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忍殺TRPGリプレイ【イー・アル・ファンクラブ】03

 前回のあらすじ:ソウカイ・シンジケートに「外交部門」が創設された。暗黒メガコーポやヤクザクランなど、様々な組織や個人と交渉・折衝を行う部門だ。他の組織から引き抜かれ、この部門に配属された三人のニンジャたちは、さっそく様々なビズをこなしていく。カラダニキヲツケテネ!

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 最後の目的地は、ヨロシサン製薬の支社ビルだ。『この支社には、ザイバツのニンジャが出入りしてるって噂がある。あくまで噂の段階だが、捨て置けねェ。ヨロシサンはソウカイヤと提携関係にあるが、オムラほど密接な関係にはねェ。もしザイバツと組まれればヤバイ』ソニックブームから通知。

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「そいつをブッ殺せって?」フォーコが首を傾げる。彼女やマキーナオスクラはカンフーのタツジンではあるが、手練れニンジャを相手にすればやや苦戦するかも知れない。『違う。疑惑について調査して、可能な限り情報を抜き出せ。始末するのはその後だ。こっちで充分な戦力を見繕う』「ハイ」

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「けど、私たちヨロシサンの社員でないよ」『IDはこっちで用意してある。抜き打ちの視察だとして堂々と調査しろ。当然、クロスカタナ紋は外しておけ』「了解」『家紋タクシーの後ろに、ヨロシサン社員の変装セットが入ってるはずだ。それを着ろ』「了解です」『いいか、揉め事は起こすなよ』

 ソニックブームは念入りに念を押す。ソウカイヤとヨロシサンの政治的な関係は実際微妙なのだ。「わかっておりますよ」『じゃあ、気をつけろよ』通信終了。「今回は少々ハードそうなビズですね」ブルータルライオンはメガネを指で整えた。「リラックスして行こうよ。ね、マキチャン」「誰ね」

 フォーコはマキーナオスクラにしなだれかかる。「マキーナオスクラって長いじゃん。マキーナのマキ」「じゃあ、このメガネはなんて呼ぶね」「んー、ブルりん?」「なんとでもお呼びください」「そろそろ到着です」家紋タクシーは運転ヤクザがIDを提示し、社員専用の地下駐車場へ入っていく。

調査

全員が調査判定、難易度H。素の能力値から得られるダイスの上限値は6。MOはワザマエで判定、サイバネアイで+1され7D6[1441512]成功。BLはニューロンで判定、生体LAN端子で+2、「知識:サラリマンの流儀」で+2され10D6[3633366422]成功。フォーコ/MFはワザマエで判定、サイバネアイで+1され7D6[5335425]成功。全員に緊急回避ダイス+2。

 事前の計画通り、三人は抜き打ちの視察と称して社内にエントリーする。巧みな話術、堂々たる振る舞い、蠱惑的な視線により、社員たちは逆らうことなく三人をもてなし、調査に協力する。……その結果、すでにこの支社がザイバツの影響下にあることが判明した。社員たちは気付いてすらいない。

 この支社では特殊なバイオ改造プロジェクトを開発しており、ザイバツニンジャ「カピラリア」にそれを施してしまっている。彼の顔にはプリズム状の単眼があり、そこから七色の光線を放って、命中したものを原子分解してしまうのだ。また頭には魔術的なニンジャ頭巾をかぶっているという。

 仮にカピラリアがカナシバリ・ジツ等の使い手であったとすれば、社員たちは彼や協力者によって洗脳されている可能性がある。彼は現在もしばしば視察に訪れ、バイオサイバネの調整やセッタイを受けて帰っていくという。バイオサイバネアイの詳細情報もゲットできた。充分な収穫である。

『……成程、お手柄だ。威力部門の手練れをそっちへ派遣した。テメエらはそいつらに引き継ぎするまで監視しながら待機しろ』「ハイヨロコンデー」彼らは新参者の外交部門であり、暴力行為は本来の任務ではない。差し出がましい真似をすれば威力部門のニンジャのメンツを潰すことにもなろう。

???

 だが、その時。「カピラリア=サンがおいでになりました!」オーエルが社内に駆け込み、報告する。社員たちはざわめいた。「どうするね」三人は小声で相談する。「逃げ出すのは怪しまれます。いっそこのまま彼にインタビューし、情報を抜き出しましょう」「いいね!拷問!」「違います」

「……実際、私たち新入りで、ザイバツニンジャにも顔割れてないね。このままヨロシサン本社から来たニンジャエージェントの社員ということにすれば、怪しまれないね」「うちらバイオニンジャでもないし、バイオサイバネもつけてないけど」「言わなければわかりませんし、気にしませんよ」

「じゃあ、オモテナシね。ついでに睡眠薬でも盛っちゃおうか!」「それは最後ということで」「了解おけぴ」ソニックブームの了承も得、作戦は決まった。三人は社員たちに歓迎するよう指示を行い、何食わぬ顔でカピラリアを迎える。……やがて、奇怪な単眼のニンジャがふらりと現れた。

「ドーモ、カピラリアです」

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◆カピラリア(種別:ニンジャ/バイオニンジャ)
カラテ       4    体力        6
ニューロン     9    精神力      11
ワザマエ      7    脚力        4/N
ジツ        5    万札       12

攻撃/射撃/機先/電脳  4/ 7/12/ 9
回避/精密/側転/発動  9/ 7/ 9/16
即応ダイス:4 緊急回避ダイス:4

◇装備や所持品
▲▲▲▲戦闘用バイオサイバネLV2:ダメージ2、出目6で痛打+1
 △△△プリズムの瞳:「★★原子分解光線」を1ターン目から使用可能
 △過剰バイオニューロン移植:イニシアチブ+2
●過剰バイオサイバネ(8個):精神力-3
◉バイオニンジャ化:体力+2、交渉判定難易度+1、アイテムによる回復量-1
●脆弱性:火炎(精神力1)
 
◆魔術的ニンジャ頭巾:発動+1
◆伝統的礼装:精神力・発動・交渉判定+1
 カルマロンダリングとユウジョウ判定時にダイスを1回だけ振り直せる

◇ジツやスキル
☆ヒカリ・ニンジャクラン、ジツLV5
 ☆ヒカリ・ジツLV3:精神力1を消費し発動(N)
  術者の縦・横・斜めいずれか1方向にレーザーを射出し、直線上の敵全員を攻撃
  2ダメージ、装甲貫通1、射程12マス(壁や障害物まで)、回避H(隣接敵は回避-1)
  望むならば範囲内の敵1体のみに対し装甲貫通D3(標的以外にはダメージなし)
 ◉◉グレーター級ソウルの力:ニューロン+ジツで精神力換算
 ★★原子分解光線:2ターン目以降の手番攻撃時に精神力3消費し発動(H) 連続使用不可
  ヒカリ・ジツLV3の効果に加え、範囲内の敵1体に対してのみ、
  3ダメージ・装甲貫通D6・回避Hの収束ビームを放つ(隣接敵は回避-1)
  出目66で殺伐、666でナムアミダブツ 殺伐出目1の弾き飛ばしは発生せず

◉◉タツジン:ジツ ジツに対する回避・抵抗判定難易度-1
 ●発動スタイル
  エテル引き寄せ:出目666(集中時は66)で発動成功した場合、精神力1回復
  兆候読み取り:本来と同じコストを支払って発動判定を振り直し可能
  危険な賭け:コストを2倍支払い発動難易度+2、回避難易度+1 戦闘中1回限り
   上昇した発動難易度に届かず通常難易度で発動した場合は回避難易度-1

●連射、時間差、マルチターゲット
◉電光石火:イニシアチブ+1、側転+2
 側転成功時に出目666なら回避ダイス3、6666なら4獲得
◉滅多突き:精密攻撃の戦闘スタイルを持つ武器装備時のみ使用可
 回避ダイス2を消費し、ワザマエで連続攻撃2(固定) 殺伐・痛打なし
 回避ダイス4を消費でワザマエで連続攻撃+1(殺伐・痛打なし)、使用直後は崩れ状態に

能力値合計:30
 元シナリオのデータを整理するとこうなります。実際強力ですが、これ以上バイオサイバネやサイバネを積むとグレーター級ソウルの力も原子分解光線も使えなくなります。

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「ドーモ、ようこそおいでくださいました。私はブルータルライオンです」「マキーナオスクラね」「フォーコです!」「ドーモ。……貴様ら、見ない顔だな。しかもニンジャとは」カピラリアは訝しんだ。「新入りです。お客様については伺っております。ご贔屓いただき大変ありがとうございます」

 三人は社員ともども深々とオジギする。カピラリアはやや警戒したが、三人に敵意はないし、見たところさほど強くもない。もし束になってかかってきても、こちらには必殺の原子分解光線がある。「そうか。ではいつものように、バイオサイバネの調整とセッタイをよろしく」「ヨロコンデー」

 カピラリアを連れて、三人は応接室へ向かう。彼の好みやセッタイの内容については調査済みだ。インタビューの始まりである。

応接室

全員が交渉判定、難易度UHだが調査に成功したため1下がってH。能力値から得られるダイス上限は6。誰かが失敗すると戦闘に突入するため(かつ出目6の個数でボーナスがつくため)、ここは全員が即応ダイス6をつぎ込む。柔軟に状況判断した結果である。サイバネや礼装でボーナスはつくとする。

 カピラリアはかなりの手練れであり、危険なバイオサイバネやジツも持っている。最大限に注意深く、かつ自然に接しながら騙し通し、情報を抜き出さねばならない。睡眠薬は製薬会社ゆえ(かつ社員が常用しているゆえ)簡単に調達できたが、これもうまく盛らねば気取られ、こちらの命に関わる。

 直接の暴力を伴わなくとも、これはイクサなのだ。『ウナギにドジョウを一匹混ぜる者あり。ならばウナギにはかえって手を抜くべからず』……平安時代の哲人剣士、ミヤモト・マサシの残した格言である。「ドーゾ。つまらないものですが」マキーナオスクラが奥ゆかしく抹茶と菓子を勧める。

MOはサイバネアイで+1、伝統的礼装で+1、「交渉:共感」で+2。6+6+1+1+2=16D6[4441234232356644]3成功。出目6は2個。

「いえ、結構です。悪いです」カピラリアは奥ゆかしく一度断る。ここですぐに受け取る愚者は蛮人とみなされ、ムラハチだ。「そうおっしゃらずに」「それでは」一度断ったことで十分な奥ゆかしさが付与され、カピラリアは茶器を受け取る。その袖口からチラリと見えたのは……ザイバツ紋だ。

 彼は儀式めいて手元で茶器を二度廻した後、口元に運ぶ。一息に飲み干せば「ヨクバリ」扱いで即時にムラハチである。三度茶器を傾け、茶器の底にわずかにチャの緑を残すのが正当なワビチャとされる。茶菓子に先に手を伸ばせば、当然蛮人とみなされる。これがキョート流だ。「結構なお点前で」

「ドーモ」マキーナオスクラは奥ゆかしくオジギ。「ネオサイタマはゴミゴミして奥ゆかしくないが、こうしてうまい抹茶を飲めるところもある。……オーガニックでないのは少々残念だが」彼はぽつりと呟いた。「これは大変シツレイいたしました」「いやいや、責めるつもりはない……ふう」

 彼はため息をついた。「ここはバイオが専門だし、俺はバイオニンジャになってしまった。こうなれば、後はいくところまでいくつもりよ」「とおっしゃいますと?」ブルータルライオンが茶菓子を勧めながら問う。ニンジャは本能的に、質問されれば答えなければならない。コトダマの力なのだ。

BLは生体LAN端子で+2、伝統的礼装で+1、「交渉:共感」で+2、「知識:サラリマンの流儀」で+2。6+6+2+1+2+2=19D6[6546212614154233641]6成功。出目6は4個。

「うむ……まず白湯さゆ(訳注:抹茶パウダーを加えない温水)を」「ハイ」カピラリアは、茶菓子……バイオインゴット入りの緑色のヨーカンを奥ゆかしくクロモジの菓子楊枝で切断し、少し口に運ぶ。そしてマキーナオスクラが勧める白湯を少し飲む。なんたる奥ゆかしさであろうか。

「……俺の組織は、少々、頭が古い者が多くてな。バイオやサイバネ、UNIXなどを見下している。それではいかん。この支社を足がかりに、ヨロシサン製薬本社と本格的に手を組まなければ、と思っておるのだ」「大変ありがとうございます!」ブルータルライオンは深々とオジギした。

「実は我々、ちょうど本社から視察に参りました者でございまして。弊社といたしましても、ぜひそちら様と提携を……」「うむ。ことは秘密裏に進めたい。俺の派閥の上司は、実際バイオ技術に理解を示しておられる」カピラリアはセッタイに気を良くし、組織の秘密情報を少しずつ漏らし始めた。

「噂によるとヨロシサン本社の上の方に、その上司の昔からの知人がおられるとかでな。おそらく企業秘密なのだろうが、何か聞いたことはないか?」「さて、私共は新入りでございまして」「ああ、そうだったな。ともかく本社に話を……」カピラリアの単眼のまぶたが少しずつ、下がってきた。

「む……」彼は大きな単眼をしばたたく。「どうやら、お疲れのご様子で。ただいまバイオサイバネの調整準備ができますので、どうぞそちらでリラックスし、お休みになってくださいませ」ブルータルライオンは奥の仮眠室へ案内する。「ああ……実際、目を酷使してはいかんな。すまん」

MFはサイバネアイで+1、伝統的礼装で+1、「知識:カチグミエリア」で+1。6+6+1+1+1=15D6[643235526242523]5成功。出目6は2個。3人とも成功し、出目6は2+4+2=8個。6個が最大なので大成功だ。報酬万札+12。

 仮眠室では、フォーコが胸元をややはだけた蠱惑的な姿でカピラリアを出迎えた。「ドーゾ、ドスエ」「うむ……」カピラリアは次第に朦朧となり、フートンに横になるや高いびきをかきはじめた。「おやすみなさい。カラダニキヲツケテネ、アカチャン……」フォーコは笑って添い寝する。

 三人は無言でサムアップした。作戦成功だ!やがてソウカイヤの威力部門のニンジャチームが到着し、熟睡しているカピラリアを難なく捕縛した。『よくやった。今日のところは以上だ。こっちへ戻ってこい』ソニックブームは安堵した声で三人を讃えた。「「「ヨロコンデー!」」」

エピローグ

 ……ニチョームに隣接する超高層ビルの一室、ブリーフィングルーム。三人は三つのビズを上首尾に終えて、そこに戻ってきた。時刻はすでにウシミツ・アワー。「ご苦労だった。初めてにしちゃあ上出来だ」「「「アリガトゴザイマス」」」三人はソニックブームに深々とオジギする。

「なんかあれば手助けしてやるつもりだったが、その必要もなかったな。これで安心して仕事を任せられるぜ」「今後ともご鞭撻のほどを」「いや、俺様はスカウト部門と掛け持ちはできねえ。これ以上仕事を抱え込むのはまっぴらなんでな」ソニックブームは眠そうだ。「では、この部門の統括者は」

「まあ、しばらくはゲイトキーパー=サンの直属扱いだな。フューネラル=サンも顧問として来てもらおう。デンパルス=サンはスカウト部門だが、サイレントシャドウ=サンともども、こっちとも協力できるだろう。電脳部門や斥候部門、威力部門とも……」「ソウカイヤ、掛け持ちが実際多いね」

 マキーナオスクラが首を傾げた。「仕方ねえだろ。ザイバツみてえに派閥作られるとめんどくせえし、ウチは人材の流動性を重点して切り盛りしてんだ。誰がどこでどんな仕事するかは、その時の状況次第なんだよ」ソニックブームはソファに身を沈めた。「以上。以後、ここが外交部門の本拠だ」

「ここですか」「ニチョームは政治的に重要だからな。ちょうどいいだろ」「遊びに行きやすくていい感じ!」フォーコははしゃいだ。「さっそく遊びに行こうよ、マキチャン」「私帰って寝るね。健康と美容重点」「私もそうさせていただきます」「えーっ。じゃあデンパルス=サンのとこ行こっと」

 こうして、ソウカイヤには「外交部門」が創設された。他の部署と比べて外面の重要性が高く、モータルからも信頼を勝ち得なければならない。一見善良にも思えるが、あくまでソウカイヤの実利のために存在する。群雄割拠のマッポーの時代を、三人はどのように生き抜いていくのであろうか……。

【イー・アル・ファンクラブ】終わり​

リザルトな

評価:A+ 三つのビズを全て成功させ、ザイバツとヨロシサンに関わる機密情報を入手し、ザイバツニンジャ「カピラリア」を篭絡して捕縛させた。万札66+12=78を山分けとし、名声2、余暇4日を獲得。元シナリオでは名声3だが、もとが5あるので今回は減らしておく。78を3で割って26ずつ。全員借金6あるので返済し、手元には万札20ずつが残る。

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