忍殺TRPGリプレイ【オペレイション、オペレイション・レスキュー】09
前回のあらすじ:ネオサイタマの北、中国地方に広がるタマチャン・ジャングル。ヨロシサンに追われてここに逃げ込んだサヴァイヴァー・ドージョーは、バイオインゴット不足と分断工作により追い詰められていた。大将サワタリと客人ナーギニーは物資調達と捕虜奪還のためヨロシ施設へ潜入!
◆
……サワタリたちは物陰に潜伏し、メディキットで負傷を応急処置する。彼らが全力でニンジャ野伏力を発揮すれば、相手がニンジャといえどそうそう発見されるものではない。「……よし。残る目的は一つ。ハイドラはどこだ」「最深部の一番奥、第三電算室だな。サブジュゲイターもいる」
"プロトタイプ"は周辺のヨロシDNA反応を感知できる。つまりクローンヤクザやバイオニンジャ、バイオインゴットなどの居場所を突き止められるのだ。サヴァイヴァー・ドージョーにとっては得難い人材と言える。「結局、あいつをどうにかしなきゃならんか」「殺す必要はない。無力化する」
「だいぶキツいぜ。それにそのハイドラ=サン、洗脳されちまったんだろ」「お前のジツでなんとかしろ。できなければ仕方ない」「救出されちまったからには頑張るけどよ、あんまり期待しないでくれや」"プロトタイプ"は頭をかく。「だがまァ、寝る・死ぬ以外に、俺にやる事があるとはな!」
彼はヒヒと笑った。「バイオ手術を受けてここに来る前のことは全部忘れたし、やる事もなかったしな。こうなるって発想は全くなかった。発見(ディスカバリー)だ」「ディスカバリー!」サワタリは言った。「名前が無いなら、今からそれが名前だ。ディスカバリー=サン!」
ダンゴウ
サワタリ、ナーギニー、ディスカバリーは手短にブリーフィングを行う。目指すは第三電算室。別れ道を挟んで実験室の逆方向だ。サブジュゲイターとハイドラはそこにいる。他の四人のニンジャたちも、そこへの侵入を阻むべく動くだろう。では、なぜサブジュゲイターが直接迎撃に来ないのか?
それはおそらく、彼の極秘かつ私的な目的のためだ。彼のヨロシ・ジツはヨロシDNAに干渉して操る特殊なジツだが、ゲコクジョを起こせぬよう役員級以上のヨロシサン上級社員には無効だ。ニューロンにもプロテクトがかかっている。それを解除する鍵がここにある。彼の"プロトタイプ"だ。
サブジュゲイターはサワタリ討伐ミッションを本社に進言して承諾を得ると、この施設の付近へ誘導した。ボタニックの暴走により遺棄された秘密施設には、自らの"プロトタイプ"が、少なくともそのデータが残っているはずだ。「ってことなんだろうぜ」ディスカバリーはサワタリたちに説明した。
「あんたらが来る前、あいつと出会って少し話をした。あいつも自由を求めてるのさ」「なるほど」サワタリとナーギニーは頷いた。とすれば、多少は交渉の余地があるかも知れない。サワタリやディスカバリーを狙っては来るだろうが……「さて、目的地までは一本道。途中、断崖を渡る通路がある」
サワタリはニンジャ記憶力で見取り図を思い出しつつ、紙に鉛筆でマッピングする。「メコン川に架かる軍用道路……否、幅は人間二人がすれ違える程度でしかない」「メコン川?」「気にしないで」ナーギニーはフォローした。「挟み撃ちにされれば危険だ。敵はここに潜み、待ち構えているはず」
「俺たち全員で、その通路を駆け抜けるってのか」「それしか道がない。当然罠を仕掛ける」サワタリはナム妄想に苛まれながら、的確に作戦を立てていく。仲間たちの命がかかっているため長居はできぬ。全員が迅速に動き、電光石火で作戦を実行するしかない。「……よし。では、行くぞ!」
通路
サワタリの負傷は癒えたが、ディスカバリーは他の二人より足が遅い。ナーギニーが背負い、一本道を駆け抜ける。サワタリはマキビシやトラップを設置して追手を足止めさせる。やがて彼らは開かれたシャッターフスマをくぐり、地下の断崖までたどり着いた。橋の向こう岸に「三な電」のノレン。
崖下は倉庫になっており、積まれたコンテナ類が見える。一行は橋を駆け抜ける!その時だ!「「イヤーッ!」」二人の人影が下から飛び上がり、橋の上に着地!挟み撃ちだ!ノレン側にアサイラム、背後にエルトリアト!「ドーモ、お久しぶりです」「ドーモ」互いにアイサツは済んでいる。
「今度こそ捕まえたぞ。貴様らをバラバラに切断殺!」アサイラムは残虐に目を細めた。「ネズミめいてダクトを通り、逃げ果せた気だったろう?残念だな、見るがいいこの状況悪化を。前門のタイガー、後門の……」サワタリは両者の足元へ何かを投げた。……発煙筒!KABOOOOOM!
「「グワーッ!?」」両者の視界が赤黒い煙で覆われた。ヨロシ施設内から盗んできたものに手を加え、即席のスモークボムにしたのだ!三人は目を閉じ、ニンジャ第六感とディスカバリーのテレパシー指示で方向を確認!「「イヤーッ!」」アサイラムの頭上を飛び越えてノレンへと駆け抜ける!
ゴウランガ!突破成功!「ヌウウーッ!」ガキィン!アサイラムは牽制のスリケンをイアイで弾き返し、後ろを振り向く!足元にはマキビシや油!「『戦う前に勝て』『泥棒に入る前に火をつけろ』……ミヤモト・マサシの兵法だ」サワタリは火縄で点火した油綿を撒き散らす。KABOOOM!
「「ヌウウウーッ!」」油で濡れた通路が火に包まれる!アサイラムとエルトリアトはカラテで弾くが、火のついた綿は下の倉庫へも!……KABOOM!KABOOOM!KABOOOOM!薬品や粉塵に引火し爆発!断崖は火と煙に包まれる!「貴様らの相手はしておれん。サラバ!」「に、逃がすかーッ!」
戦闘開始
1ターン目
「バイオ・イアイド!」アサイラムはサワタリへ追いすがり四本腕で斬撃!SLASHSHSH!「サイゴン!」紙一重ブリッジ回避!「い、イヤーッ!」ディスカバリーは煙の彼方のエルトリアトへスリケン投擲!「ヌウッ!」しゃがんで回避!しかしこの距離では連続側転しても追いつけぬ!「逃がさん!」
エルトリアトは色付きの風と化して煙から飛び出し、ブラッドサッカー・クナイをサワタリへ投擲!「キエーッ!」刃には無数の穴が空いており、突き刺さった標的を失血死させる特殊構造だ!「ヌウウーッ!」ガキィン!サワタリは紙一重でこれを弾き落とす!「撤退重点!逃げることが勝利だ!」
「「イヤーッ!」」連続バック転でノレンをくぐり、第三電算室へエントリー!直後に橋の下でひときわ大きな爆発!KABOOOOOM!ナムサン!橋脚が折れ、橋が……崩れ落ちる!安普請か!「「な、なにィーーーッ!?」」エルトリアトとアサイラムは橋の破片を飛び渡り、ノレンを目指すが……!
「サイゴン!」ノレンの彼方から油瓶が投げつけられ、空中で破裂!エルトリアトとアサイラムの全身を濡らす!「「うおおおーーッ!」」二人は足を滑らせ崖下へ落下!これで死ぬとも思えないが、ひとまず戦線から離脱させたのだ。そしてこれなら、電算室へ他の追手も追いつけまい!「よし!」
戦闘終了
第三電算室
三人は素早く身を伏せ、周囲を確認する。第二電算室より遥かに広い。ここはバルコニー状の足場で天井に近く、20mほど下の電算室を囲むようになっている。見張りはない。奥のリフトエレベーターで昇降する仕組みだが、施設の他の区域との連絡通路はさっきの橋だけだ。「な、なんだ!?」
外の爆発が電算室まで響き、UNIXの前にいる研究サラリマンたちを怯えさせた。「作業を続けなさい」「は、ハイ!」近くにいたサブジュゲイターが腕組みして叱りつける。彼の傍らに武装クローンヤクザ二名。やや離れた位置にハイドラがいる。「侵入者のしわざですね。まったく、厄介な」
◆サブジュゲイター(種別:ニンジャ/バイオニンジャ)
カラテ 7 体力 13
ニューロン 9 精神力 12
ワザマエ 9 脚力 5/N
ジツ 4 万札 0
攻撃/射撃/機先/電脳 7/ 9/ 9/ 9
回避/精密/側転/発動 11/ 9/ 9/13
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:3
◇装備や所持品
▲▲戦闘用バイオトルソーLV1:体力+3、脚力+1
◉バイオニンジャ:体力+2、交渉判定難易度+1、アイテムによる回復量-1
●脆弱性:火炎(精神力1)
◆炸裂スリケン(バクチク・グレネード、3×3の範囲に爆発・火炎1)×1
◆伝統的ニンジャ装束一式:体力・精神力・即応+1、回避+2、緊急回避+3
脚力ダメージ軽減1
◇ジツやスキル
☆ヨロシ・ジツ(カナシバリ・ジツ読み替え)LV3 非ヨロシ者や上位権限者には無効
精神力1を消費し発動(N)、隣接する3×3マスの敵全員に精神力ダメージ1(回避N)
モブ敵ならこのターン中の手番を失わせる 精神力0になったモブは戦闘不能
LV2:さらに効果範囲内の敵1体に精神力ダメージD2(回避H)
命中した全員をターン終了まで崩れ状態(敵からの攻撃・射撃難易度-1)とする
LV3:この敵1体にさらにカナシバリ付与(ニューロン抵抗H)、モブ敵なら即死
カナシバリ:術者の次の手番まで拘束状態(崩れ+移動不能、行動難易度+1、集中不可)
★クローンヤクザ統率:指揮下にあるクローンヤクザの攻撃は「まとめて回避」不可
☆◉采配能力:精神力1消費しニューロン+ジツで判定(N)成功すると、
自分よりイニシアチブ値が低い味方を即時行動させる 同種モブは6体まで
出目66で脚力+2、666だとさらに攻撃・射撃判定難易度-1
★ヨロシ・マインドブラスト・ジツ:精神力1消費し発動(H)
術者を中心とした5×5マス以内の敵全員に精神攻撃(回避H)
体力と精神力に1ダメージ モータルが食らえばターン終了まで麻痺
◉◉タツジン:ジュージツ 近接攻撃回避判定難易度-1(素手・スリケン装備時のみ)
●ワザ:マウントタックル 出目66で発生、痛打+1、回避難易度H
マウントをとった敵に対する残り連続攻撃は回避不能(殺伐発生せず)
●ワザ:フランケンシュタイナー 出目666で発生、殺伐出目2(頭部痛打)
回避難易度H マウント状態に入る
●ワザ:受け流し 回避判定に出目66を含み迎撃を発生させた場合、
1ダメージの代わりに回避不能の回避ダイスダメージ2を与える
◉忠誠心:ヨロシサン(2) 精神力+2
◉マーク・オブ・ヨロシサン:精神力+1
●連続攻撃2、連射2、時間差、マルチターゲット
◉知識:バイオ系メガコーポ 記憶
能力値合計:33
サブジュゲイターは舌打ちした。だが、ここを離れるわけにはいかない。ストココココ、ストココココ、ストココココ……電算室内はUNIX音で満たされている。「ビョウキトシヨリヨロシサン。ビョウキトシヨリヨロシサン」ハイドラはうつろな三つの目を瞬かせ、洗脳チャントを呟いている。
◆ハイドラ(種別:ニンジャ/バイオニンジャ)
カラテ 9 体力 16
ニューロン 4 精神力 4
ワザマエ 6 脚力 6/N
ジツ 0 万札 10
攻撃/射撃/機先/電脳 9/ 6/ 4/ 4
回避/精密/側転/発動 9/ 6/ 6/ 0
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:0
◇装備や所持品
▲▲戦闘用バイオトルソーLV1:脚力+1、体力+3
▲▲戦闘用バイオサイバネLV1:バイオ武器LV1、ダメージ2、交渉判定難易度+1
◉バイオニンジャ:体力+2、交渉判定難易度+1、アイテムによる回復量-1
●脆弱性:火炎(精神力1)
◇ジツやスキル
◉頑強なる肉体:体力+2
◉即死無効
◉ハイドラの異常再生:手番開始時に自動で体力1回復
精神力1消費するとカラテ判定(難易度N)成功数だけ体力回復
出目66以上で部位破壊による能力値ダメージも即座に全回復
火炎ダメージを受けるとそのシナリオ中の体力上限も減少
バイオインゴット欠乏症時は使用不可
●連続攻撃2
◇洗脳状態:集中&アドレナリン・ブースト使用不可
気絶させてプロト・ヨロシ・ジツをかければ回復する
能力値合計:19
サワタリ、ナーギニー、ディスカバリーはバルコニーに身を伏せ、機をうかがう。実験室から回収したディスカバリーの、"プロトタイプ"のデータを解析しているわけだ。「ディスカバリー=サンは隠れていろ。まずは武装クローンヤクザを殺し、ハイドラを無力化して回収する」「「了解」」
ナーギニーはバルコニーの離れた場所へ移動し、ディスカバリーを物陰に下ろした。サワタリは闇の中に潜み、ショートボウに二本の毒矢をつがえて引き絞る。ナーギニーはスリケンを構える。狙うは武装クローンヤクザ!
「「TAKE THIS!」」BAMBAM!BASHSH!「「アバーッ!」」武装クローンヤクザたちが即死!ナムアミダブツ!「「「アイエエエ!?」」」研究サラリマンたちが驚愕!タイピング遅延!「タイピングしなさい!」「ハイ!」サブジュゲイターは苛立ち、バルコニーを睨む!「ここまで来るとは!」
戦闘開始
1ターン目
「出てきなさい!イヤーッ!」サブジュゲイターは矢が飛んできたあたりへスリケン投擲!「サイゴン!」サワタリは両手にマチェーテを構え跳躍!スリケンを躱しつつバルコニーから飛び降り、ハイドラへアンブッシュ!「イチノタチ!」SLASHSHSH!「グワ、アババババーッ!?」サツバツ!
KRAASH!ハイドラは顔面を斬り裂かれ、壁へ弾き飛ばされ激突!クモの巣状の亀裂が走る!「キエーッ!」続けてナーギニーが飛び降りながら三角跳び!壁を蹴って勢いをつけ、外骨格ブレードでハイドラへ斬りかかる!SLASHSHSH!「アバババーッ!」サツバツ!ハイドラは早くも瀕死だ!
「ビョーキトシヨリヨロシサン!」ハイドラは三つの目を赤く輝かせ、異常再生能力を発揮!みるみるうちに彼の食らった負傷が治っていく!コワイ!「GRRRR……AARGHHHH!」さらにヨダレを撒き散らしながらナーギニーへ飛びかかる!「キエーッ!」迎撃!SMASH!「グワーッ!」再び負傷!
「オノレ!ドーモ、サブジュゲイターです!」「サヴァイヴァー・ドージョー大将、フォレスト・サワタリです!」「ナーギニーです」「アバーッ……ドーモ、ハイドラです……ビョーキトシヨリヨロシサン……」ハイドラは洗脳チャント混じりのアイサツを返した。「やつを返してもらうぞ!」
サワタリはハイドラをマチェーテで示す。「お前の野心は聞いた。勝手にするがいい」「貴様……」サブジュゲイターは高い知能で瞬時に理解した。サワタリは"プロトタイプ"と接触したのだ。「外の連中は片付けた。そして我々は援軍を呼んだ。アメリカ軍……アパッチ攻撃ヘリコプター部隊をな」
「……なんですって?」サブジュゲイターは訝しんだ。この狂人の言う事は基本的に聞き流したほうがいいが、微妙に聞き流し難い。まさかアメリカ軍のヘリコプター部隊が来るはずはないが、何らかの援軍が来るというのか。第二電算室で見取り図をチェックしただけでなく、何らかの外部通信を!
「ええい、あなたたちを逃がすわけには行きません!私のカラテとジツで今度こそ叩きのめし、捕獲してさしあげます!」サブジュゲイターはジュー・ジツの構えをとった!ハイドラもふらつきつつカラテを構える!最終決戦!
戦闘継続
【続く】
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