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義足で楽しく走るために(5) xXiborg Talk vol.3
この記事は2020年7月23日に行われたオンライントークイベント xXiborg Talk vol.3「義足で楽しく走るために ⑤義足で楽しく走るために」の一部を記事化したものです。
義足で楽しく走るために
為末大(以下、為末):
みんなが走んなきゃいけないってわけじゃないんだけど、でも「走りたい人が走れるようにする」って一つの権利みたいな感覚で。走りたい時に何かハードルがあるんだったら、それをどうやって取り除けばいいかが大事なんじゃないかなって伺いながら思ったのですが、、、。
遠藤さん、いろんな取り組みされていて、エンジニアとして、Xiborgの代表として、義足の人が走ってることに対していろんなアプローチがあると思うんですけど。これから誰もが義足を使って走りたいと思うようにするために、ハードルになってる物って何があると思いますか。
遠藤謙(以下、遠藤):
ちょっとスライドを使わせてください。これはラフな統計なんですけども、、、。
これ義足のユーザーがどういう風にフィッティングプロセスを経てるかっていう簡単な概略です。
図の左側:
先天性や足がなくなったタイミングで、義肢装具士が日常用義足を作って生活をする人が半分ぐらい。
図の右側:
左の数値の中でブレードを付けて日常的に走っている人は1%以下。
トップアスリートは0.05%ほど。
日本選手権をみると30名前後ほどしか選手がいない。下肢切断の方が6万人ほどいる説があって、その中で30名しか走ってないとすると、ほぼゼロに近い人たちしかトップアスリートになっていないことになる。
遠藤:
トップアスリートは限られた人しかたどり着けない。とりあえず、まずはみんなが日常的に走れることを当たり前にしたい。
ハードルがどこにあるかと言ったら、至る所にあるし多分人によっても違う。これだけではなくて、点在してるイメージがありますが、、、。
義足ユーザーが安全に走るための身体的な状況をどうやって判断するか。
例えば、アメリカでは義足を保険適用で買う時に、保険屋さんは結構出し渋る。この人は義足を使えば、どこまで日常生活でアクティブになれるかっていう指標で計ります。
「アクティブレベル」
保険の中でブレードが手に入ることもあるけど、「この人は走れる」っていうお墨付きをもらわないと保証されない。日本はほとんどみんな保険をもっているけど、走れる指標が結構曖昧。僕は正直わからないですし、皆さんも曖昧になっているところが難しいなと思いました。
ソケットの問題
山本選手も言っていた、走ることを想定して義足をつくっているか。例えば外装がついていたら交換するには剥がさないといけないとか、そもそもピラミッドっていうコネクターがついていないと交換できないとか。
コネクタの一例
こういうフィジカルコンディションやメディカルコンディションを予め患者さんが理解して、「走りたい」ことを装具士さんに伝えて、ソケットを作ってもらえればと思います。
周囲の理解
自分で義足を交換している男の子(当時小学生)がいて、体育にも参加して走っている。今彼は陸上部に入って、顧問の人も普通に接してる。一方で子供の中には学校の先生がそれを許さないケースがある。
なので、周りの理解ですね。ソケットができて、ブレードが交換できて、その後、ブレードも手に入りました。そして交換を学校でした。その時に学校側はどうやって扱うのか。理解も必要だと思ってます。
ブレードの値段
でもやっぱりブレードが高いのが、今一番感じるボトルネックだと思います。山本選手が持っていた物も数十万円平気でしてしまう。市販しているもので大体25万円ぐらいか60万円ぐらいのレンジがメイン。これを安くすれば、みんな義足を使うハードルが低くなると思うので何とかしたいです。
為末:
ちょっといくつか質問いいですか?
まず一つはアメリカのアクティブレベルの話。保険適用するからには、それが何らかのインパクトがないと適用しないと思う。走る事がその人の医療費を下げるとかのロジック?
遠藤:
アメリカはもうちょっとえげつなくて、「本当にこの人が義足を必要としてるか」っていう判断で、保険屋さんはなるべくお金を払いたくないのかなと。ちょっとアメリカは合理主義。一方でオーストラリアでは、保険適用で子供はスポーツ用義足が手に入る。ギソクの図書館に来たオーストラリア人の女の子はもうブレード持っていて、国から手に入れられたと話してくれました。その時はクイーンズランド州の話だったけど、今オーストラリア全体でNDISという機関が取り組んでいる。「今後その人に必要となる医療費が減る」ことも見込んでるし、「走ることによってこの子供の発育にメリットがあるか」を大事にしていると感じました。
為末:
あのー、もうひとついいですか?
後ほど走ろうと思った時に、ソケット部分を変えなきゃいけないこともある、、、これもうちょっと詳しく聞きたい。
遠藤:
沖野さんその辺にソケットありますか?
沖野敦郎(以下、沖野):
これは下腿義足です。私は走る用の板バネをさっき山本選手が言ったネジで簡単に外せるようにつくってます。
沖野さんが下腿義足を説明している様子
ただ、作り手の義肢装具士の部品の好みとか選択方法によっては、一切交換できないような作り方をする人もいる。そうなると走りたいからブレードを付けたい時につけられないので、義足を作る時にもしかしたら走るかもしれないっていうことを義肢装具士の人に話しといた方がいいなと思いますね。
為末:
走れるソケットの人と、そうじゃない人の比率ってどうですか?
沖野:
ギソクの図書館のランニング教室に来られた新しい方のうち、10人に2人ぐらいは交換できない時があります。感覚的ですけど。
為末:
じゃあ仮に走るように付け替えをしたところで、デメリットって大きくあるんですか?
沖野:
別にないと思います。ただ走るって歩くよりも2、3倍の力がかかるので、切断部分とソケットがしっかり適合してないと足を載せたら痛いっていうのが出てくるかもしれません。
為末:
なるほど、ありがとうございます。出演していただいて笑
山本篤さんの目線から見て難しいと思う点があったら伺いたいです。
山本:
一つはどこに行けば走れるか。今は東京であればギソクの図書館で月一回のランキング教室を沖野さんがやってたり、スタートライン東京や、全国でも小さいコミュニティが出来始めてるので、情報量かなと思います。でも少し検索をすれば出てくるので、一番自分が行きやすい場所に行って欲しいなと思います。
あと大腿義足の方だと膝関節ですね。その部分の使い方が一番難しい。1日ですぐに走れるようになるかというと、なかなかそうじゃない。3日間ぐらいしっかりとレクチャーを受けると足の使い方がわかるようになる。日常用の歩く太ももの使い方と走る時の使い方はものすごく違うんです。あとはそこを使える筋力も段階として大切だなと思います。
あとはお金の問題。購入するときにひざ関節が30万円ぐらい。足部は20万円、その間のパーツが何万かかかる。そこがちょっとでも抑えられるとハードルは下がると思う。小中学校で体育の授業がある限り、走れると球技だとか動く幅が広がるので、義務教育課程の中に何か制度が必要なのかなと思います。
為末:
コーチも結構必要ですね。理学療法士としての知見を持つようなコーチが大事な気がしたんですけど。
山本:
そうですね。義足の使い方が歩く時と走る時で大きく違うので、それを知ることはすごく大切なのかなと思います。
遠藤:
この真ん中にあるカラフルな義足、10万円ぐらいかそれ以下の価格帯になるように開発しています。そのお披露目会にこのイベントがなるかなと。
今後走りたいって言う患者さんが現れたら対応できるように、静岡の松本義肢装具製作所の方も一緒に運営していく。
そしてアスリートも集まってくれて、為末大もMCをしてくれて、いろんな人がここで参加できるようなコミュニティにしたい。
どうして静岡県が興味をもってくれているかというと、昔から静岡の障害者スポーツ協会が義足の選手たちにサポーティブなんです。
僕もですが、山本篤選手、春田純選手、佐藤圭太選手みんな静岡県出身。
日常生活の中で走れるような環境作りの助成金制度に関しても、静岡県は意義を感じてくれているので、先を見据えた上での特別なランニングクリニックを企画しています。
山本:
本当に静岡には多くの義足のアスリートがいて、静岡でこういったレガシーが作れたらすごくいいなと思う。僕も一緒に協力してやっていきたいと思っています。
為末:
走ろうと思ったら走れる体勢を静岡からスタートするプロジェクトってことですよね。
遠藤:
はい、そうです。
為末:
静岡出身の人たちでやってくということですかね。
遠藤:
はい、そうです笑
為末:
MCは広島出身の人がいるということですかね。
遠藤:
はい、アウェイです笑
為末:
わかりました笑
良い例ができて他の県も続いたら、2020年のある種レガシーなると思います。このコピーモデルがいろんな場所でできれば、もしかしたら未来は誰でも走れるようになっているかもしれないと思いました。
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日時:2020年9月22日(火・祝)13:00〜16:00
会場:静岡県草薙総合運動場このはなアリーナ
参加費:無料
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