ストレスの仕組み

人間にとって、短期的なストレスは害ではなく、むしろ良い効果をもたらすらしい。しかし、慢性的なストレスとなると、話は一転、大きな害をもたらす。

そもそも、ストレスの正体は何か?ストレスは、精神的なもの、もしくは感情的なものとして捉えられることが多いように思う。この発想から導かれるアドバイスが「もう少し気楽に」などそういう類のもの。

しかし、もう少し客観的かつ定量的視点から考えるならば、ストレスの正体とはホルモンである。具体的には、アドレナリン、ノルアドレナリン、コルチゾールだ。これらのホルモンが通常より多く分泌されている状態、これがすなわち"ストレス度の高い状態"である。
ちなみに、これらホルモンは、臓器の中でも、腎臓の上部に位置する1cmほどの副腎と呼ばれる部分で生成分泌されるらしい。そしてこの副腎は英語でAdrenal gland、アドレナルから出るからアドレナリン、ってことぽい。

ストレス状態では、この3種のホルモン分泌が増加する。分泌されたホルモンは血流に乗って全身に行き渡る。このホルモンが原因で、諸々のストレスに関連する不調が引き起こされるという成り行きだ。このうち、アドレナリンとコルチゾールに注目してみたい。

まずは、アドレナリン。聞き馴染みのある名前だが、このホルモンが増加した場合、人間は攻撃的になる。イライラしやすくなり、他人に対して強く当たるようになる。

コルチゾールは、別名ストレスホルモンと呼ばれており、ストレスと密接に関連している。コルチゾールが増加すると、消化機能・性機能・免疫機能が低下する。具体的には、異常な食欲増加や不妊、傷の治りが遅くなったり、病気にかかりやすくなる。

一度まとめておく。人間はストレスを受けるといくつかのホルモンの分泌量が増加する。そのうち、➀アドレナリンの増加は人間を攻撃的にし、②コルチゾールの増加は人間の生理機能を低下させる。

そして面白いのは、人間の身体がストレス下において➀と②の変化を見せるのには理由があり、その理由は極めて動物的だということだ。

考えてみれば、人間は動物的にはそれほど強く作られていない。むしろ、弱い部類に入りそうだ。例えば、裸一貫でカバと闘えと言われた時に、人間は勝てるだろうか?草原でライオンと鉢合わせた時や、あるいは猿の集団に襲われたりした時に、勝てるだろうか?恐らく勝てないだろう、あなたが武井壮でないならば。

もともと、人間の身体は、このように他の動物と対面し、身の危険を感じた時にストレスを感じるように作られている。そして、そのような状況下において必要なことこそ、上述の➀攻撃的になり、不必要な②生理機能を低下させる、ことである。つまり、闘いに備えて気分を高揚させ、それと同時に闘いに不必要な消化機能や性機能を抑制してエネルギー消費を抑えるのだ。つまり、ストレス下におけるホルモンバランスの変化とは、文字通り弱肉強食の世界において、生存確率を上げるための一手段だといえる。

現代において、人間のストレスの多くは社会的なものである。「ストレスが溜まってる」と言った時に、その人が命の危険によるストレスを意味している事はあまりないだろう。
しかし、そのストレスが社会に起因するものであっても、人間の身体は動物的戦闘モードに入る。進化に伴い構築してきたこの仕組みは、現代においても抜け切っていないようだ。慢性的なストレスを受けやすい現代において、身体が戦闘モードに入る前にストレスを解放してあげる方法を各々が模索する必要があるといえるだろう。

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