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忍殺TRPGリプレイ【ジ・ユニヴァース・イズ・ベリー・ストレンジ】01

邦題:宇宙は大ヘンだ!(The Universe is Very Strange)

 ドーモ、三宅つのです。これはI.P.=サンのシナリオ案「ニンジャと崩れゆく日々」および原作小説「ナイト・エニグマティック・ナイト」を元にしたリプレイ小説です。ネタバレにご注意ください。

 ティーンエイジャーのニンジャソウル憑依者を追跡し、戦闘するシナリオです。フリーランスニンジャたちが挑むことが想定されていますが、ソウカイヤやザイバツ、アマクダリや暗黒メガコーポのスカウト部門が関わってもいいでしょう。今回はフリーランスとし、新たなニンジャを作成します。

ニンジャ創造

「成長の壁1つを超えた、名声5-9程度のニンジャ3-5人(16スクラッチ推奨)」という結構な戦力が想定されていますが、今回はサイコロを振ってみましょう。弱すぎれば数を増やすか調整します。

 1人目は[2362]=カラテ2、ニューロン3、ワザマエ6、ジツ0。能力値合計11のサンシタです。初期スキルは[3]=ランスキック、初期アイテムは[5]=ZBR、初期知識は[56]=危険生物、初期サイバネは[2]=ヒキャク。生い立ちは[45]=サイバーゴス。脚部サイバネに「▷ブースター・カラテユニット」を無料で埋め込みます。生い立ち知識は[1]=サイバネティクス。性別は[3]=奇数、男性です。カラテは貧弱ですがキック力のあるサイバーゴス少年ニンジャが生まれました。ニンジャネームは……元シナリオの敵ニンジャはオリオン座の星の名にちなんでいますから、そうしましょう。

 オリオン座の左の膝にある恒星をリゲル(Rigel)といい、アラビア語の「リジル・アッ=ジャッバール(巨人の足)」ないし「リジル・アッ=ジャウザー(ジャウザーの足)」に由来します。ジャウザーとはアラビアの伝説でオリオンに相当する勇敢な女性のことといいます。ベテルギウスは「ヤド・アッ=ジャウザー(ジャウザーの手)」が訛ったものですが、つの次元にはすでにビートルジュース=サンがいましたね。

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◆リゲル(種別:ニンジャ)
カラテ       2    体力        2
ニューロン     3    精神力       3
ワザマエ      6    脚力        4/N
ジツ        0    万札      -12
DKK       0    名声        1

攻撃/射撃/機先/電脳  3/ 6/ 3/ 3
回避/精密/側転/発動  7/ 6/ 6/ 0
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0

◇装備や所持品
▶ヒキャクLV1:回避ダイスと脚力+1
 ▷ブースター・カラテユニット:近接攻撃ダイス+1
◆ZBRアドレナリン注射器

◇ジツやスキル
◉ランスキック:脚力値で近接攻撃判定(N、回避N)
 命中すると殺伐出目1(痛打+弾き飛ばし) 殺伐が出たら殺伐出目D6も可
 脚力7以上で連続攻撃2可能 迎撃回避不能
○生い立ち:サイバーゴス
◉知識:危険生物、サイバネティクス

能力値合計:11

 2人目は[5252]=カラテ5、ニューロン2、ワザマエ5、ジツ0。能力値合計12のサンシタです。初期スキルは[5]=ニンジャソウルの闇、初期アイテムは[2]=オーガニック・スシ、初期知識は[44]=ザイバツ、初期サイバネは[3]=サイバネアイ。生い立ちは[45]=サイバーゴス。サイバネアイに「▷全方位監視アイ」を無料で入れます。生い立ち知識は[6]振り直して[2]=ファッション。性別は[4]=偶数、女性です。闇持ちでザイバツに関する知識がある女サイバーゴスニンジャです。ニンジャネームはメイサとしましょう。

 これはオリオン座の頭部にある恒星で、「輝くもの」を意味するアラビア語アッ=マイサンに由来します。もとはふたご座の星につけられた名が混入したもので、「馬の巻き毛」を意味するアッ=ハカアとも呼ばれました。

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◆メイサ(種別:ニンジャ)
カラテ       5    体力        6
ニューロン     2    精神力       2
ワザマエ      5    脚力        3/N
ジツ        0    万札      -12
DKK       0    名声        1

攻撃/射撃/機先/電脳  6/ 6/ 3/ 3
回避/精密/側転/発動  7/ 6/ 6/ 0
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0

◇装備や所持品
▶サイバネアイLV1:ワザマエ判定ダイス+1、射撃時さらに+1
 ▷全方位監視アイ:回避ダイス+2
◆オーガニック・スシ:体力3回復(使い切り)

◇ジツやスキル
◉ニンジャソウルの闇(1):体力及び攻撃・射撃・ジツ発動判定ダイス+1
○生い立ち:サイバーゴス
◉知識:ザイバツ、ファッション

能力値合計:12

 3人目は[2466]=カラテ2、ニューロン4、ワザマエ6、ジツ3[6]=謎めいたニンジャソウル体力と精神力が+3されます。初期アイテムは=オーガニック・スシ、初期知識は[36]=オイランドロイド、初期サイバネは[3]=サイバネアイ。生い立ちは[61]=ローグハッカー。「キーボード・オブ・ゴールデン・エイジ」を持ちます。生い立ち知識は[65]=IRCネットワークと旧世紀地下道網。舞台はガイオンとしますから、アンダーガイオンに詳しいのでしょう。性別は[2]=偶数、女性です。物理・論理のアングラに詳しいミステリアスな女ハッカーニンジャとなります。カラテには期待できません。

 ニンジャネームはタビトとします。これはオリオン座の右の袖、西端部に位置する星で、「耐えるもの」「変わらぬもの」を意味するアラビア語アッ=タービトに由来します。星座図によってはライオンの皮や盾を構えている手の部分ですから、防御力がありそうです。

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◆タビト(種別:ニンジャ)
カラテ       2    体力        5
ニューロン     4    精神力       7
ワザマエ      6    脚力        3/N
ジツ        3    万札      -12
DKK       0    名声        1

攻撃/射撃/機先/電脳  2/ 8/ 4/ 4
回避/精密/側転/発動  6/ 7/ 7/ 7
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0

◇装備や所持品
▶サイバネアイLV1:ワザマエ判定ダイス+1、射撃時さらに+1
◆オーガニック・スシ:体力3回復(使い切り)
◆キーボード・オブ・ザ・ゴールデン・エイジ(レリック)
 ハッキング判定時に全ダイスの振り直しを行える(シナリオ中1回限り)

◇ジツやスキル
☆謎めいたニンジャソウル、ジツLV3:体力と精神力+3
○生い立ち:ローグハッカー
◉知識:オイランドロイド、IRCネットワーク、アンダーガイオン

能力値合計:18

 あまり多くても動かしづらいですし、今回はこの3人でやります。では、始めます。

◆◆◆

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「星ってさ、燃えるガスの塊なんだって……」

 キョート・リパブリック。アッパーガイオン。小さなシュラインの軒下で、ふたりは星空を眺めていた。ふたりだけが知っている秘密の場所だ。

 ……アキは、あまり笑わない、物静かな娘だった。目を離すと消えてしまいそうな、溶けてなくなってしまいそうな儚さがあった。

「いつか燃え尽きて、消えちゃうんだって。ロウソクみたいに」「知ってる。太陽もそうでしょ。地球や月や、惑星は違うけど」「そうだけどさ。岩石でできた星も、いつかは消えちゃうんだ。永遠じゃないってこと」アキはそう言うと、寂しそうな顔をした。「うまく言えないけど、いやだな」

「うん」「何もかも、いつかは……ぜんぶ、なくなっちゃうんだ。怖いし、いやだよね」「そういうもんだよ。ブッダもショッギョ・ムッジョって言ってたよ」「誰が言っても、いやだし怖い」アキは星空を見上げ、涙をこぼした。子供なのだ。彼女はこちらに近づき、袖を握りしめた。「あのね」

「ん?」「わたし、もうしばらくしたら、遠くに行かないといけないの。家の事情でさ」アキは少しためらった後、意を決したように、小さな、欠けた星型のオマモリ・タリスマンを手に握らせる。「あげる」アキの手には、もうひとつの同じタリスマン。「お揃い、だから。持ってて」

「ずっと、ずっと……」

 それは、どこにでもあるような安物のオマモリだ。「忘れないで アキ」と、つたない字で彫り込んである。

???

 ……数年後。現在。

 憂鬱な曇天に支配された夕暮れ刻。「五十歩百歩」……「禅」……暗いキョート山脈に大きな漢字でコトワザが浮かび上がり、緑やピンクの極太ビームが上空の黒雲を貫き始めた。電子基盤のように規則正しく張り巡らされたガイオンの路地に、ネオンやライトの血液が循環する。

 重要文化財キョート城の上に華々しいファイアワークが咲いた。観光客らは足を止め、幾星霜の年月の重みを感じて心を奪われる。「美しい」とリキシャーに座した旅行者が呟き、オイランの胸を静かに揉む。日本国から独立を果たしたキョート共和国は、財源のほぼ全てを観光業に依存していた。

 ……ネオン電飾を埋め込まれた死骸のような街だ。と、教室の窓から見慣れ過ぎた風景に向かって一瞥をくれながら、グンペイ・ワキボシは心の中で吐き捨てた。そして思い直す。より正確に。俺たちは、ネオンタトゥーを彫り込んだオイランの死骸を見世物にして食い繋いでいるんだ、と。

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 ここはアッパーガイオンに建つ進学校、シノノメ・ハイスクール。数学、ディヴェート、墨絵、帝王学、歴史……観光庁や企業の幹部になることを嘱望されている彼らには、それに相応しい高品質な教育プログラムと環境が用意されている。長かった一日も、ようやく終わりを迎えようとしていた。

「エー、つまりこうして、当時最強のウォーロードであった武田信玄がセキバハラで戦うことになり……」ネンブツめいた歴史教諭の声が教室に響く。「エー、まあ武田信玄は死んだわけですが、彼の下で戦ったハタモトの名前を4名挙げよ。ポイント倍点倍点で32点!順番的にこれはワキボシ=サン」

「ハイ」ワキボシは立ち上がり、正しい答えを述べた。「大変よろしい」ワキボシはオジギして着席した。上の空でも、授業にちゃんと参加しなければムラハチされる。陰湿な社会的リンチのことだ。このハイスクールでは組織の中でいかに立ち居振る舞うべきかを、授業やクラス会で叩き込まれる。

 くだらない世界だ、とワキボシは心の中でつぶやく。レールにも乗れないアンダーの住民に比べれば、自分は遥かに恵まれている。たとえこの国が日本国に征服されたとしても、アッパーのカチグミはうまく立ち回り、政治的にも経済的にも優位なままでいられるだろう。キョートはそういう土地だ。

 ゼンめいた鐘の音が校舎に鳴り響く。解放の時だ。下校が始まる。ワキボシも厭世感に溢れた溜息と共に席を立った。「今夜は家でスシ・パーティーです」「クラブに寄っていきます」……同級生らの着飾った笑い声を背に、彼はしめやかに校門へ向かう。友人や恋人を作るべきだが、煩わしいのか。

 ……否。彼は素早く校門を出ると、人目を避けながら地下通路へ降りていく。そして途中のトイレで素早く着替え、制服を畳んでバッグに詰め込み、別人の風体となって駆け出した。両脚には最新式のサイバネ義足「ヒキャク・マニューバ」が装備され、軍用カラテ・ブースターユニットも装着。

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 冴えない男子高校生、グンペイ・ワキボシはここにはいない。彼はアンダーガイオン上層を駆け抜けるクールなサイバーゴスの一人、リゲルだ!

???

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「ハイ!リゲル=サン」アンダーガイオン、サイバーゴスが集まるクラブ「ウーゴ・ノス」。見知った女性が声をかけた。「ドーモ、メイサ=サン」リゲルはアイサツを返す。互いに本名も素性も知らないが、立ち居振る舞いから、おそらくアッパー出身だろう。憂さ晴らしにお忍びで来ているのだ。

 明るい紫色のLANケーブルウィッグ、猫の瞳めいた緑色のサイバネアイ、天使の輪めいた銀色のアクセサリー。星を模したサイバーイヤリングは周囲の音声を拾い上げ、ノイズをカットするものだ。「今度さァ、生体LAN端子あけに行かない?」「いいね。やろう」「そしたらLAN直結しよ?」

 リゲルはニヤニヤと笑い、メイサにウインクした。サイバーゴスのような連中は、シノノメ・ハイスクールではスクールカーストの最下層どころか、アンダーの下層住民と同じ扱いだ。このような姿をハイスクールの生徒や教師に知られれば、放校処分もあり得る。事実上の社会的な死だ。

 リゲル……グンペイ・ワキボシは、それでも構わないとも考えていた。彼は若く、人生について楽観的だ。自分は知能指数も高いし、実家にはカネもある。なんとかなるだろう……そう考えていた。いざという時は、アンダーで働けばいい。充分なカネがあれば外国へも行ける。そして……。

「どしたの?」「あ、いや……」「ぼんやりしてる。つまんない?」「タノシイさ。バリキドリンクにする?」「今日はザゼンな気分かもー」メイサはリゲルの腕に自分の腕を絡ませ、豊満なバストを押し付けた。「おごるよ」「トーゼン」メイサはリゲルが来るたび近づいて来る。きっと気がある。

「LAN直結するとさァ、すっごい気持ちいいんだって……ニューロンがパチパチゆってさァ」「おごれって?」「言わせる?まだおカネ足りないかなァ。分割ローンプランもあるってさ」「え、いや……」「LANあると便利だよォ、アッパーのサラリマンも空けてるっしょ?今どき珍しくないってェ」

 メイサは催眠術をかけるかのようにリゲルと目を合わせ、ぎょろぎょろとサイバネアイを回転させた。「わあったって、カネはなんとかするよ……」その時だ。「ねえ、グンペイ=サン」突然本名を呼ばれ、リゲルはぎょっとした。声の主は、クラブのカウンター席に座っている少女。

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「覚えてる?」「え、ああ」その顔に、面影があった。「……アキ=サン」アキ・トナミ。数年前、家の事情とかで離れ離れになった少女。「知り合い?ドーモ、アタシはメイサ。この店じゃ見ない娘ね」「初めて来たの。グンペイ=サンのこと、調べてて。ようやく会えたね」「アッハイ」

 ナムサン、シュラバ・インシデントか。否、ここはチャンスだ。メイサとアキ、二人をアブハチトラズすべし!リゲルは鼻の下を伸ばす。「大きくなったね。それにキレイだ」「そうね、オイランみたい」メイサがキャハハと笑う。「褒めてくれて嬉しいわ。私と遊びましょ。昔みたいに、二人で」

 アキは赤い瞳の目を細め、白く細い腕を差し出す。彼女の目もサイバネアイだ。キモノめいたゴス装束の袖の下には、使い込まれたハンドヘルドUNIXがある。「えー、アタシもご一緒させてもらっていい?先に約束してるんだから。これからカネ借りて、生体LAN端子あけて、ファックすんの」

 メイサは譲らない。「……グンペイ=サン、これ覚えてるかな」アキは懐に手を入れ、古びたオマモリを取り出した。小さな、欠けた星型のタリスマン。どこにでもあるような安物のオマモリだ。「……えっと、あ……」リゲルは少し考え、思い出した。数年前、別れる時に貰ったもの。

「ずっと持ってたんだ。辛い時も、苦しい時も、これを見たら……あの時を思い出して、耐えられた。永遠に……」アキは歌うようにつぶやき、さらに目を細めた。「持ってる?グンペイ=サン。これとお揃いのオマモリを」「え、あ……」ナムサン、持っていない。いつかの大掃除で捨てたかもだ。

「キャハハハ!持ってないって!残念!」メイサがグイ、とリゲルの腕を引っ張った。「また今度ね!アキ=サン!」「あ、ちょっと」「そうなんだ」アキはため息をつき、オマモリを懐にしまった。そして、別のものを懐から取り出す。それは……星型の、鉄の塊。刃が八方向に突き出た投擲武器。

「え?」「サヨナラ」ひゅん。アキの手が動いた、ように視えた。目にも留まらぬハヤワザで、投げられたのは……スリケンだ。「え?」メイサは、胸元に寒気を感じた。続いて、痛みを。何かが背中に突き刺さり、骨と肉と内臓を破壊して貫通し、胸を突き破って飛び出した。そう感じた。

「え、アバッ……え?」胸の穴から血が噴き出す。メイサの眼の前が暗くなり、血の気が引き、膝の力が抜けて、崩れ落ちる。リゲルも巻き込んで。「うおっ、と!どした!?」「たす、け、て」メイサは口と鼻から血を流し、事切れた。「アイエッ!?血、血!?」リゲルは気づき、慌てた。

「……お、おい、メイサ=サン。なんだよ、これ」リゲルには何がなんだかわからない。周囲のサイバーゴスたちは、サケやドラッグ、ドリンクに酩酊していて状況がわからない。リゲルはメイサの胸の穴に手を当て、血を止めようとした。「無駄よ。私が殺したの」アキは微笑み、立ち上がった。

 リゲルは血まみれだ。「え?」「行こうよ、グンペイ=サン。私と一緒に二人きりで。永遠に」アキは手を伸ばす。「……あ」リゲルの顔から血の気が引いた。「アイエエエエーーーーーエエエエエ!!?」

【続く】

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