI&QES については強調できると思われます。

勝ち切るまでの打点は担保されませんが、特に Hukum との比較においては本馬は4歳ということもあり、馬券内に入っても全く驚けない1頭と見ます。
(とはいえ執筆時点で欧州古馬勢の中では最も売れており、ここは一般的な見解と変わらない部分かと思います)

【B】Fantastic Moon

Sea The Stars 直仔 × Montjeu 直仔 × Nijinsky 直系 だから良馬場の傾向とも親和性の高い本馬ですが、父母父 Monsun、母母父 Lomitas ということで狭義ドイツ血統が含まれ、道悪になって上昇する素地もあり。

上記の背景からニエル賞では本命とした本馬ですが、離した逃げ馬の番手から立ち回りの良さを生かし、1番人気 Feed The Flame を寄せ付けない快勝。その経緯もあって、急転追加登録でここに臨んできた形。

独ダービーTR 圧勝で臨んだ独ダービーでは豪快な外ラチ一気でタイトルを手にした本馬ですが、その意味では前哨戦であの立ち回りができたのはプラスに働くと考えられます。

ドイツにおいては極端な道悪を相対的に苦にしている本馬ですが、ロンシャンであればやや渋っている程度がベストと考えられます。よって良馬場の高速決着を想定するのであれば、同じ3歳勢では Ace Impact に分があるのではないかと思われます。

後はダルマイヤー大賞で Nations Pride に敗れたこと、今年5月の使い出しから数えて7戦目となることをどう捉えるかでしょう。

【C】Simca Mille

父にジャンプラ賞・ジャックルマロワ賞勝ちの Tamayuz、母父にナンソープS勝ちの Pivotal を配しマイル×短距離の配合ながら、Bustino のクロスが効いて中距離を主戦場としている本馬。
Mr. Prospector 直系× Nureyev 直系で、Nureyev クロス、Riverman≒Mill Reef、Danzig、Buckpasser と傾向には引っ掛かりそうな形。

昨年のパリ大賞で Onesto の2着に敗れるも、ニエル賞でドウデュースを4着に退けた本馬。凱旋門賞ではなくジャパンカップに直行して17着に大敗を喫しましたが、今年は4戦して3勝・2着1回と安定感を取り戻しました。

馬柱的にはもう少し売れるのかなと思っていましたが、意外に30倍程度。
それでも本馬を物差しとしてパリ大賞で先着された Onesto、ガネー賞でタイム差なしだった Bay Bridge の方が魅力的には映るため、個人的には紐まで。

【C】Place du Carrousel

母が Danzig 直系 × Sadler's Wells で、父である仏2冠馬 Lope de Vega から Mr.Prospector クロスを補完した形。父の産駒は北米や豪州でGI馬を輩出しているように、ややもすると軽い印象はありますが、Lope de Vega × 母父 Danehill 直仔 は昨年のヴェルメイユ賞(凱旋門賞と同舞台)の勝ち馬 Sweet Lady と共通。

戦歴的には、昨年のサンタラリ賞で2着、仏オークスで10着と敗北を喫した後、それぞれの勝ち馬 Nashwa(G1・3勝、今年の英インターナショナルS2着→愛チャンピオンS3着)、Above The Curve に雪辱を果たす差し切りでオペラ賞を制覇。
ガネー賞では5着と後塵を拝しましたが、8月にG3→9月にG2フォワ賞と重賞を2連勝して立て直してきました。

ガネー賞から考えればこのメンバーに通用するかは疑問も、フォワ賞をステップとしてきたこと+牝馬であることから広げるなら一考。

【C】Feed the Flame

Kingman × Montjeu は Danzig 直系 × Sadler's Wells 直系で、そこに Mr.Prospector クロスと Nijinsky が入る形だから、傾向には一通り合致する形。

戦歴的には同舞台のパリ大賞で愛ダービー2着馬 Adelaide River、英オークス馬 Soul Sister を退けて勝利。ただ、それを挟んで仏ダービーでは Ace Impact と 0.9秒差の4着、ニエル賞では Fantastic Moon と 0.4秒差の2着と、同じ3歳勢の中で格付けされている印象。

脚質も追込一辺倒で、同型に Ace Impact がいることを考えれば勝ちに行くには工夫が必要と思われます。幸い2番枠を引いたので、内から差し込めればあるいは。

評価のまとめ。

印(暫定)

暫定の印だけ抽出すると以下の通り。

※馬番表記
◎5. Bay Bridge
○13. Ace Impact
▲7. Hukum
☆3. Onesto
△6. Westover
△14. Fantastic Moon (重~なら↑)

想定買い目は
◎単複、ワイド◎ー印、三連複○ー印ー印、ワイド☆ー○▲
など。


【D】以下は割愛します。【C】を買うかは微妙ですが、上記の印と買い目からは省いてあります。一応【C】内の序列は Feed The Flame > Simca Mille > Place du Carrousel で付けておきます。

昨年のタイトルホルダーは印としては5番手に下げつつも「もしかすると」と思っていましたが、結果を見てやはり日本馬には厳しい舞台だと再認識しました。
スルーセブンシーズは秋華賞で本命を打った記憶のある馬で、よくここまで成長してきたなという感じですが、母のクロフネ × Seattle Slew × Mr. Prospector はここでは軽すぎるように思います。
良い馬であることには変わりありませんし、馬券とは別で応援はしつつ、無事に帰ってきてくれることを願います。

記事を出すのがだいぶ遅くなってしまいましたが、昨年よりは若干まともなものになっているかと思います。
個人的には(色々な意味で)1年を通して1,2を争うほど好きなレースなので、今年泣いても笑っても、また来年のロンシャンでお会いできるのを楽しみにしています。

それでは良い夜を。

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