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忍殺TRPGリプレイ【ガールズ・レジェンド・ユー】01

邦題:乙女伝説貴女!(Girl's Legend U)

ドーモ、三宅つのです。これは、古矢沢=サンのシナリオ案「ドラゴン・ユカノ救出作戦」を元にしたリプレイ小説です。割と大幅に改変していますが、一応ネタバレにご注意下さい。

つのバースでは、ドラゴン・ドージョーに1人の女憑依ニンジャが所属しています。すなわち、彼女です。

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◆フェイスフル(種別:ニンジャ)
カラテ       4    体力        4
ニューロン     5    精神力       6
ワザマエ      5    脚力        3
ジツ        0    万札        9
DKK       0    名声        6

◇装備や特記事項
◆家族の写真:精神力+1
○信心深い:余暇ごとに万札を-1してDKKを1減らせる(余暇スロット消費なし)
 ◉知識:宗教(ブディズム)
◇カルマ:善

能力値合計:14 回避ダイス:5

前回の冒険でカラテが上昇し、比較的油断ならなくなりましたが、まだまだ駆け出しです。名声は6ありますが成長の壁に達した能力値がないので保留します。そして前回の冒険の直後、ドラゴン・ドージョーの隠れ庵はソウカイ・シンジケートの襲撃を受けます。余暇どころではありません。

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フェイスフルはフジサンから無事帰還した。彼女が持ち帰った薬草により、ドラゴン・ゲンドーソーは少し体調が回復するだろう。しかし完全な回復にはやはり、アンタイ・ニンジャウイルス「タケウチ」のワクチンをヨロシサン製薬から奪取するしかない。それはニンジャスレイヤーの任務だ。

フジサンに登るよりも困難な、聖杯探索じみた難行。それは果たして、彼に何をもたらすのか。―――ふと、ユカノはバンブー林の奥の暗がりを振り返った。そこに、傷だらけのニンジャがいた。「……フジキド」

「ユカノ」両者は互いの名を呼ぶと、軽く会釈した。年齢は10歳以上離れており、カラテのワザマエも比べるべくもないが、同じドラゴン・ゲンドーソーの弟子として、ふたりは姉と弟のような関係にある。とすると、フェイスフルはふたりの妹だろうか。「ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン!」

フェイスフルはアイサツした。「ドーモ、フェイスフル=サン」ニンジャスレイヤー、フジキド・ケンジもアイサツを返した。ユカノはふっと微笑む。「お帰りなさい、フジキド。彼女も今戻ったところよ。フジサンから薬草を調達して来たの」「それは。大したものだ」「い、いえ!そちらこそ!」

彼女は慌てて顔の前で両手を振る。ここ数ヶ月、タケウチのワクチンを求めて各地のヨロシサン製薬の研究所や工場を探りまわっているという彼に比べれば、大した冒険ではないと思えた。ニンジャスレイヤーも、最初は彼女を警戒していたが、善良な人格を持つことを理解して警戒を解いた。

「センセイのご容体はどうだ」「……あまり、よくない」「そうか」「この薬草で、少しは症状を抑えられるかも。けれどやはり、ワクチンがなければ難しい……」フェイスフルはふたりの間に立ち入ることはしない。いい仲、というには微妙だが、少なくとも友好関係にはあると言える。

フェイスフルは走り出て、庵の障子戸を引き開けた。ニンジャスレイヤーとユカノは腰を屈めて滑り込む。粗末な室内には、フートンから半ば身を起こした姿勢で、ミイラのように痩せた老人がこちらを見つめていた。彼こそはドラゴン・ゲンドーソー、すなわちローシ・ニンジャである。

「ただいま戻りました」ニンジャスレイヤー、ユカノ、フェイスフルが並んで膝をつき、深々と頭を下げる。死と隣合わせにある老いたドラゴンとはいえ、彼の放つ眼光と威厳は並々ならぬものがある。「フェイスフル=サンが薬草をフジサンから持ち帰りました」ユカノが報告する。「よくやった」

ねぎらいの言葉をかけられ、フェイスフルは額をタタミに擦り付ける。偉大なリアルニンジャに認められたのだ。「……ユカノ。これを」ニンジャスレイヤーは懐からササの葉の包みを取り出し、差し出す。「ヨロシサンが秘匿していた、タケウチ・ウイルスのワクチン。そのアンプルだ」

「えっ」「これでセンセイもきっと、持ち直す。フェイスフル=サンの薬草も、必ず役に立つ」気丈なユカノの目に、涙が滲んだ。「フジキド……!」嗚咽をこらえ、ユカノは台所へ向かう。「薬草を煎じ、チャを立てます。ワクチンをそれに溶き入れれば、必ず……!」「わ、私も手伝います!」

ふたりは台所へ向かい、それぞれの作業を行う。現代医学の粋であるワクチンと、ニンジャの秘薬であるチャ、そしてフジサンの薬草。3つの要素がひとつに溶け合えば、ゲンドーソーの蝕まれた肉体は急速に回復するに違いない。フェイスフルはユカノの指示を受けつつ、懸命に薬草を煎じた。

ゲンドーソーとニンジャスレイヤーは何事か話し合っている。『無茶をしおって、フジキド=サン……ゴホ、ゴホッ』『たやすい事です。鉄の意志と、この私に宿るニンジャソウルをもってすれば』……フェイスフルは作業に没頭しつつ、彼らの会話を聴く。フジキド・ケンジがニンジャと戦う理由を。

「できました、ユカノ=サン」「ありがとう。では……」ユカノは漆塗りの椀にマッチャ・パウダーを少し入れ、薬草を煎じた汁を吹き冷まし、ゆっくりと椀へ注ぎ入れた。さらにアンプルの中のワクチンを少しずつ注ぎ込み、深く呼吸しながら竹製のチャセンでかき混ぜる。伝統的なチャドーだ。

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フェイスフルは、ユカノの優雅で鮮やかな手付きに見とれた。彼女はいまだ太古の暗殺術としての「チャドー」を知らないが、上流階級に伝わる高尚で複雑な礼儀作法としての「チャドー」については聞き及んでいる。ユカノのそれは、詳しくはないフェイスフルにも「完璧だ」と感じさせた。

チャを立て終わると、ユカノは盆に椀を載せ、隣室へ運ぶ。フェイスフルは跪いた姿勢でフスマを奥ゆかしく引き開ける。「お祖父様。チャが入りました」「うむ。すまんな……。若者らに働かせるばかりで、なんと口惜しきこの老体よ……」老人は椀を手に取ると、震える手で一息にチャを飲み干す。

……その時である!

ヒュルルルルルル……KA-BOOOOOM!KA-BOOOOOM!KA-BOOOOOM!

屋外で爆発音!空気が震え、不快な熱波が庵の中まで到達!まさか!「ユカノ!フェイスフル=サン!センセイを連れて脱出を!イヤーッ!」ニンジャスレイヤーは障子戸を開いて飛び出した。ああ!なんという事か!竹林が、燃えている!夜空にはドクロめいた月をよぎるVTOLらしき機影!

「ソウカイ・シンジケートの爆撃か!」ニンジャスレイヤーの心は千々に乱れた。尾行か。発信機か。まさかフェイスフル=サンが……否!おそらくは自分!「すまぬ!俺が……」燃え上がる竹とモミジの林を背後に、陽炎の中ゆっくりと近づいてくる人影があった。見覚えがある。人影はオジギした。

「ドーモ。ニンジャスレイヤー=サン。ダークニンジャです」

「ドーモ。ダークニンジャ=サン。ニンジャスレイヤーです」

脱出

「ソウカイ・シンジケート!?」フェイスフルは震えた。ヌケニンの自分が見つかれば、当然処刑だ。「逃げよ、ユカノ。フェイスフル=サンと共に」ゲンドーソーはフートンから立ち上がった。深く呼吸を繰り返すと、みるみるうちに彼の体内から強力なカラテが湧き起こる。チャドー呼吸だ。

「お祖父様!」「センセイ!」「お前たちは未熟だ。ドラゴン・ドージョーを受け継ぎ、再興せよ。ワシはニンジャスレイヤー=サンを救いに行く!」ゲンドーソーはタンスから白い装束を取り出して身に纏い、さらには額に三角の布を当てた。死装束だ。彼はこの場で敵と刺し違えるつもりなのだ!

ユカノとフェイスフルの目から大粒の涙が溢れた。せっかくタケウチのワクチンが効いたのに。「チャと、ワクチンと、薬草。全てが効いた。ワシの命はここで尽きても、ドラゴン・ドージョーの教えは絶えぬ。ニンジャスレイヤー=サンは必ず生き残る。彼を頼れ」「ハイ」「ハイ。どこへ逃げれば」

フェイスフルがおずおずと問う。「ネオサイタマを離れよ。中国地方のジャングルの奥か、あるいは……フジサンの麓へ」ゲンドーソーは力強く笑い、ふたりの肩に手を置いた。「頼むぞ。必ず生き延びよ」「「ハイ!」」もはや何をか言わん。ふたりは涙を流しながら、必死に庵から駆け出した。

やがて。

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……ニュークめいた爆発が起こり、自然公園を吹き飛ばした。ソウカイヤは中国地方のドラゴン・ドージョーを滅ぼすのにバンザイ・ニュークを用いたというが、よもや市街地でそれを使用したというのか。「……あれは、お祖父様のヒサツ・ワザでしょう」ユカノは走り続ける。「今、亡くなられた」

ドクン。ユカノとフェイスフルは、心臓が大きく拍動し、目の前が暗く、狭くなっていくのを感じる。ドラゴン・ゲンドーソーが、ローシ・ニンジャが死んだ。たった今まで生きていたのに。しかし、死者は蘇らない。彼の遺志を継いで生き続けよ。それが彼に対する礼儀であり、供養となるのだから。

「フェイスフル=サン。感謝します」ユカノは走りながら礼を述べた。「もし今、私ひとりであれば、どんなに辛く苦しかったか」「いえ……」「いてくれるだけでよいのです。仲間とはそうしたもの」フェイスフルは涙を拭い前を見る。「フジサンへ逃げましょう。フジキド=サンには後で連絡を」

自分が追跡されていたとすればこれほど心苦しいことはないが、そうではないと信じたい。フジキド=サンのせいでもない。全てはソウカイ・シンジケートのしわざだ!「そちらに隠し通路があります」「ハイ!」ユカノに教えられ、竹林を駆け抜けると、茂みにオジゾウ・スタチューが立っている。

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「これは」「そのオジゾウを動かせば、下水道に通じる抜け道があります」ユカノは躊躇うフェイスフルの前に進み出て、オジゾウを動かした。「貴女が信心深いのは良いこと。けれど、半神的存在であるニンジャが宗教に強くとらわれる必要はありません。いま必要なことをしましょう」

「ハイ……」「まあ私も修行中の身で、ミコーでも半神的存在でもありませんが」ユカノは涙を拭う。「ブッダがこの場に居れば、許してくれます」「ハイ!」死んだら終わりだ。フェイスフルはオジゾウに手を合わせてオジギし、抜け道へ駆け込むと、内側からオジゾウを動かして蓋をした。

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◆ドラゴン・ユカノ(種別:ニンジャ)
カラテ       4    体力        4
ニューロン     4    精神力       4
ワザマエ      7    脚力        5
ジツ        0    万札        1
DKK       0    名声        ?

◇装備や特記事項
●連射2
◉疾駆(通常移動での移動可能マス+2)
◉常人の三倍の脚力:脚力+1、連続側転難易度-1
◉トライアングル・リープ:連続側転で壁に触れて移動した時、
 直後の近接攻撃の難易度上昇を無視し、痛打+1を加える
◉◉タツジン(スリケン):射撃スタイル選択可
 ●マシンめいた精密投擲:射撃難易度HARD、回避難易度HARD、連射-1
 ●強投擲:カラテで射撃判定、射撃難易度HARD、痛打+1、連射-1
 ●フェイント投擲:射撃難易度HARD、敵1体の回避ダイス-1して射撃
 ●防御的スリケン投擲:射撃難易度HARD、射撃回避難易度-1、連射-1

◉ニンジャピル作成:余暇を1日費やし、ニンジャピルの小袋を再使用可能にする(自動)
◆ニンジャピルの小袋:体力1回復、持続性の毒を消去
 使用後にD6を振って出目が1だとストックが尽きる
◆伝統的ニンジャ装束:回避ダイス+1

◉浮世離れ:UNIXやIRCなどによるハッキング判定難易度+2
◉知識:伝統的アート、貴族の流儀、古代ニンジャ文明(断片的)
◉交渉:超然
◇カルマ:善

能力値合計:15 回避ダイス:8
駆け出しユカノ。ワザマエが成長の壁を超えており、スキルも回避ダイスも多めなので割と安心感があります。危機に陥ればなにかが起きるでしょう。フェイスフルがいなければ自我が崩壊して危ないところでした。

アワビ・ディストリクト

自然公園は、メガロ工業地区の懐に位置している。下水道を抜けて地上に出たユカノとフェイスフルは、布で顔を覆い隠し、闇に紛れて西へと向かう。「どこかで輸送トラックに潜みましょう」「ええ。けれど……」突然のニュークめいた爆発により、付近にはマッポが展開し、検問所を設けている。

「荷台を探られて見つかれば、運転手の方にご迷惑をかけます。もう少し離れましょう」「ハイ」ニンジャ存在感を消し、闇から闇へ駆け渡る。

ワザマエ判定、難易度NORMAL。5D6と7D6で[26131][2266151]=成功。

「ニュークだ!」「地下施設とかの爆発な!?」「政権交代!」周囲の人々は大規模な爆発現象に気を取られ、ふたりを気にもとめない。世間知らずで浮世離れしたユカノに比べれば、ネオサイタマ育ちのフェイスフルは多少は土地勘がある。ビルの隙間を抜け、裏路地へ。誰も追っては来ない。否!

「ほう?貴様ら、ニンジャか?」裏路地に、男がひとり立っていた。ふたりは警戒する。ニンジャだ!「ソウカイ・シンジケートか?それとも野良か? ……ふーむ、そっちはたぶんモータルだな。俺は感覚が鋭敏だからわかる」男はアイサツを繰り出した。「ドーモ、クラミドサウルスです」

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◆クラミドサウルス(種別:ニンジャ)
カラテ       3    体力        3
ニューロン     3    精神力       6
ワザマエ      5    脚力        4
ジツ        4    万札       10

◇装備や特記事項
◉疾駆(通常移動での移動可能マス+2)
◉常人の三倍の脚力:脚力+1、連続側転難易度-1
◉忠誠心:ザイバツx2 精神力+2
◉マーク・オブ・ザイバツ:精神力+1
 体力0でも精神力があれば行動可能(ペナルティあり)

☆ステルス・ジツ:ジツLV4 精神力1を消費し発動判定NORMAL
 成功すると戦闘終了まで敵からの攻撃・射撃判定難易度+1(累積なし)
 この状態にある間、いかなる移動スタイルも使用できない
 回避に失敗してダメージを受けた場合、フェイズ終了後に解除
 術者が手番攻撃フェイズ中に何らかの行動を取った場合は直ちに解除

 ★ステルス・アンブッシュ:ステルス時に近接攻撃を行う場合に痛打+1
  敵の回避難易度+1

能力値合計:19 回避ダイス:8
通りすがりのクラミドサウルス=サンです。サンシタかと思いきやジツ値が4もあり、斥候・偵察としては結構油断なりません。

「ドーモ、……ユカノです」「フカミです」ふたりはアイサツを返したが、ドラゴン・ドージョーの者と知られるわけにはいかぬ。こうした時にニンジャネームを伏せたり偽名を用いたりすることは、ニンジャには許されている。「ふむ、知らんな。あの爆発と何か関係があるのか?」「……いいえ」

クラミドサウルスは好色そうな眼差しをふたりに向ける。「ソウカイヤではないのだな?」「……ハイ」「とすると、ザイバツか?」「……いいえ」ザイバツ・シャドーギルド。キョートを本拠地とする暗黒ニンジャ秘密結社だ。「それなら野良か。ザイバツ・シャドーギルドに来る気はないかね?」

ユカノは毅然と答える。「ありません。そこをどいて下さい。急いでいますので」「つれない女よ!」フェイスフルは慌てた。クラミドサウルスと名乗るザイバツ・ニンジャにまだ敵意はないようだが、怒らせればまずい。

交渉。ワザマエかニューロン判定、難易度HARD。「交渉:超然」「知識:貴族の流儀」「知識:ソウカイヤ」で+2。ユカノは11D6、フェイスフル(フカミ)は5D6で[242223151][44452]=両者あやうく成功。

「ザイバツであれば、ソウカイヤの敵ですね。私たちは……イッキ・ウチコワシのニンジャです」ユカノはブラフを吐いた。彼女はフジキドやフェイスフルから、ネオサイタマの暗黒組織の勢力状況を軽く聞き知っていたのだ。詳しくは知らないが、ソウカイヤと敵対する過激アナキスト集団だという。

フェイスフルは頷いた。「嘘をついてもいい」とはブディズムの教えにもある。命を守り、善行をなし、人を勇気づけるためには、多少の嘘も時に必要だ。ブッダは人間性を熟知している。クラミドサウルスは肩をすくめ、鼻を鳴らした。「なんだ、そうか。面倒くさい連中よな」「どうかご内密に」

「わかった、わかった。俺も任務中だ。ぼやぼやしてはおれん。オタッシャデー」「「オタッシャデー!」」クラミドサウルスは去っていった。ユカノとフェイスフルは一礼し、無事に通過する。「危ういところでした」目立ってはならない。揉め事はなるべく避けねば。これもふたりのイクサなのだ!

走れ!ユカノ!フェイスフル!走れ!

【続く】

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