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忍殺TRPGリプレイ【イー・アル・ファンクラブ】02

 前回のあらすじ:ソウカイ・シンジケートに「外交部門」が創設された。暗黒メガコーポやヤクザクランなど、様々な組織や個人と交渉・折衝を行う部門だ。他の組織から引き抜かれ、この部門に配属された三人のニンジャたちは、さっそくニチョームでのビズに派遣された。カラダニキヲツケテネ!

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「で、さっそくビズの話だ。さっきテメエが見てた方、ニチョームでの交渉になる。知ってると思うが、ここは裏社会における中立地帯で、ウチも敵対組織も手が出せねえ。騒ぎは起こすな」「ハイ」「交渉相手はネザークイーンって手練れのニンジャだ。資料はこれだ」「ハイ」

 ブルータルライオンはテキパキと資料を読み、マキーナオスクラとフォーコに内容を伝えていく。彼は元サラリマンで手際が良い。「交渉内容はまだ秘密だ。詳しい話は現地でデンパルス=サン、サイレントシャドウ=サンに聞け。問題があれば俺様に連絡して相談しろ」「ハイヨロコンデー」​

 しばらく質疑応答したのち、三人はブリーフィングルームを立ち去り、ニチョームへと急いで向かった。タイムイズマネー!

ニチョーム

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「ドーモ、デンパルスです」「サイレントシャドウです」ニチョームの指定された場所に着くと、男女のソウカイニンジャが三人を迎えた。「ドーモ、ブルータルライオンです」「ニーハオ、マキーナオスクラね」「マーノディフォーコ!フォーコでいいよ!」三者三様にアイサツし、名刺交換する。

 デンパルスはにこやかに三人を握手し、歓迎する。「ようこそようこそ。これでオレたちの負担も軽くなるってモンだ」「努めさせていただきます。それで、交渉内容について伺いたいのですが」「おう、それなんだが……あっちで話そうぜ」「ハイ」五人は一軒の闇カフェテリアへ入っていく。

 事情はこうだ。ソウカイヤ系列のバーで従業員が殺された。犯人は胡乱な野良ニンジャ「マッドハクジラ」だ。ソウカイヤのメンツにかけて放置するわけにはいかないが、調べた結果そいつはニチョームに潜伏しており、中立の不戦地帯であるこの場所でソウカイヤが直接手を出すわけにはいかない。

「……って理由わけで、ニチョームの顔役ニンジャであるネザークイーン=サンに対処を依頼することになった。が……」デンパルスは腕組みをして眉根を寄せる。「ソウカイヤの『命令』でニチョームが動いた、となるのは少々不味い。それに、情報が虚偽うそって可能性も有り得るンだ」

虚偽うそって?」フォーコが訝しんだ。「ああいや、そいつが従業員を殺してるのは真実マジだ。証言も、監視カメラの映像もある。けど、ネザークイーン=サンからしたらハイそーですかと許諾のみこめねェってこったよ。ウカツに冤罪被せて始末したら、ニチョームの信用を損なう」

 デンパルスは抹茶ラテをすすった。「オレらが信頼、信用されてねェってワケじゃあねェ。互いのメンツの問題なんだ。わかるか」「ハイ」「だいたいわかったね」「了解りょ」三人は頷く。「ええと」サイレントシャドウが挙手する。「今回の事件について、資料はまとめてありますので」

調査判定、難易度H。素の能力値から得られるダイスの上限値は6。マキーナオスクラ/MOはワザマエで判定、サイバネアイで+1され7D6[5514336]成功。ブルータルライオン/BLはニューロンで判定、生体LAN端子で+2され8D6[16552634]成功。フォーコ/MFはワザマエで判定、サイバネアイと「知識:カチグミエリア」で+2され8D6[44122632]成功。(サイバネはダメとしても素+知識で判定成功している)

 三人は素早く資料に目を通す。フォーコは紙の資料を読むのを好まず、携帯IRC端末で撮影しようとしたが制止された。極秘情報なのだ。……「成程」三人は頷いた。マッドハクジラは危険な電脳ドラッグ「イルカチャン」をIRC上で度々購入しており、放置すればさらなる被害を引き起こすだろう。

 ネザークイーンとはすでにデンパルスらが準備交渉を行い、この場所で待ち合わせしている。そろそろ時間だ。カランカラン……カフェテリアのドアが開き、レザージャケットを纏った長身のオネエが入ってきて、ツカツカと五人の席へ近づくとオジギした。「ドーモ、ネザークイーンです」

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 五人は立ち上がって各々アイサツし、三人はネザークイーンと名刺交換する。「この三人は初顔合わせね。五対一とは、随分プレッシャーかけてくるじゃない」ネザークイーンは笑いながら席についた。「然るべき証拠ってのは見つかったかしら。アータたちのことは信じてなくもないけど……ね」

PCのうち代表者1人が交渉判定。難易度はUH3から先程の調査判定の成功人数ぶん、すなわち3下げてH。能力値から得られるダイスの上限値は6。MOが挑む。サイバネアイで+1、伝統的礼装で+1、「交渉:共感」で+2。10D6[5446352566]成功。

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 マキーナオスクラが代表で交渉を行う。彼女は比較的礼儀正しく、相手と対等な立場に立つことを示して、恐怖や不信感や不安感を取り除く話術を心得てもいる。サイバネアイでの観察、伝統的な礼装による信頼感、やや大げさな身振り手振りを交えての話法に、ネザークイーンは唸った。

「そういうわけで、彼は実際危険な電脳薬物中毒者。放置すると多大な迷惑が重点ね。あなたの街にも被害が出るよ」「……わかった。情報提供、感謝するわ。マッドハクジラ=サンの件については、アタシたちが責任を持って対処しましょう」ネザークイーンは頷き、笑い、握手した。交渉成功だ!

「でも身柄や首級は、アタシからそっちへ引き渡すわけにはいかないわね。『交渉』してニチョームから出ていって貰う、という形になるけど」「充分ッス。心底感謝マジアザッス」デンパルスは会心の笑みを浮かべ、ネザークイーンと握手した。「それじゃ、アタシはこれで。またね」

 ネザークイーンは手を振り、笑顔でカフェテリアを立ち去った。「心底感謝っした!」「ど、ドーモ」デンパルスとサイレントシャドウは、三人と握手してオジギする。「これでビズはオシマイかしら?」『……いや、まだあるぜ。ひとまずよくやった』IRC端末からソニックブームの声が響く。

「「「「「ど、ドーモ」」」」」一行はその場にいないソニックブームに思わずオジギした。サイバネに仕込まれた盗聴器などでこちらの会話はツツヌケなのだろう。『これが今日の第一ミッションだ。第二ミッションは……今送った位置情報の場所へ急行しろ。家紋タクシーを回す』「ヨロコンデー」

 ブルータルライオンは深々とオジギする。通信終了。「では行きますか。後は任せました」「お疲れッス」「アリガトゴザイマシタ」

???

 三人はクローンヤクザが運転する家紋タクシーに乗り、指定された場所へ向かう。そこはオムラ・インダストリの支社ビルだ。ソウカイ・シンジケートとオムラは物理的な癒着関係にある。「到着しました」『おう。そこに、フューネラル=サンってウチの手練れニンジャがいるはずだ……』

 ソニックブームはやや小声になった。『怒らせるとヤバイんだが、なんかトラブルがあったらしい。話を聞け』「ハイヨロコンデー」通信終了。三人は戦々恐々としながら、ビルに入っていく。ソウカイヤのクロスカタナ紋のバッジをチラつかせただけで、役員が飛んできてペコペコとオジギした。

「ドーモ、大変お世話になっております!」「ドーモ。なにかトラブルがあったとか」「アッハイ、どうぞこちらへ!」役員は汗をハンケチで拭きながら、三人をエレベーターへ案内する。ウィーン……ポーン。『最上階、ドスエ』役員と三人が進み出ると、そこには異様なアトモスフィアが漂う。

『フーッ……まだ見つからないのですかァ?我々をナメ切っているとみなしますよ?』苛立った声が奥の部屋から響く。強烈なニンジャアトモスフィアを感じる。おそらくフューネラルのものだ。『も、申し訳ありません!直ちに!』『タイムイズマネー。皆殺しにされたくなかったら急ぎなさいね』

「アイエエエ……!」案内役員は青い顔でガクガクと震え、腰を抜かした。「ヤバそうね」「急ぎましょう」三人は脂汗を垂らしながら奥へ進む。「ドーモ、お忙しいところ失礼します。このたびソウカイ・シンジケート外交部門に配属されました、ブルータルライオンです」ドアの前で代表アイサツ。

『外交部門?ああ、ゲイトキーパー=サンが新設するとか言ってましたね』ギィィ……苛立った声とともにひとりでにドアが開き、恐るべきニンジャがこちらをぎろりと睨んだ。「ドーモ、初めまして。フューネラルです」

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 ザイバツ・グランドマスターにも匹敵する強大なニンジャです。束になってかかってもまず勝てません。元シナリオではインシネレイトが派遣されていますが、今回は彼にしました。どのみち危険極まります。

 他の二人のニンジャもアイサツし名刺交換する。シックスゲイツどころかラオモト・カンにも匹敵しかねない強大なニンジャだ。彼は空中に座って周囲を睥睨し、その足元ではオムラの社員たちが泣きながら床を這い回り、机の引き出しや戸棚などを全て開け、必死で何かを探している。「やれやれ」

 フューネラルは肩をすくめた。「何の御用ですかな?」「ええと、その。ソニックブーム=サンから、ここに来るようにと言われまして……何かトラブルがあったとか」「ええ。実にくだらない」フューネラルはふてくされ、空中に寝そべった。「書類が一枚見当たらないというのですよ。全く!」

代表者1名がフューネラルに交渉判定、難易度H。能力値から得られるダイスの上限は6。ここはMFが挑む。サイバネアイで+1、伝統的礼装で+1。8D6[24456154]成功。

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 彼とやや波長の合いそうなフォーコが宥めながら事情を聞けば、こうだ。この支社ビルには近々ラオモト・チバが視察に訪れる予定であり、そのための日程調整と当日の警護に関する相談を行うため、フューネラルが派遣されたわけだ。「……ところが、これです。いやはや涙にくれておりますよ」

 彼は苛立ち、ふてくされている。強大なニンジャでありながら、このようなくだらないビズを命じられ、取るに足りないモータルのサラリマンたちの不手際で時間を浪費している。そのことが腹立たしいのだ。今更ザイバツに寝返るのもシャクなので、ソウカイヤにとどまってはいるが……。

代表者1名がオムラ社員に交渉判定、難易度H。能力値から得られるダイスの上限は6。MFが続けて挑むと難易度が+1されるので、ここはBLの出番だ。生体LAN端子で+2、伝統的礼装で+1、「交渉:共感」で+2、「知識:サラリマンの流儀」で+2され13D6[4645356114213]成功。

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 フォーコがフューネラルを宥めている隙に、ブルータルライオンは恐慌状態にあるオムラ社員たちを落ち着かせる。彼のサラリマン的な洗練された立ち居振る舞い、奥ゆかしい服装と言葉遣いに、混乱していた社員たちは共感をおぼえ、徐々に落ち着いてきた。「……では、落ち着いて探しましょう」

代表者1名が調査判定、難易度はUH2から2下がってH。能力値から得られるダイスの上限は6。MOが挑む。サイバネアイで+1、「交渉:共感」で+2。9D6[436543441]成功!

 三人が加わって書類の詳細を聞き出し、室内をくまなく調べると、やがてマキーナオスクラがデスクの一つから問題の書類を発見した!「み、見つかったんですか!?ヤッタ!」「アリガトゴザイマス!」オムラ社員らは涙を流し、抱き合って喜んだ。「だ、誰の席だ!?ケジメだ!セプクだ!」

「あ、その席は……!」社員の一人が叫んだ。「フマレ=サンです!つい先日、戦闘兵器のテストで重傷を負って入院中の!」「ああ、彼か」「なんか死んだって話だぜ」「じゃあセプクはナシか?」「誰がセプクするんだ?」オムラ社員たちは責任を押し付けるため、コソコソと話し合う。

「勝手にしなさい」フューネラルは肩をすくめ、ため息をついた。「ソニックブーム=サンたちの顔に免じて、命や指は助けてあげますよ。ただし私を苛立たせたぶん、カネでオトシマエはつけてもらいますが」「ハイヨロコンデー!」「スミマセンデシタ!」一同ドゲザ!「ハイ、一件落着」

 フューネラルはパチパチと拍手した。と、三人のIRCに着信。『よくやった。こっちも結構ヒヤヒヤしたぜ』「ドーモ。まだミッションがありますか?」『おう。今日はこれで最後だ。その場はフューネラル=サンに任せて指定された現場へ向かってくれ』「ハイヨロコンデー」通話終了。

「それでは、我々は次の現場へと参りますので。ヨロシクオネガイシマス」三人はフューネラルにオジギ。「ああ、ドーゾ。……その外交部門とやらには興味がありますね。私も加わりたいとソニックブーム=サンやゲイトキーパー=サンに伝えておいてください」「「「ハイヨロコンデー」」」

 フューネラルは胡散臭くはあるが強大なニンジャだ。外交部門の代表なり顧問なりに立てれば後ろ盾になるし、彼のメンツも立つだろう。電脳部門と並び機密情報を扱う部門ゆえ、裏切りには最大限に警戒せねばなるまいが。

???

 最後の目的地は、ヨロシサン製薬の支社ビルだ。『この支社には、ザイバツのニンジャが出入りしてるって噂がある。あくまで噂の段階だが、捨て置けねェ。ヨロシサンはソウカイヤと提携関係にあるが、オムラほど密接な関係にはねェ。もしザイバツと組まれればヤバイ』ソニックブームから通知。

「そいつをブッ殺せって?」フォーコが首を傾げる。彼女やマキーナオスクラはカンフーのタツジンではあるが、手練れニンジャを相手にすればやや苦戦するかも知れない。『違う。疑惑について調査して、可能な限り情報を抜き出せ。始末するのはその後だ。こっちで充分な戦力を見繕う』「ハイ」

「けど、私たちヨロシサンの社員でないよ」『IDはこっちで用意してある。抜き打ちの視察だとして堂々と調査しろ。当然、クロスカタナ紋は外しておけ』「了解」『家紋タクシーの後ろに、ヨロシサン社員の変装セットが入ってるはずだ。それを着ろ』「了解です」『いいか、揉め事は起こすなよ』

 ソニックブームは念入りに念を押す。ソウカイヤとヨロシサンの政治的な関係は実際微妙なのだ。「わかっておりますよ」『じゃあ、気をつけろよ』通信終了。「今回は少々ハードそうなビズですね」ブルータルライオンはメガネを指で整えた。「リラックスして行こうよ。ね、マキチャン」「誰ね」

 フォーコはマキーナオスクラにしなだれかかる。「マキーナオスクラって長いじゃん。マキーナのマキ」「じゃあ、このメガネはなんて呼ぶね」「んー、ブルりん?」「なんとでもお呼びください」「そろそろ到着です」家紋タクシーは運転ヤクザがIDを提示し、社員専用の地下駐車場へ入っていく。

【続く】​

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