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須賀敦子『コルシア書店の仲間たち』

 私のミラノは、たしかに狭かったけれども、そのなかのどの道も、だれか友人の思い出に、なにかの出来事の記憶に、しっかりと結びついている。通りの名を聞いただけで、だれかの笑い声を思いだしたり、だれかの泣きそうな顔が目に浮かんだりする。

 著者がミラノにあるコルシア書店で過ごした日々、そこに集う人々をめぐる情景を流麗な言葉で描かれた素晴らしい一冊。
 読んでいるうちに、個性的な人々が集うコルシア書店の情景がありありと浮かんでくる。まるで自分も書店に通ってる一人の仲間のように思えてきて、心が温かくなる本だった。シンプルな言葉で綴られた優しい文章が、まるで音楽を聴いてるかのように心に響いてくる。

 ふと、自分の過去を振り返ってみると、良いことも悪いことも思い出されるのだが、今の自分があるのは、いつもそばに家族や友人たちがいてくれたからだ。

 歳を重ね、会う機会が少なくなってしまった友人達を思い出す。みんなそれぞれ、どんな生活を送っているのだろう。この本を読み終えた時、自分の人生を彩ってくれたすべての人に感謝したくなった。

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