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静岡ブレードランニングクリニックイベントレポートvol.3

静岡県で開催予定だったブレードランニングクリニックの代わりに、健常者障害者関係なく「走ること」を熱く語り合ったイベントのレポート。
最終回をお送りいたします。

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※アーカイブ動画はこちらからご覧になれます↓

走ることを教える中で気を付けていること

司会:本日のイベントには走ることを教えている方がご参加ですが、教える中で気を付けることはありますか。先ほど大西さんからもお話ありましたが、もう少し詳しくお伺いしたいです。

大西:学生の子とかいろんなスタッフの子と一緒に小学生の指導をしているんですけど、1番最初に「自分たちが1番走ることを楽しんでなきゃだめだよ」と言います。技術云々じゃなくて教える人とかその場にいる人が楽しそうにしていると、言葉以上のものが伝わっていくし信頼関係ができるので。そこから作っていくのが大事だよと話をします。
それありきで技術的な話をしていくと、僕がイベントなどで言うのは、地面についている足・ついていない足・あと空中に浮いていると3段階あるんですが「地面についている足はエンジンのついている足だよ。ついていない足はハンドルのある足だよ」というような言い方をして。それぞれ場面によって足の使い方の役割が違うよって話をしながら子供たちに指導をしていくことが多いです。

画像1(▲先日行われた走り方のワークショップ。楽しそうです)


司会:しくみを言葉で説明することって大事なんでしょうか。

大西:ただ走るだけってつまんないんです(笑)その仕組みを理解して、どうやって走っていくかのアプローチの仕方に面白さがあるので、原理原則を知っておくことは大前提で。でも、よく佐藤選手にも話すんですけど「速くなる」という山を登るときに、速くなるという山頂は義足であろうが健足であろうが関係ない。ただ健常者と同じルートを行けるわけじゃなく、義足だったらちょっと遠回りしなくちゃいけない。でも上を見るということに関してはあまり関係ないんじゃない、と話をして。試行錯誤をしています。

それは本当に義足だからできないのか?


佐藤:あと僕、大西さんの話でよく覚えているのが「何で評価するのか」って話で。体が大きいからできることなのか、技術があるからできることなのか。僕たちの義足の場合で言えば「義足だからできないことなのか、年齢的なことなのか」ちゃんと評価軸を持つことが大事だと思います。どうしても義足だからできないとあきらめてしまうことがあると思うんですけど。できない動作に対して「義足だからできないんだね」って割り切っちゃうパターンが多いかもしれないのですが「それは本当に義足だからできないのか?」と。
さぼっていて周りの筋肉がないからできないことなのか。そもそも体が小さくてそれをするに達する位置にいないからなのか、ということをちゃんと評価することが大切だと考えています。

佐藤選手

(▲多くの議論を投げかけてくれた佐藤選手)

大西:早熟の選手とか、相対的年齢効果というのがあるんですけど、どうしても学年で分けると4~6月生まれの子が全国大会に出る割合が多い。それは小学、中学、高校くらいまで、いわゆる早生まれ(1~3月)の選手たちよりも割合として多い。となると、はたしてそれは能力を評価しているのか。ただ体の成長、発育が早いから評価しているのか。同じものさしで、例えば100m走でタイムで判断しても、能力か発育かということは若ければ若いほどわかりずらい。特に高瀬選手も小学校はまあまあ速くて中学校は伸び悩んで…高校・大学とどんどんステージ上がるごとに活躍していった選手なんですけど、そういった選手もいるのでその時に「何が良くて速かったのか」「何が悪くて自分が活躍できてないのか」周りの大人が判断してあげることは大事かなと思います。

そういえば、高瀬選手は中学のとき県大会落ちなのに(当時から)オリンピックに行けると思ってたって言ってたじゃん?それはなんで思ってたの?

高瀬:えー、根拠のない自信ですかね(笑)小学校で陸上を始めた時に先生が「君はオリンピック選手になれるよ」と。その一言をずっと信じてやってきました。小学校の練習なども「このトレーニングは高校、大学生になったときに生きるトレーニングだから。今はできなくてもいいからやってみな」という感じで声をかけてくれて。なので常に先を見据えてトレーニングすることができたと思います。

大西:その言葉かけがなかったらオリンピック選手になろうと思わなかった?

高瀬:そうですね。ずっと結果が出ないときでも「自分がオリンピックに出れる」っていう根拠のない自信を、その言葉がなければ持ち続けることはできなかったかもしれないですね。

大西:教える側が何げなしにいう言葉が響いているってこと?

高瀬:すごく響いてます。


「私にもできる」というマインドを作るために

山本:さっき佐藤選手が言っていたように、義足だからできないとかできるのかって、地域のクラブに落とし込んだ時に難しい問題になってくると思います。なぜかというと、どうしても地域にいる義足の人たちを教えるときに、その対象者が1人になるケースが多くなると思うから。何人も義足の人がそのクラブにいるってことは稀で。
健常者だと人数がいるから「あの子ができてるから自分もできる」って思えるマインドになるけど、義足の子たちがいたときに「私義足だからできない」っていうマインドになる可能性があって難しいのかなと思います。
なので、そこで大切になってくるのが僕らだと思うんです。義足で先にいっている僕らのような人たち。例えば今だったらこうやってオンラインでつなげれるので、指導者が「こういうトレーニングってできるんですかね」と質問がしたときにこたえられるような仕組みを、ここで遠藤さんが作ってくれると期待していて。その辺りをみんなで共有できると、例えば下腿義足の場合は…大腿義足の場合は…など、できるできないを判断することもできると思う。

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(▲様々な講座やイベントをオンラインで繋げて、仕組み作りに奮闘中)

トップアスリートでもあるんですよね、1人でパーソナルのトレーニング受けてると「その子だからできないのか。それとも義足の選手だからでできないのか。」という問題。
その子ができないから、やっぱり義足の人たちは難しいんだねで終わってしまうと、その先がなくなってしまうんです。でも他の義足の選手たち何人かができると「自分もできるのかも」と思う。使い方によってはできるんだねというマインドに変わることで、その先のプラスアルファが見えてくると思う。この辺りすごく大切になってくる。地域の陸上クラブに義足の人たちが入っていって困らない仕組みを作るためには、先行事例と相談窓口みたいなものがあると今後広がってくるし、更に義足の選手たちの可能性が伸びてくると思いました。

司会:みなさんを見て、道を切り開いてくれていると思います。あとは日頃から積み重ねで、仕組みとかを学べるものがあればと思ったんですけど。Youtubeとかを見て勉強していくこともできますか?

山本:出来ると思います。僕自身も色んな人の義足だったり、健常者のトレーニング見たりとか、飛んだり走っている姿みて「こういう風にやっているんだ」と研究しています。意識は見えないですけど、外側の動きは見えるのでYoutubeでもいいと思います。

大西:為末大学の動画で、桐生選手のコーチで土江寛裕さんと100m走をどうやって走っているかを事細かに説明している回があるので、それを見ていただくと今日選手たちが話していたことがもうちょっとよくわかるのかなと思います。


質問「きついリハビリやトレーニングの時にどんな声掛けをするといいか」

司会:最後に質問がきています。「リハビリやトレーニングはキツイと思うのですが、そういう時にどういった声掛けをするといいのでしょうか」

大西:リハビリもトレーニングもやるしかないですね。キツイの一歩前で「キツイ!」というので、もう1歩押し込んでいいと思う。「まだいける!」と。先に気持ちがやられちゃうので、気持ちを超える。超えた先にいかないと負荷になってないんで。僕は放っときます。

佐藤:僕の場合、コーチが大西さんで、大西さんの方が練習で死んでいるので…僕だいたい一緒に練習するのですが、大西さんの方がだいたい距離多く走って、合間に僕が走っているってことも多くて。コーチが先に僕以上に死んでいるのを見ると、キツイ練習出されても…全く走っていない人に言われても「うるさいなー」って思うけど、そういう死んでる人に言われると、やるしかないというのはあるので。自分で姿を見せるというのは大切。説得力が違いますね。

高瀬:僕はもうどっちかっていうと走りたくてしょうがなかったんで。走ってましたね。でもその横には必ず大西さんがいたんです。大西さんが必ず横で走ってくれたことが僕の中では大きかったですね。やっぱりコーチからの視点で、あと1歩をやらせたいときとか、選手がどうしてもやりたくないときとかあると思うんですけど、そういうときの線引きってどうしているんですか。

大西:迷ったらやらせない。これはリハビリではなくなってしまうんですけど、見てて危ないなと思ったらやらせないです。ただ、一般の方とかトレーニングの最初のころは、そこに行くまでに心がきつくなっちゃうんで、もう1回行こう!みたいな感じで声掛けすると思います。

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いかがでしたでしょうか。
リアルイベントの中止がイベント10日前に決まり、慌ただしく準備をしたトークイベントではありましたが、登壇者の皆さんは快くトークイベントを引き受けて下さいました。
「全ての人が走る喜びを感じられる社会」のために、登壇者の皆さん、そしてたくさんの仲間とともにこれからも前進してまいります!


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