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忍殺TRPGリプレイ【ザ・ウィッチ・フロム・マーキュリー】

放題:水星の魔女(The Witch from Mercury)

 ドーモ、三宅つのです。これはyuu=サンのソロシナリオ「ニンジャ捜索依頼」を元にしたリプレイ小説です。ネタバレにご注意ください。

 連絡のつかないソウカイニンジャの様子を見て来いというお使いミッションです。初期作成から壁超え前のニンジャで挑戦できます。今回は彼です。

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◆ブルーチェイサー(種別:ニンジャ)
カラテ       4    体力        4
ニューロン     4    精神力       4
ワザマエ      2    脚力        3/N
ジツ        3    万札        5
DKK       0    名声        0

攻撃/射撃/機先/電脳  4/ 2/ 4/ 4
回避/精密/側転/発動  5/ 2/ 2/ 7
即応ダイス:5 緊急回避ダイス:0

◇装備や所持品
▶ヒキャクLV1:回避ダイスと脚力+1
◆ZBRアドレナリン注射器

◇ジツやスキル
☆カラテミサイルLV3
○生い立ち:言いくるめ
◉知識:ストリートの流儀
◉交渉:卑屈

能力値合計:16
 前回の冒険で万札5を獲得しました。余暇はありません。

 兄貴分のアイスフィストは凄腕で、ハッカーニンジャのロングシャドウも相当ですが、こいつだけジツ値が高めのサンシタなままで、名声もありません。このままだと成長の差が大きくなりすぎるため調整しましょう。

 では、始めます。

◆◆◆

 世界を電子ネットワークが覆いつくし、サイバネ技術が普遍化した未来。宇宙殖民など稚気じみた夢。人々は灰色のメガロシティに棲み、夜な夜なサイバースペースへ逃避する。政府よりも力を持つメガコーポ群が、国家を背後から操作する。ここはネオサイタマ。鎖国体制を敷く日本の中心地だ。

 そのネオサイタマを牛耳るのが、血も涙もない暗黒組織、ソウカイ・シンジケートだ。彼らは「ニンジャ」という超人たちをエージェントとして従えており、圧倒的な戦闘力で闇社会を仕切っている。とはいえ敵も多く、従う者たちも手練ればかりではない。これは、あるサンシタニンジャの物語。

「これよォ、実際オツカイじゃねェか」『そうですよ。あなた自身はただのサンシタなんですから。自覚してください』「ケッ!」夜の路地裏で、モヒカン頭の見るからに剣呑な男が、虚空に向かってブツブツと呟いている。薬物中毒者だろうか?否、彼はIRC端末で仲間と連絡を取っているのだ。

 彼の名はブルーチェイサー。仲間はロングシャドウ。ともにソウカイ・シンジケートのニンジャ・エージェントである。数ヶ月前までは兄貴分のアイスフィストとともに気楽な独立勢力であったが、シンジケートのスカウト部門のニンジャたちにぶちのめされ、命は助かったが軍門に降ってしまった。

 アニキが契約書にハンコをついた以上、従わざるを得ない。だがブルーチェイサー自身はそこらのチンピラあがりで、ジツはそこそこ強いものの、ニンジャとしては駆け出しのサンシタだ。ゆえにこうしてくだらない仕事も命じられ、拒否すれば処罰されるというわけだ。彼はため息をついた。

連絡がつかないニンジャの様子を見てこい、だァ?そいつには発信機とか盗聴機とか仕込んでねェのか?」『だから、それも含めて連絡が取れないと言ってるんですよ。最悪殺されてる可能性もあります』「クローンヤクザでも派遣すりゃ済むだろ」『ニンジャ戦力が必要と、上が判断したんです』

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 ブルーチェイサーは実際ヤルキがない。ロングシャドウは淡々と事情を説明し、ナビゲーションする。『とにかく、上に逆らったらアイスフィスト=サンともども処罰されるんですからね。キアイを入れてしっかりやってください』「アイ、アイ」ブルーチェイサーはアクビした。……その時だ!

ドアの前

「ザッケンナコラー!」突如、ヤクザスラングが聞こえてきた。ついでドンドンと何かを激しく叩く音。「借金返せオラー!」ナムサン、借金取りだ。『ちょうどその家が、問題のニンジャが住んでいるところです』「突然いなくなっちまって、借金を返せなかったってのか」『たぶん、そうですね』

 借金取りはドンドンとドアを叩き、叫び続ける。「そのバカみてェにカネかけたドロイド売れば、こんくらい返せンだろがオラー!」「ドロイド?」『件のニンジャ、電脳部門所属のパラノーマル=サンは、オイランドロイドの収集と改造が趣味だそうで。女性ですが』「テメエと気が合いそうだな」

 とにかく、あの借金取りをどかせなくてはパラノーマルの家に入れない。見たところただのモータルのヤクザだ。お引き取り願うとしよう。

カラテ判定、難易度N。4D6[6255]成功。万札1獲得。

「イヤーッ!」「アバーッ!」ブルーチェイサーは一撃で借金取りを殴り殺し、財布と借金の証文を奪い取った。無慈悲!「おつかれさん。俺が代わりに借金を取り立ててやるぜ。取引材料にもなるかもなァ」ブルーチェイサーは下卑た笑い声をあげた。ニンジャとはいえ、相手は女。愉しめるかもだ。

 さて、ドアには当然鍵がかかっている。物理的にも電子的にもだ。借金取りを撃退するためのトラップが仕掛けられていても不思議はない。

カラテならN、ワザマエやハッキングならH。失敗するとゲームオーバー。ここはカラテだ。4D6[6254]成功。

「出勤の時間だオラァ!」KRASH!ブルーチェイサーはドアをニンジャのカラテで蹴破った!幸いトラップはないようだ。「ドーモォー、ソウカイヤでェーす」彼はクンクンと鼻をひくつかせ、しめやかにドアをくぐる。

部屋の中

 ニンジャ視力で暗い部屋を見回す。広くもない室内には、所狭しとネコネコカワイイのフィギュアが立ち並んでいる。壁や天井には一面にポスター。相当ディープなフリークのようだ。「へへ、女のにおい……」ブルーチェイサーは舌なめずりしながら、パラノーマルの痕跡や居場所を探る。その時。

『ピガ……侵入者発見。排除します』ツギハギボディのオイランドロイドが部屋の隅で立ち上がり、ハンドガンを構えた。一触即発アトモスフィア!

戦闘開始

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◆オイランドロイド(種別:戦闘兵器)
カラテ       4    体力        6
ニューロン     4    精神力       -
ワザマエ      3    脚力        3
ジツ        -    万札        5

攻撃/射撃/機先/電脳  4/ 3/ 4/ 6

◇装備や特記事項
◆テクノカラテ:近接攻撃、ダメージ1
◆LAN直結型ハンドガン:射撃、ダメージ1、連射2、論理射撃でマルチ・時間差可能
◉絞殺攻撃:近接攻撃が命中したら拘束(脱出H)
 維持したまま次の手番が来ると開始フェイズに回避不能の1ダメージ

能力値合計:11

1ターン目

イニシアチブ(一騎打ち):ブルーチェイサー/BC&オイランドロイド/OD(4・2)
BCはカラテミサイル発動(残り精神力3)[6144453]成功。ODは4ダメージを受け残り体力2!ODはBCへ論理射撃、[42][46]2発成功。BCは[611][46]回避!再びカラテミサイル(残り精神力2)[3621165]成功。ODは体力-2になり爆発四散。万札5を獲得。

「先手必勝!イヤーッ!」ブルーチェイサーは虚空へセイケンヅキ!すると彼の背後から輝く球体が複数飛び出し、オイランドロイドへ殺到する!これが彼のジツ、カラテミサイルだ!KBAMKBAMKBAMKBAM!『ピガーッ!』四発命中!スモトリでも一撃で倒す威力だが、オイランドロイドは動く!

『敵を許さないです』BLAMBLAM!LANケーブルで本体と直結されたハンドガンだ!論理射撃により微妙に弾速がズレ、ニンジャでもまとめて回避できない!「イヤーッ!」ブルーチェイサーは見切って躱し、再びカラテミサイルを放つ!KBAMKBAMKBAMKBAM!『ピガガガーッ!』ナムアミダブツ!

SAYONARA!』KABOOOM!オイランドロイドは爆発四散!

戦闘終了

「けっ、どんなもんよ」ブルーチェイサーは残骸を踏みにじり、使えそうなパーツを回収する。少しでもカネを稼がねば。『私がその場にいれば、ハッキングで静かにさせられたのですが』「直結マニアがよ」『パラノーマル=サンの所有物を破壊したら、心証が悪くなります』「気にするなや」

 実際恐るべき戦闘力ではあった。モータルなら死んでいただろう。だが、ブルーチェイサーはサンシタとはいえニンジャなのだ。慈悲はない。

???

 ドアを開けて先へ進むと、10台以上のオイランドロイドがいる!「げっ」彼女たちが一斉に起き上がって襲ってくれば、さすがにひとたまりもない。幸い彼女たちは眠ったように壁にもたれかかり、微動だにしない。「ビビらせやがって」ブルーチェイサーは冷や汗を拭い、慎重に観察する。

 部屋の真ん中には一組の男女がおり、首元の生体LAN端子をケーブルで直結させて、トモエめいた状態で横たわっている。「なんだ?LAN直結で前後中なのか?」ハッカーなどの中には、そうした行為を好む者も多いという。携帯IRC端末で映像を送信すると、すぐにロングシャドウからレスポンス。

『ネコネコカワイイのコス・プレイをしている女性が、パラノーマル=サンですね。男の方はわかりません』「前後してンのか?」『いや……互いに苦しそうです。激しい電子戦を繰り広げているようですね』「何時間もか?」『そうなります』実際、男の方からもニンジャアトモスフィアを感じる。

 おそらく彼は、この部屋に潜入したハッカーニンジャなのだ。とすると、パラノーマルは彼を迎え撃って……戦っているのだ。『通常、電子戦はニューロンの速度で勝負がつくはず。それが何時間も続いているとなると、かなり危険です』「どっちも物理肉体は無防備だが……どうすりゃいいんだ?」

選択肢は二つ。男を殺す(判定不要)か、LANケーブルを慎重に引き抜く(ワザマエN)か。前者を選ぶか判定に失敗すると、パラノーマルも危険かも知れない。BCのワザマエは2しかないが、即応ダイス5を消費!7D6[4645333]成功!

『……男を直接殺せば、直結しているパラノーマル=サンも危険でしょう。ゆっくりと、慎重に、LANケーブルを引き抜いてください』ロングシャドウは緊張した声で告げる。『失敗したら、たぶん……』「ソウカイヤのニンジャを死なせるわけにゃいかねェか。極力慎重にやるぜ。祈っててくれや」

 ブルーチェイサーは呼吸を整え、ニンジャ集中力とニンジャ器用さを極限まで引き出す。ロングシャドウはモニタの前で脂汗を垂らす。男の生体LAN端子から、ブルーチェイサーはゆっくりと、ケーブルを引き抜いた!「グワーッ!」「ンアーッ!」男女のハッカーニンジャは痙攣し、立ち上がる!

「アバッ……ド、ドーモ、マルウェア、です」

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「アバッ……ドーモ、パラノーマルです」

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イメジはネコネコカワイイのネコチャンのほうの使いまわしです。キアイの入ったコス・プレイヤーなのでしょう。物理書籍版ピンナップでは青い外ハネショートが「ネコチャン」、赤いボブカットが「カワイイコ」として描かれています。なおパラノーマルとは「超常の」という意味です。

「ドーモ、ソウカイ・シンジケートのブルーチェイサーです。無事か」「なんとか……」パラノーマルはふらつきながらオジギした。「こいつは、ザイバツのエージェントよ。私を介してオイランドロイドたちを操ろうとしていたみたいだけど、これもインガオホーね!」「アバッ……バカな……!」

 マルウェアは端子穴から白い煙を噴き、顔の穴から血を流しながらうろたえた。二対一、圧倒的不利!「カラテは大したこたなさそうだなァ。捕まえてインタビューさせてもらうぜ」ブルーチェイサーは勝ち誇り、セイケンヅキを構える。圧倒的有利!一撃必殺アトモスフィア!「AARGHHHHH!」

 ナムサン!マルウェアは獣めいて叫ぶや、両腕を複雑に動かしてニンジャサインを結んだ!超自然の糸がオイランドロイドたちに伸び、直結する!「貴様のIDとパスワードはいただいた!我がジョルリ・ジツで……ア、バッ」マルウェアはくずおれ、血を吐いた。「げ、限界か……否!サヨナラ!

 KABOOOM!マルウェアはニューロンの極度負荷に耐えきれず爆発四散!ナムアミダブツ!だが!『『『『『ピガッ……』』』』』ナムサン!ジツそのものは発動し、残存している!室内のドロイドが目を紫に光らせて一斉に立ち上がった!「げえッ!?」「マズいわ!」多勢に無勢が逆転!

「ど、どうする!?」「……私がハッキングで止めるわ!そこのUNIXデッキまで運搬して!」パラノーマルは長時間の電子戦で体力が限界に達したのか膝をつく。やるしかない!「わかったぜ、チクショウ!」

回避ダイスを5つに分けて回避判定、難易度N。[2][3][5][6][6]2発命中!2ダメージを受け残り体力2。だが運搬には成功!

 ブルーチェイサーはカジバヂカラでパラノーマルを抱えあげ、脚部サイバネを駆動させて、部屋の奥のUNIXデッキへ駆ける!そこへドロイドたちがゾンビーめいて襲いかかる!『『『『『アバー……!』』』』』『『『『『アバー……!』』』』』コワイ!「グワーッ!」背中に二発を受けよろめく!

「た、頼むぜ!」だがブルーチェイサーはなんとかUNIXデッキの前にパラノーマルを送り届けた!「任せて!イイイ……イイイヤァアアーーッ!」LAN直結!論理タイピングによりオイランドロイドからジョルリ・ジツや電子ウイルスの影響を除去し、緊急停止命令を送り込む!ゴウランガ!ゴウランガ!

 ……オイランドロイドたちは、まさに糸の切れたジョルリ人形のように次々とくずおれ、倒れた。「フーッ……助かったわ」「やれやれだ……」

戦闘終了

エピローグ

評価:B ザイバツニンジャ・マルウェアの魔手にかかっていたパラノーマルを救出した。護衛ドロイドは破壊したが、ドロイドたちの大部分は無傷で鎮圧。万札10、名声1、余暇2日を獲得。借金の証文を万札5で買い取らせ、借金取りから万札1、破壊したドロイドから万札5を獲得。合計万札21

「アリガトゴザイマシタ」パラノーマルは改めてオジギした。「けど、護衛ドロイドは壊されちゃったか……まあ、仕方ないわね」「悪ィな」ブルーチェイサーは傷を手当てし、携帯IRC端末に振り込まれた電子マネーを確認する。こんなものだろう。「あと、借金取りが来てたぜ。ブッ殺したが」

 彼が証文を見せると、パラノーマルは鼻を鳴らす。「殺さなくてもよかったのに」「あいつがドア開けて入って来てたら、護衛ドロイドに殺られてたと思うがね」「まあいいわ。借金は返すから買い取ってあげる」キャバァーン!電子マネーが5万円増えた。「アイ、アイ」彼女に証文を手渡す。

『これで解決ですね。あとは妙なウイルスでも仕込まれていないかチェックしてください』「了解」ロングシャドウは普段は電脳部門で働いており、彼女とは一応同僚である。「さて……これを機会に、個人的にお付き合いを」ブルーチェイサーが口説く。「私ドロイドにしかキョーミないの」無慈悲!

【ザ・ウィッチ・フロム・マーキュリー】終わり

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