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懐かしのコピー打法について語る

2001年──。

小泉純一郎内閣が発足し、池田小学校事件に世間が震撼していた年の夏、パチスロ業界もまた、震撼していた。

サミー系列のパチスロに、致命的な問題が見つかったのである。

コピー打法とは

通常、パチスロはレバーオンと同時に、まず乱数によるフラグ抽選が行われ、その後、リールの回転がスタートするのが、基本プログラム。

しかし、この時期に稼働していたサミー系列の台は、特定のレバー操作(レバーを少し引きつつ、ゆっくりと下げて、リールが回り始めたらレバーを下げきらずに離す)をすると、電圧の関係から、フラグ抽選よりも先にリールの回転が始まったのである。コレはつまりどう言う事か?

…そう。フラグ抽選がされないゲームが生まれてしまうことになる。

だが、そこはそれ。メーカーも「万が一」に備えて対策は講じていた。
しかし、その対策こそが問題だったのである。

「RAMに記憶された直近のフラグを再度、抽選結果として出力する」。

この「非常時の対策」こそ、コピー打法の原因となってしまったのだ。

また、当時のサミー系列のワイドリール機種(コピー打法が可能な機種)が、コピー打法の効果が高いシステムの機種だった事も災いした。

特に有名だったのは、以下の機種だろう。

・ハードボイルド2
・猫de小判
・ダブルチャレンジ

上記3機種はなんと「成立したボーナス」、「リプ連の調整」、「成立したAT」がコピー出来た。
打ったことのない人や、3機種を知っている人は驚愕することだろう。

こうなってしまうと、店側が設定を使うホールならば、最早、ほぼ不敗である。

もちろんパチスロである以上、スロッターのヒキ次第により、確実に大勝出来るわけではないのだが、それでも機械割は大きく伸ばせる。

事実、この攻略法が発覚した2001年夏よりも前に気付き、実践していた人や、有料情報として販売していた人は随分と稼げたことだろう。

このコピー打法は、通称「アゴ外し」と呼ばれ、一気にネットに拡散される事となった…。

メーカーの対応の疑義

いまだに古株のスロッターとの昔話に上がるのが、メーカーの対応の早さである。

攻略法の発覚から、たった数日でメーカー側からレバーと基盤の交換がされた。

…たった「数日」である。

これには多くのスロッターが疑義を感じた事だろう。
通常、バグなどの機種トラブル対応については、早くとも数週間掛かる。

しかし、コピー打法の対策はたった数日。明らかに早すぎるのだ。

「もしや、メーカー側で仕組まれた“知っている社員の抜き用”だったのでは?」

そう思われても仕方のない、迅速「過ぎる」対策に、攻略法を知り、試そうと思った遅参のスロッター達は落涙した事だろう。

ホール側の監視も厳しく

もちろん、その数日の間も抜き放題抜かれるわけにはいかないのがホール側である。

張り紙だけでなく、調整中にしたり、店員がシマに張り付いて監視する、といった強硬手段まで取られる騒ぎになったのは記憶に強く残っている。

筆者も、御多分に洩れず店員に張り付かれながら、隙を見てコピーしていた。

だが、損益管理の観点から、先に紹介した3機種以外はそこまで大きな損失にならないという事が分かってからは、幾分は監視が和らいだことは付け加えておく。

そもそも、この時期は4号機の全盛期。

朝からスロッターは並び、サンドに千円札を湯水のごとく突っ込んでいた時代である。
集客を優先すれば、多少の損失があったとしても、ホール側にはそこまでの痛手ではなかった。

スロッターの財布の中には、当然のように10万円ほど入っている。そんな狂気の時代。
だが、そのハイリスクには、目が覚めるようなハイリターンが確かにあったのだ。
客と店の勝負がアツかった時代が懐かしい。

攻略法やバグは存在する

実際に、こうして設計ミスを突いた攻略法や、バグによる攻略法は存在する。

人の手で作られるプログラムであったり、機械のセッティングであったりする以上、それは今後も発生していくだろう。

しかし、年々パチスロの規制や新内規が変更になり、そのスパンは短くなっている。

それにより、万が一攻略法があったとしても、長生きするものでもなく、また、出玉規制の壁を越えることもないであろうことから、有効性は低いと考えられる。

──「勝ち続けられる攻略法がある」。

こんな謳い文句に騙されて、胡乱な情報にだけは手を出して欲しくない。

攻略法やバグは、あくまで一過性のお祭り騒ぎのままでいて欲しい。

そう思いを馳せつつ、本記事はここで筆を置こうと思う。

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