ないシナリオ「クローバー」について

こんにちは。

今回も「ないシナリオ選手権」で自分が提出した作品についての解説記事です。

上の文章がなんのこっちゃわからん人は回れ右です。


クローバーに至るまで

さて、今回「Better-try Effect」と「御霊を漱ぐ」、そしてこれの三作品とネタ一個を作ったわけですが、これはその中でも一番最後に作ったものです。

「Better-try Effect」がエモいCoC、「御霊を漱ぐ」が推理系CoC想定で作り、今回はこの二作品でいこうと思っていたのですが、前夜祭時点でストレートなタイトルの作品がなかったのでエモクロア部門のきちんとエモいやつを作ろうと考えました。

しかし私はさいま。
これまで書いた「ないシナリオ」はほとんど救いがなく
後日きちんと記事にするつもりですが、「Better-try Effect」だって「自殺」とか「失敗」をテーマにして捻り出したくらいです。
そんなやつにちゃんとエモいのが書けるのか?

いや書けるわけないだろ。

少なくとも、「自由に連想ゲームをやって、足りない部分を補完する」いつもの考え方ではエグくはなってもエモくならないんです。

そこで「なんか暗いけどカタルシスを得られるいいテーマないかなー」とか思って色々思考を巡らせていると、とてもとてもいいテーマが思い当たりました。

【メリーバッドエンド】です。

本人たちはなにかを成し遂げ、欲しかったものを手にしますが、客観的にその境遇は幸せでない。
これなら俺にでも書けるんじゃないか?
そう思いメリバから連想ゲームを始めました。

しばらくノリノリだったのですが、いくつか思考を繋げていくうち、ある考えに至ります。

・メリバ展開に持ち込むには前情報強い意志が必要
ルートが固定されていなければメリバエンドにたどり着くことは難しい
・ルートが固定されており、それが見え透いている場合、それはゲーム体験として非常に面白くない

ダメじゃん?

ということでメリバから離れ、連想ゲームは別のワードで始めることにしました。
これ以降メリバは一切でてきません。さっきまでのは忘れてください。

第二回連想ゲームの根幹にはメリーバッドエンドのいち要素であるところの「幸せ」が選ばれました。
いいですよね。「幸せ」。
俺の連想ゲームこういう愚直なワードから始めないと気づいたら瓦解しちゃうんだ。仕方がない。

でもかなり曖昧な概念なので、なんか具体的なものと繋げたいなーとか思っていたのですが、そこで結び付いてくれたのが「クローバー」でした。


幸せとクローバー

小さい頃は、幸せの四つ葉のクローバー探すんだなんて言って嬉々として草むらにしゃがみこんでは土をいじったものです。
どこで教わったかは覚えてはいないんですが、なぜか知っているんですよね。
あなたも知っているでしょう?

「普通は三つ葉なのに四つ葉だ!珍しい!幸せ!!」

ってことでどこかの国の誰かが言い出したんでしょうが、どっこい四つ葉のクローバーってただ珍しいだけじゃないんですね。
遺伝子的には異常そのものなんです。
三つ葉であることが正しいんです。

人間が勝手にありがたがっているだけであり、きっとクローバー視点では四つ葉個体は特殊であり異端であり除け者でしょう。

人間に例えれば指が六本あったり、鼻の穴がなかったりするようなものでしょうか。
本人に直接「変だね」と言う人間は少ないでしょうが、誰しも心の中では好奇の視線を向けているものです。

そしてもしそうならば四つ葉の四枚目の葉視点に立って考えてみると生きた心地がしないでしょう。
自分が原因で他三枚の葉まで含めて疎外の対象にされてしまうわけですから。

お、いいですね。
なんかシナリオの設定に活かせそうです。

三人のプレーヤーと、異分子であるNPC。
三人でいることが本来正しい形であるはずなのに、三人はNPC含む四人であろうとする。
そんな異分子を含む四つ葉のお話。

とっても良さげでなんかエモくなりそうですね。この方向でいきましょう。


エモとTRPG

私が考えるエモさとは「誰が」「どのような経緯で」「なにをして」「どうなったか」などの文脈が揃ってこそのものです。

ただ「笑った」という結果だけがあってもエモくはありません。
プロセカのキャラクターを出しますが、もしもまふゆが奏に対して「笑った」場合はとてつもないエモさが我々豆腐に襲いかかることでしょう。

それは「自身の感情を見失ってしまったキャラが」「周りのメンバーやキャラから影響を受けた結果」「なにかしらのきっかけがあって」「笑顔を見せた」という文脈があり、努力や葛藤などを想像する余地があり、笑わないキャラであるという前提知識があるからです。

ではTRPGにおいて前提知識込みで文脈を作ろうとする場合どうなるかと言えば、それはつまり一本道のシナリオに近くなるということです。

必要な情報をプレーヤーに渡すには、そのための展開を用意する他なく、
理想のエンドを迎えるためには、それまでの展開もある程度コントロールする必要がある。

もちろんそれが悪いと言いたいわけではありません。
TRPGではストーリーの中に自身を投影できるような存在を作るわけですから、ただ物語として読むよりは没入感が得られやすく、伝えたいことがより鮮明に伝わります。

しかし私はTRPGに対して「ダイスで運命が決まるゲーム」としての機能を強く求めてしまうきらいがあり、ストーリーとして面白いシナリオよりもゲームとして面白いシナリオのほうが好きになる場合が多かった。

そんな私ですから、自分でシナリオを作る上では一本道のものはできるだけ避けるように常に意識していました。

ですがないシナリオ選手権まで残り時間は10時間あまり。
ここから捻る余裕はないのでここの一本道は許容することにしました。

「ならメリバでもよくない?」

とも思いましたがクローバーの案が良さそうなのでそのまま続行です。


中身を作る

もちろん「ないシナリオ」です。
中身の詳細まで詰めきるのは「御霊」だけで十分だということで骨組みだけ作っていきます。

先ほど軽く筋を書いた通り、四つ葉の四枚目、異分子をNPCとして話を進めていくわけですが、これまで組んできた前提と、作りたい話との辻褄を合わせるためには、
このNPCは「人間に対して友好的だが、人間に対して微量ながら影響を与えてしまう怪異」であることが望ましいです。

どうしようかなーと思いながらエモクロア公式の怪異辞典を見ていたのですが、なんとなくしっくりこなかったので、「いたずら天使」というオリジナルの怪異を勝手に作りました。

元は人を驚かすために人間界に降りてきたが、あなたたちと出会い仲良くなることで、このまま人間にして楽しく暮らしたいと思うようになった、一人前に少し満たない天使という設定です。
共鳴感情とかは一切決めていません。そこまで詰めるだけの時間がマジでなかった。

天使の特権であるほんの少しの幸運を周囲に振り撒きながらあなたたちと生きる「いたずら天使」ですが、あなたたちのグループは幸運がゆえに周囲になにかと虐げられるようになります。

その内容は考えていません。
しかし謂われなきいじめを受けるようになるあなたたちを見て、この「いたずら天使」がなにを思うかといえばそれは当然

「自分がいなくなればこのいじめは解決する」

でしょう。

この察知のため、あるいはこれ以降の展開のために《心理》を推奨技能としています。

ある日、あなたたちは「いたずら天使」から誘われ、山に行きます。
しばらく楽しんだ後に天気が崩れ、屋根の下に避難してから数時間。
雨が止んで虹がかかります。

ここでの「いたずら天使」のセリフが概要のものです。

虹も正常な空にかかるものではありません。
異常というにはおおげさですが、普段は空に虹はかかっていません。

それは消えて然るべきであるということです。


オチ

その後、その山の梺で「いたずら天使」は一際綺麗な三つ葉のクローバーを見つけると、
「クローバーは三つ葉でもこんなにも美しく、価値がある」
「あなたたちにこんな風に美しいクローバーであってほしい」
といったことを話すと、自分の正体を明かして消えていってしまいます。

ここから少し大変なことが起こってほしいのですがなにも考えていません。

それからあなたたち三人はその山に行くことを習慣にするのですが、何週間か経ったある日、山で通り雨に遭遇し、虹が出ます。

そこで《マッピング》を使用して、あのとき美しい三つ葉のクローバーがあった場所に辿り着くと、そこにはより綺麗な四つ葉のクローバーがありました。

というお話にしました。

ここで「天使」が戻ってくるかは決めていません。
戻ってきたほうが幸せな気もするし、戻ってこないほうが綺麗な気もします。


いかがでしたか?

いかがでしたか?

これが私が一晩で考えた精一杯のエモいシナリオでした。
「あなたたちと生きることを楽しいと思っていた天使が」「自分が原因であなたたちをいじめに巻き込んだと考えて」「あなたたちの元から去り」「四つ葉のクローバーを残した」話です。

名前の天戸夢結ですが、これにも特に意味はありません。「天」って漢字が使いたかったことと、「ゆい」って名前が単純に好きってだけです。
いいですよね。ゆい。

そんなこんなでかなり詰めは甘く、実際にシナリオにするとなれば粗がぽろぽろとでてきそうではありますが、前夜祭終わってから着手した割には綺麗なお話ができた気がしています。

さいまは回り回ってこういうのも考えられるぞってことで今後の予想の参考にしていただけると幸いです。

では次回、「Better-try Effect」編で。

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