検察一斉起案の振り返り

※1 本ノートは某修習生が自分の復習と今後の起案に向けて作成したもので、自分なりの整理です。盲信厳禁で、「こんな感じの考えの人もいるのだな〜」程度でご覧ください。
※2 本ノートは、74期の起案の振り返りであり、今後司法研○所見解が変わってここでの指摘等が当てはまらなくなる可能性もあります。ここでの記事と教官の指示が矛盾する場合は大人しく教官の指示に従いましょう。靴を舐めるギリギリ直前まで教官の犬になるのが修習生ってもんです。

1.総論

 検察起案で一番重要なことはおそらく“終局処分起案の記述及び教官の指摘に忠実になること”ではないかと思います。正直こんなノートを読んでる暇があるなら終局処分を読んだ方がよっぽど勉強になると思います。
 あと、これは終局処分で指摘されることではないですが、司法試験と同様に、事実をできるだけ多く摘示し、それを適切に評価することも大事な姿勢であろうと思われます。
 加えて、司法試験チックな指摘ですが、起案要領をよく読み、検討が省略されている事項は何かをチェックしておくことも重要です。
 そして、自戒も込みですが、検察講義案の公訴事実等の後ろに略語表がついており、これを活用した方がいいと思います。私はこれをなかなか探せず、イチイチ「○月○日付け〜〜〜についての捜査報告書」を全部書きました。完全な徒労ですし、読者の皆様には同じ轍を踏んでほしくないと思います。二回試験本番で検察講義案の参照はできませんが、略語表は配布されると聞いたことがあります(伝聞ゆえ内容の真実性は不知)。

2.公訴事実・罪名・罰条

 公訴事実は訴因の特定(刑訴法256条3項)に欠けることのないよう、自分で特定に必要な記載は何かを考えつつ書く必要があります。司法試験合格者ならまず問題はないと思います。
 罪名・罰条は、検察講義案をカンニングすれば問題ないです。カンニングしていくうちに身体が覚えると思いますたぶんいや知らないけど。

3.犯人性

(1).間接事実として構成すべき範囲
 個人的に、これが最初にして最大級の鬼門な気がします。特に、間接事実をどこまで含ませて書くのかは起案の最中もかなり悩みました。起案の際、導入で教官が、「間接事実の概要を読んだだけで犯人側の事情と被疑者側の事情の両面に触れることができるようにすべき」と仰っていたのを思い出し、それを意識して長めの間接事実と構成して書くことにしました。研修所の想定した間接事実とは似ても似つかない間接事実となってしまいましたが、教官から「比較的良く検討できています。」とコメントされました。(修習生との比較なのか、他の箇所との比較なのかは1ミリもわからない記載なんですがそれは・・・)
 ポイントとしては、「“犯人・事件側の事情“と“被疑者側の事情“の両面に触れることのできるミニマムの事実」を間接事実として構成することのような気がしております。
 また、遺留物が現場ではなく現場周辺にある場合(今回の検察起案がまさにそういうやつだったんですが)には、なぜそこに遺留されているのかを間接事実の概要で指摘しておくといいらしいですね。

(2).時点の明示
 間接事実ごとに時間をはっきり明記しておくのも有効っぽいです。これは、間接事実段階で時間を限定することにより、反対仮説が限定され「その時間内にその可能性が起きることがあり得るのか?」と言いやすくなる結果、反対仮説を潰しやすくなるためらしいですね。そのため、間接事実を考える段階において、その間接事実が「どの時点におけるものなのか」を意識する姿勢が重要になってくると思います。

(3).認定プロセス
 まず、事件の概要を書きましょう。教官に確認したところ、最初に比較的詳細に書いておけば、2つ目の間接事実以降は省略して書いてもいいっぽいです。また、事件の概要の箇所では、間接事実ごとに間接事実につながる事情に言及しておくと印象が良いとのことです。
 次に、事実認定の際は証拠の引用が必須です。めんどくさがらず、必ず証拠を引用しましょう。検察講義案の公訴事実の記載例の次あたりに略語一覧があります(これを探せないと、前述の私みたいに変な文字数で解答用紙を無駄にすることになりますよ・・・)。そして、犯人性を検討する際の事実認定段階では、「事実」を引用すべきで、できる限り評価を入れないことが大事っぽいです(例えば、「侵入し」ではなく「立ち入った」と書くなど。)

(4).供述
 終局処分でも言われていますが、「被疑者供述は犯人性の検討には使えません。」ここは要注意。意味づけで反対仮説に言及するのもご法度です。
 また、供述の信用性を検討する場合、終局処分起案で指摘されている「供述の信用性を基礎付ける事情」以外の事情を使って信用性を検討すると点が入らないっぽいですね(終局処分で指摘されている事情以外で信用できると言い切れるものがあるのかは甚だ疑問ですが・・・)。信用性の検討は、起案要領の指示で省略されている場合を除いて忘れないようにしましょう。

(5).秘密の暴露
 教官曰く、秘密の暴露がある場合には、“何に対する暴露“かを意識すべきだそうです。罪体に関しないものについての秘密の暴露は証拠力としては小さいので、どこに対する暴露かを意識する必要があるみたいですね。

4.犯罪の成否

(1).三段論法
 司法研修所的には、三段論法を守って欲しいみたいです。最低でも、実行行為は三段論法を守りましょう。
(2).構成要件列挙
 私は完全に失念しましたが、構成要件の列挙を忘れないようにしましょう。結構しつこく言われましたし、おそらくここにも点数があるはずです。
(3).意義の解釈・あてはめ
 文言の意義はできるだけ判例を踏まえるのが無難です。結果無価値論者は、起案の時だけ自分に嘘をついていただきたいと思います。
 あてはめの際は、事実認定も忘れないように。もっとも、犯人性で供述の信用性に触れている場合が多いため、「前述のように〜」とさらっと書いて差し支えないと思います。あてはめの際も、判例の文言に沿った形で検討できるとよきです。
 故意などの主観的構成要件要素もお忘れなく・・・

5.情状・求刑

 犯状→一般情状の順で書くのが基本です。ここで、私も含め、一刻も早く前科に触れたい病に罹患する修習生が多いですが、ここはグッと堪えるべきです。
 求刑は、個人的にノリと勢いです。まず、法定刑を見てそれから加重すべき事案か否かをまず考えましょう。検察修習中に、「求刑を決める際は、まず“自分の感覚でどの求刑が妥当か“を考えなさい」と次席から指摘されました。起案で求刑を考える際も、まず自分の感覚で、「法定刑のままで求刑していいのか」を考える姿勢は有益だと思います(6月26日追記)。もっとも、法定刑より軽くする場合は、酌量減軽ができるかどうかを考えましょう(検察起案でこれを考える必要のある問題があるんですかね・・・)

6.小問

 刑訴法の司法試験の簡略版が出ます。第1クールでは接見指定(刑訴法39条3項)が出題されました。そこまで難しいのは出ないと思います。
 ここでも判例の見解を取るのが無難です。私は判例の文言が思い出せず、準限定説(?)で書きました。今回は判例の見解でなくても点はつけたようですが、教官はいい顔をしませんでしたので、やはり判例の見解がいいと思います。

7.おわりに

 そこそこ真面目な記事になってしまし、おふざけノートを期待していた皆さんには申し訳なく思います。守秘義務と特定回避を気にすると、起案の記事に走りがちだと言うのは強調しておきたいです。
 参考程度に成績を知りたいという方は、遠慮なくDMなどで個別連絡してください。何者かもようわからん輩に成績を一方的に知られるのがあまり好きではないため、ここでは成績を省略します。
 他のクールの起案も、講評終え次第上げていくようにします。



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