忍殺TRPGリプレイ【セレブラル・ランデヴー】02
前回のあらすじ:謎のニンジャ・アシッドウルフに率いられる若き「鷲のニンジャ」三人組は、暗黒メガコーポ・メイライ社の重役であるアルトゥール博士を確保・尋問する任務を命じられた。彼が休暇をとっているネオサイタマのペントハウスへ、三人は潜入を開始する!カラダニキヲツケテネ!
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『安い、安い、実際安い』ペントハウスでのパーティー当日。空虚な宣伝文句を側に、三人はマグロ・ツェッペリンの広告ネオンの上で重金属酸性雨を浴びている。この広告宣伝船は唯一、ターゲットが所有するペントハウスの付近を通過する。ゆえに、侵入経路として選択された。
眼下には対重金属酸性雨加工が施されたバルコニーテラスが見える。予想される着地誤差は、高層ビルの間を吹き抜ける風の影響を考慮しても軽微。容易に修正可能。「行くわよ」「ああ」「いち、にの」サイバーメイヘムが勝手にカウントダウンする。「「「……イヤーッ!」」」降下!
潜入開始
マップ全容
南:バルコニー
三人が着地したのは、ペントハウスの南側、正面バルコニーだ。屋内とはガラス戸越しに視線が通っており、重金属酸性雨の中とはいえ、立ち止まっていれば警備員に発見される。三人はしめやかに右側へ動き、身を隠した。間取りや警備員、オイランドロイドの配置は事前調査で判明済みだ。
三人は招待客の少年少女を装うため、そこそこ裕福そうな、かつ目立たず動きやすい衣装に着替えている。IDを提示しろと言われたり、家族はどこかと問われれば困るが、瞬時に気絶させて物陰に隠せばよかろう。「さて、まずは……このガラス戸ね。うまく解錠しないとセキュリティが来るわ」
デッドリーパーはアシッドウルフからの教育でセキュリティには詳しい。進み出てガラス戸の物理鍵をニンジャ器用さで解錠する。「……よし」少し手ごわく、冷や汗をかいたが、警報は鳴らない。三人はしめやかにペントハウス屋内への潜入に成功した!「博士は一番北側にいるわ。どう動く?」
選択肢はいくつかある。一番確実なのは、ここからトイレに入り、窓のセキュリティを解除して、ビルの外壁を移動することだ。少なくとも屋内の敵には見つからず、直接博士のいるであろう部屋に侵入できる。だが……外側に監視や好機の目がないとも限らない。発見されれば射殺されるだろう。
せっかく招待客に変装しているのだし、このままペントハウス内部を何食わぬ顔で移動し、情報を集めながら進めばよい。幸い自分たちは少年少女で警戒されにくい。迷子になったふりをすればいいし、何か聞かれても「わかりません」で通せば済む。相談を終えた三人は頷き、潜入行動を継続する。
???
トイレ前の通路を北に向かうとドアがあり、オーセンティック・バーがあって、招待客たちがドリンクを飲みながら談笑している。少年少女が入るのはやや問題があるが、通るだけならよかろう。三人はしめやかにバーへ忍び込んだ。カウンターには数人の招待客、バーテンダーはオイランドロイド。
ドロイドの背後は広いガラス張りの窓になっており、ネオサイタマの夜景が一望できる。貪婪なブッダデーモンの宝石箱のようなきらめきは、残業や過重労働を行うサラリマンたちが灯す命の火の輝きだ。それを空の上から眺めおろし、酒の肴とすることができるのは、ごく一部のカチグミだけだ。
バーの奥には中央ホールに通じる大きな扉があり、左右に警備員が二人立っていて微動だにしない。彼らの左手、バーの正面奥には、別の扉がある。三人は物珍しそうに周囲を見回し、オイランドロイドらに見つからないよう頭を低くしつつバーを通過する。……ガチャリ。正面ドアが開いた。
『ドーモドスエ』オイランドロイドはペコペコとオジギし、警備員や招待客をアルカイック・スマイルとともに見回しつつ、優雅にバーを進んでくる。清掃兼監視用のオイランドロイドだ。三人はオジギし、しめやかに道を開けた。……オイランドロイドはオジギを返し、通り過ぎていった。
「なかなかいいオイランドロイドですね!」「前後したい!」客たちがさざめく。「バーテンダー・オイランドロイドたちも奥ゆかしくストイックでいいですね!」「前後したい!」「オムラの技術というやつですか。しかし、中央ホールに飾られている戦闘兵器は、オナタカミ社製ですな……」
「敵対企業。オムラに睨まれませんかね」「細かい事はいいじゃないの!」客たちは背後の三人に気づかず、カウンター席での談笑を続けている。
???
警備員たちの前を通り抜け、三人は正面ドアをくぐった。中は瀟洒な小部屋で、強い蒸留酒と煙草のにおいが漂っている。革張りの椅子に腰掛けた初老の男が、グラスを弄びながら葉巻をくゆらせていた。「どうしたね、君たち」男は酔眼で三人を見る。「迷子かね。ご家族を探してあげようか?」
三人はオイランドロイドめいたアルカイック・スマイルを浮かべる。「ちょっと探検してるだけです。お構いなく」「そうかね。仲良しだな」男は目を細めた。「ここの主人のアルトゥール博士も、奥さんと娘さんを連れてきているとか。もし出会ったら、この名刺を渡しておいてくれないかね」
男はピッと名刺を取り出し、デッドリーパーに手渡した。『投資家 シンマキ・ソウキュウ』と書かれている。「ハイ」「君たちの名は聞かないでおこう。楽しい探検の邪魔はしないよ」シンマキは虚無的に笑った。「博士の娘さんは、君たちよりは年上だ。オナタカミ社の広報担当だとか……」
シンマキは壁に目を向け、独り言のようにつぶやく。「中央ホールの戦闘兵器を見たかね? あれはメイライ社の独自技術を組み込んだ、オナタカミ社製品……まあ、娘さんの人脈によるのだろうが……」彼はグラスを傾ける。「装甲だけはオナタカミで、中身はオムラだ。どうも気に食わんなァ!」
暗黒メガコーポと関わりのある人物のようだ。三人は彼の話しぶりに気を取られ、なかなか先に進めない。なぜか聞き入ってしまう魅力があるのだ。ネオサイタマで投資家としてカチグミになるほどの人物であれば、そうした能力があっても不思議はない。あるいは、彼は……「おっと、シツレイ」
シンマキは抑揚のない笑い声をあげた。「君たちには、まだ難しかったかな。とにかく、博士やその家族によろしくと伝えておいてくれ」「ハイ」
???
三人はオジギしてシンマキのいる部屋を立ち去り、北側の通路に出た。別のオイランドロイドが向かってきてオジギした。『ドーモドスエ』「「「ドーモ」」」三人がオジギして脇に避けると、オイランドロイドは先程の小部屋に入っていく。奥には中央ホールへの扉があり、左右に警備員が立つ。
「こっちだ」三人はしめやかに向かって右、北側のドアを開けるが、そこにも警備員が二人立っていた。博士のいる部屋は向かって左だが……『『どうしましたか』』警備員たちは抑揚のない声を出した。「エート、ここは?」『右には美術品の展示室があります。よろしければご鑑賞ください』
『左はアルトゥール博士のオフィスで、立入禁止です』「エート、名刺を渡しに行けと……」『我々が預かります』三人は顔を見合わせた。美術品鑑賞などしても仕方ない。盗みに入ったわけでもないのだ。ここで彼らを瞬時に始末しなければ、オフィスには入れないだろう。ならば……やるしかない!
◆メイライ・ブラックスーツ(種別:モータル)
カラテ 2 体力 1
ニューロン 2 精神力 2
ワザマエ 4 脚力 3
ジツ - 万札 1
攻撃/射撃/機先/電脳 3/ 6/ 2/ 2
◇装備や特記事項
▶テッコLV1:カラテ判定と回避+1
▷内蔵型マシンピストル:ダメージ1、連射2、時間差
▶ヒキャクLV1:脚力+1
◆サイバーヘルメット(サイバーサングラス):射撃+2
能力値合計:8
「あ!」デッドリーパーが天井を指差し、見上げた。警備員たちも思わずそちらを向く。「「シューッ!」」『『アバッ』』アースハンドとサイバーメイヘムが駆け寄り、警備員たちの首を瞬時にへし折って始末した。ナムアミダブツ!「よし」「死体を置いといたらマズいわ。どこかに隠しましょう」
二人は各々死体を背負う。オフィスのドアには鍵や罠はない。この二人がセキュリティそのものだ。幸い、他の警備員やオイランドロイドと常時情報をやりとりしている様子はない。デッドリーパーがしめやかにドアを開け、三人はオフィスに侵入した。「こっちにクローゼットがあるわ」「よし」
???
三人はクローゼットに死体を隠すと、極秘IRC通信でアシッドウルフに連絡する。「モシモシ。標的のいるオフィスに潜入成功しました」『よくやった。速やかに彼を捕縛して尋問し、情報を抜き出せ。尋問内容は随時指示する』「ハイ」「連行するのは?」『尋問してからだ。詳しくは後だ』
三人に否応もない。気絶させて運搬するにしても、見咎められれば危険ではある。ならば、この場で尋問した方が早いという判断だろう。「了解しました」『よし。急げ』アシッドウルフは行動を急かす。博士は部屋の奥で何か書き物をしており、こちらの気配には気づいていない。チャンスだ!
【続く】
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