見出し画像

忍殺TRPGリプレイ【コール・オブ・ザ・ナイト】02

 前回のあらすじ:ネオサイタマのナカニ・ストリートは、ヤクザクランとテクノギャングが抗争するマッポーの渦中にあった。そこへ現れたのは、油断ならぬ三人のフリーランスニンジャ。ヤクザもギャングも蹴散らす彼らに声をかけたのは、ツイン・オダンゴヘアーの女性。カラダニキヲツケテネ!

 ……ニンジャたちの暴虐が終わり、ストリートは静まり返っていた。転がる死体、散らばったUNIXパーツ、隠れて怯える住民たち。「ニンジャ……」「ニンジャナンデ……」感受性の高い住民から声が上がる。ニンジャはモータルにとって、遺伝子に刻み込まれた恐怖そのものだ。「さて、どうする」

 ヤクザやテクノギャングにトドメを刺し終えると、三人は周囲を見回す。「両方ブッ殺したからには、両方ブッ殺しに行きましょ」「まあ、もう少し情報を集めてみてもいいかも」……ふと見ると、酒場から女性が顔を出し、こちらを見ている。ツイン・オダンゴヘアーのハッカーらしき女だ。

「タキ=サンから?」「そうだよ。依頼人だね」「ハイ」彼女は覚悟を決めた表情で頷き、手招きした。「こっちへ」三人は頷き、「MASUDA」と看板を掲げた薄汚い民宿サルーンへ向かった。

民宿サルーン「MASUDA」

画像2

 正面にはシャッター。裏口から入ると、カウンターを挟んで老店主と、薄汚い金髪の男。情報屋のタキだ。「お、おう。ドーモ」「「「ドーモ」」」アイサツを返す。「アンタがここにいるってことは、要はトラブルに巻き込まれたのね」「ま、まあな。オレの義侠心が働いて……ほら」

 タキはオダンゴ・ヘアーの女ハッカーと店主に掌を向ける。「あ、うん。ドーモ、改めまして。依頼人のホリイ・ムラカミです」

画像3

「店主のツルギ・マスダだ。事情は聞いてる」

ダウンロード (21)

 Stable Diffusion Demoに「old bartender,mexico,sun glasses」と入力したらこう出ました。裸眼だと崩れて怖くなるのでサングラスをかけさせたほうが無難です。Picrewばかりもアレですし、たまには混ぜていきましょう。

「ドーモ、パートリッジです」「スティギモロクです」「パイアです」ニンジャアトモスフィアを抑え、アイサツを返す。三人のニンジャと三人のモータルが集った。「じゃあ、改めてダンゴウと行こうか」

ダンゴウ

代表1人がワザマエで交渉判定、難易度N。PAが挑む。「誘惑」で+1され7D6[4454265]成功。全員に緊急回避ダイス+3。

 タキ、ホリイ、ツルギ老人の話をまとめると、こうだ。タキとホリイは見ず知らずだが、このストリートと多少の縁があり立ち寄ったところ、銃撃戦に巻き込まれ、この店に逃げ込んだ。店主から事情を聞き、義憤に駆られた二人……主にホリイは、ストリートの抗争をやめさせたいと決意した。

 そこでタキが知恵を貸し、知り合いのニンジャチームを呼んだ……というわけ。「ソウカイヤに頼めば早かったのに」タキは首を振った。「そうもいかねえだろ。ニンジャたちが殺られるにしろ傘下に入るにしろ治安は戻るかもだが、住民はミカジメを今以上に搾取されることになるぜ」「なるほど」

「だからあんたらを呼んだ。善良でもないが、ソウカイヤとはちょっと距離を置いてるだろ」「まあね」ホリイはそれなりのカチグミで、カネは持っている。電子で前金を受け取っているし、ビズを受けたからにはなんとかせねばソンケイがすたる。「で、このストリートの現状だが……ご覧の通り」

 ツルギ老人によれば、ストリートの大部分はなおヤクザクランの支配下にあるが、地下採掘場をテクノギャングが抑えてしまい、採掘したUNIXパーツ等を売り捌くには彼らと取引せねばならなくなった。当然軋轢が生まれ、毎日のように抗争だ。マッポどころか神父もボンズも街を捨てた。

「残ったのは他に行くあてもない奴らさ」店主はため息をついた。「この店はたまたま二つの勢力の緩衝地帯にある。アウトローたちの溜まり場だし、取ってもカネにならねえしな。だが、攻め込まれたらオシマイだ。あんたらがどれだけ強くても、二つの勢力を同時に敵に回せば……」『ドッソイ!』

???

 不意に、酒場の電子呼び出し音が鳴る。こんな時間に誰が。「ちょっと待っててくれ」ツルギ老人が訝しみながら、UNIX端末のところへサイバネ義足を引きずりながら歩いていった。カタカタカタ、カタカタカタカタ……閉店状態の薄暗い酒場に、IRC対話タイプ音が響き渡る。「何?誰?」

「……ヤクザとギャングの交渉人が来てる。あんたらをヨージンボとして雇いたいと」「ちょうどいいぜ」スティギモロクが牙をむいて笑う。「暴れた甲斐があったな」「直接会う?」パートリッジは思案する。「勿体つけてやったがいいな。『契約条件を書いたものを差し出せ』と返事を」「了解」

 カタカタカタカタ……。ややあって、シャッターの隙間からマキモノとデータ素子がねじこまれた。ツルギ老人はそれらを受け取り、恐る恐るカウンターに戻る。「ど、どうする」一同はマキモノとデータを開いて内容を確認した。マキモノの方がヤクザ、素子はギャング。ヤクザの方が条件はいい。

「いいかしら」ホリイが声を潜めた。「まず、地下採掘場を調査したいの」「採掘場」「ええ。そこに私の師匠や知り合いも大勢閉じ込められてるの。店主に聞いたわ」「テクノギャングから潰すってわけね」パイアが牙をむいて笑う。「ち、違う。そいつらは人質なんだ」タキが慌てた。

「採掘されるパーツを鑑定するには、専門の知識や技能がいるんだ。そいつらを一緒に抑えてるから、数で優勢なヤクザクランは地下採掘場に手出しができねえ」「そこで暴れたら人質も殺されるってわけか」ホリイが頷く。「そういうこと。人質と接触して、LAN直結で情報を授受したい」「ふむ」

 ……店主とタキを残し、四人は裏口からシャッター側へ出ると、双方と交渉する用意があると告げた。「まずはテクノギャング、次にヤクザクランと交渉する。使者の片方はここで待つこと。最終的に僕たちがどっちへつくかは、僕たちが好きな時に決めるよ。上に伝えて」「「は、ハイ!」」

 使者たちは恐れ入り、それぞれの上司にIRC端末で連絡する。危険な交渉の始まりだ。

テクノギャングのアジト

 ナカニ・ストリート、地下採掘施設内。テクノギャング団「DシズムIIIファミリー」のUNIXアジト。黄色と黒のペンキで粗く塗装された鉄柵の上には、「ギャング」「支配」「集団的な暴力」と書かれた荒々しいネオンカンバンが掲げられ、トミーガンを持った屈強なスーツの男二人が立っていた。

「ドーモ。事情はだいたい伝わってるよね。交渉しよう」「その女は?」「僕のゲイシャだよ」「スミマセン」ギャングたちはオジギして一行を中へ迎え入れた。手のつけられぬ凶悪犯めいた眼差しを浴びながら、四人は奥へ進み、交渉のテーブルについた。「ドーモ、代表のパートリッジです」

 代表アイサツに対し、防弾ガラス越しに特徴的なサイバーサングラスをしたテクノギャングがアイサツを返す。「ドーモ、幹部のDシズムIVです」

ダウンロード (19)

 Stable Diffusion Demoに「cyberpunk sunglasses gang」と入力したらこう出ました。実際特徴的です。忍殺wikiには独立記事がありません。原作ではDシズムVIIだったりIVだったり表記ブレがあります。

「ニンジャがいると聞いてるけど、彼?」パートリッジは防弾ガラスの奥を指差す。腕を組んで壁に寄りかかり、横を向いていた男がこちらを向いた。

「……ドーモ、シツレイ。ドレッドノートです」

画像5

 イメジはmidjourney製で、公式の「ニンジャスレイヤーTRPGキャラアイコン集」からです。せっかくなので使ってみましょう。ステータス表はまだ開示されませんが、なかなかの手練れのはずです。

「ドーモ」一同オジギ。これでアイサツは済んだ。一同はソファに座り、大テーブルと防弾ガラスを挟んで対面する。「歓迎しよう。まずは酒を」幹部が手を叩くと、サイバーオイランが上等な酒をいくつも運んで来た。だが、パートリッジたちは酒に口をつけない。「お気に召さないかな」

「まだこっちにつくと決めたわけじゃない。ヤクザクランも同時に使者を送って来たからね。だけど、僕としてはこっちに興味があったから先に来た」ドレッドノートはなかなかの手練れ。こちらが束になってかかっても、他はともかく自分は危険だ。「……僕も彼女も、ローグハッカーだからね」

「そうだろう。ヤクザは少々時代遅れだからな。我々の側についたほうが賢明だ」幹部は満足げに頷いた。「だがヤクザのメンツも重んじなきゃあな」スティギモロクが鼻を鳴らす。「ソンケイがすたるぜ」「アタシはどっちでもいいよォ。ブッ殺したいだけ。ウヒヒヒ」パイアが邪悪に笑う。

「こういう仲間もいるし、いきなりってわけにはね。わかってほしい」「ああ……」幹部はやや気圧されたが、ニンジャはこちらにもいる。「そちらが我々につけば、ニンジャ戦力は四倍だ。つまり圧倒的有利」「あっちにいるニンジャは一人だけ?」「ああ。ブラックハンドなる……なかなかの」

 ごほん。幹部は咳払いし、ドレッドノートの方を見た。「いや、直情的で愚かなニンジャだ。先のイクサで、うちのドレッドノート=サンに右の眼球をえぐられた。大したことはない」「ヤツは俺が殺す」突然ドレッドノートが低い声で告げた。「お前たちは、他のヤクザどもを殺せばいい」

 彼のサイバネ腕が震え、蒸気を噴く。何か因縁があるらしい。「ふーん。それならラクそうだ」パートリッジが肩をすくめる。「相応の代価は要求するよ。モータルとはいえ、あっちの方が数は多いようだし」「それは勿論。ヤクザクランに勝利したあかつきには、充分な報酬を約束しよう!」

「ここで返事はしないよ。条件を見て、何も言わずにあっちにも行く。あっちの方がいいとなればそれまでだ」「わかってる。ただ、そうなると……この採掘場もオシマイだな」幹部が含み笑いする。来た。「それなんだけど、少し採掘場を見せてくれないかな。興味があってさ」「おお、勿論」

 幹部は即答した。価値のわかる者に見せれば、味方につく確率は上がるはずだ。それにドレッドノートらと金額について最終調整を行わねば。「客人を向かわせるには、いささか気が引ける、クソみてえな場所だがよ」彼はIRC端末でギャングメンバーを呼び出し、目付け兼案内人に指名した。

地下採掘場

 ゴゴゴゴゴ……武骨な昇降リフトが地下の足場をノックして揺れる。トミーガンを持った見張りギャングが出迎える。一行は広大な地下UNIX採掘場、ロービットマインの最上層に降り立った。「認証ゲートがあります」テクノギャングの団員「GNマサルVI」が先行し、LAN直結で解除した。

ダウンロード (20)

 シズムと同じ呪文で同時に生成されました。gangでなくmanで出すとピアスなどがなくなり、少しオラオラ感が抑えられます。

「ハァーッ、ハァーッ、ハァーッ……」ゲートの先には、一輪車を押しながら、ライト付ヘルメットの労働者たちが坑道や危険な崖の足場を行き交うのが見える。一行は安全な監視用の足場を進む。「ウワーッ!」崖では過剰労働疲弊したUNIX採掘労働者が、足を滑らせ暗黒へ落下していった。

 坑道、Y2K地殻変動で刻まれた断層、それに渡されたバンブー足場、タタミ敷きのハンダ溶接所、そこかしこで蠢くマグロ目の人々。幼いホリイが見た希望の光は微塵も残っていなかった。「あれは何?」ホリイが反対の壁面を指差し問うた。それが何か知っていたが、敢えて問うた。

「ああ……ライブラリです。薄気味悪いカルト共がそう呼んでるんです」ギャングが答えた。掘り出された旧世紀のラジオ・グリモアが何千冊も、金属製の棚に詰め込まれていた。かつてより肥大化している。「ゾクゾクするわね」「そうでしょう」「近くで見たいわ」「危険ですよ」「ダイジョブよ」

 PAは魅了、5D6[25526]成功。ギャングを魅了する。PRはハッキング判定、難易度H。9D6[165312264]成功。監視カメラを操作する。

「つべこべ言わずに案内なさい」パイアがギャングを睨むと、彼は震え上がって頷いた。頭がぼんやりとし、判断能力が失われる。NRSを応用したゼゲン・ジツだ。その隙にパートリッジは監視カメラをハッキングし、ホリイらの行動を記録できなくする。「なんだかわかんなくて、退屈ねえ」

 パイアはギャングにしなだれかかり、ジツの力を強める。「あっちでネンゴロしましょ」「あ、ああ……」ギャングはよだれを垂らしている。パートリッジはグリモアをチェックしつつ、ホリイを死角にかばう。スティギモロクは二人に随行し、見張りのギャングたちに睨みをきかせる。役割分担だ。

 ……やがて、ホリイは坊主頭のグリモア鑑定者と密かにLAN直結し、情報をニューロンの速度で授受する。「だいたいわかったわ。戻りましょう」ホリイは小さく震え、憤怒を抑えている。一行はテクノギャングの幹部から契約条件を記したマキモノを改めて渡され、民宿サルーンへと引き揚げた。

民宿サルーン「MASUDA」

 早朝。酒場のシャッターの前ではヤクザクランの使者が寝ている。裏口から酒場に戻った四人は息を吐き、タキと店主に状況を報告した。ホリイは人質から得られた情報を開示する。「かなりヤバいわ。ギャングたちは採掘場に爆発物を仕掛けていて、攻め込んでくれば人質ごと爆破するつもりよ」

「セキュリティも結構厳重だったね。どうする」「なんとかする。LAN直結で、人質が抜いたセキュリティシステムのデータを貰ってきた。これをもとにして、私が電子ウイルスを作る」「作る?」一同は眉根を寄せた。電子ウイルスを作る技術は、Y2Kとともに失われたはずだ。「そう、作るの」

 ホリイ・ムラカミは声を潜めた。「私には作れる。少し時間はかかるけど可能よ。あの地下採掘場で師匠から教わった、秘密のプログラミング技術」「あんた……ウィッチか」タキが恐れた。UNIXを汚染する疫病を作り出す、ハッカーではないタイプの電脳魔術師。「コードロジスト、と呼んで」

【続く】

つのにサポートすると、あなたには非常な幸福が舞い込みます。数種類のリアクションコメントも表示されます。