ドラマ版『パリピ孔明』第7話を観たので、三国志を語りたい


今回も『パリピ孔明』第7話の中で三国志ネタを感じた部分を挙げていきたいと思います。
第6話までの元ネタ列挙で出てきた部分はそちらを参照していただければと思います。
年号に関しては該当項目のwikipediaなどで調べていますが、元ネタエピソードなどはわりと記憶とノリで書いていますので、詳細の齟齬はご容赦いただくか、コメントなどでご指摘ください。

第7話に出てきた三国志ネタ

桃園の誓い

三国志演義において、劉備、関羽、張飛が義兄弟の契りを結んだ出来事です。
黄巾の乱で荒れる世の中を憂慮しながらも、何もすることができなかった劉備。
ある日街中の黄巾族討伐の看板を見ているところで出会った関羽、張飛と意気投合し、
黄巾族討伐の旗揚げを決意します。そして、年齢順に劉備を長兄、関羽を次兄、張飛を末弟として義兄弟の契りを結びました。劇中で劉備、関羽、張飛が言っていた中国語のセリフは、だいたい「同じ年、月、日に生まれることはできなかったが、同じ年、月、日に死ぬことを願う」というような意味です。この言葉の前後に、義を持って国家に尽くし民を救うというようなことを宣言しています。
この儀式に使われた場所が張飛の家の裏の桃園だったため、この出来事は桃園の誓いと呼ばれていて、劉備が主人公として描かれる三国志演義の最初の名シーンです。
なお、正史には劉備、関羽、張飛が義兄弟だったという記述は一切ありません。三国志演義が成立した明代に流行した世俗が反映されたもののようです。

「実はうらやましく思っていました」

桃園の誓いは孔明が劉備に仕える20年近く前の話で、当然孔明は参加していません。
孔明が劉備に仕えた直後、孔明に付きっ切りになる劉備に対して、関羽と張飛が不平を言うと、劉備は「私が魚ならば孔明は水だ」と言ったそうです。(水魚の交わり)
そのくらい劉備に必要とされた孔明も、劉備の晩年、魏軍と呉軍に殺された関羽の弔い合戦に燃える劉備を止めきれず、呉軍に大敗してしまいました。(夷陵の戦い:第1話に登場した「石兵八陣」は、この戦いから撤退する劉備を支援するための計略でした)
劉備の死の際に「子の劉禅が補佐するに値しないなら、孔明が蜀の皇帝になれ」とまで言われるほど信頼された孔明も、無謀な敵討ちを止められないほど義兄弟の結びつきの強さにはかないませんでした。もしかしたらこのセリフにはそのような背景があるのかもしれません。

「関羽を引き留める曹操」

西暦200年、曹操軍に攻め込まれた劉備軍は敗北を喫し、劉備、関羽、張飛がバラバラに逃亡することになりました。その際、劉備の妻子を護衛していた関羽は曹操に捕らわれました。
上述の桃園の誓いや劉備の妻子の命を守るため、関羽は一時的に曹操の配下になりますが、「劉備の消息が分かったらすぐにそちらに向かう」などの条件を付けました。
曹操は関羽の才能や人柄に惚れ込み、一時的な降伏ではなく本採用をしようと贈り物を贈ったり、部下に本心をさぐらせたりと手を尽くしますが、関羽の劉備への忠誠心は揺るぎませんでした。
その後、劉備の消息を掴んだ関羽は曹操の元を去ろうとしますが、曹操は関羽の退去の挨拶に居留守を使ったり、熱心に引き留めますがそれも不発に終わるのでした。

「肉まんと言えば孔明」

三国志演義において、益州の南方を平定した帰り道、川の氾濫を鎮めるために住民が人を生贄に捧げようとするのを見て、小麦粉をこねて人の生首を模したものを作り川に捧げたというのが饅頭の起源とされています。
孔明は連弩といった武器や木牛、流馬といった運搬装置の発明が正史にも記載があるほど発明家としての実績もありますが、この饅頭の発明は創作である可能性が高いようです。

英子のベッドの周りの蝋燭、祈祷する孔明

三国志演義において、孔明は赤壁の戦いでは火計に必要な東南の風を起こすために祈祷したり、五丈原の戦いでは自らの寿命を延ばそうと祈祷したりしていました。
今回も、英子の快癒を願って何かしらの儀式と祈祷をしていたのでしょう。

「英子さんがここまでお疲れになっていることに全く気付かず」

これまでの回でも触れてきたように、蜀において孔明は軍事内政外交全てを司る丞相という役職に就いていて、その全てにおいて抜群の働きを示していました。その仕事量は並大抵のものではなく、孔明の死後は丞相が空位になり、数名の後継者が分担して担当するほどの仕事量でした。そのような仕事ぶりの孔明ですから、他人の過労に鈍感になっていたのも仕方ないのかもしれません。

「祖茂の身代わり」

オーナー小林が語る通り、孫堅(孫権の父)が反董卓連合に参加した際、董卓軍の武将(正史では徐栄、三国志演義では華雄)の追撃から逃れるため、孫堅の身に着けていた赤い頭巾を祖茂が身に着け囮となり、孫堅は逃げ延びることができたという出来事です。
同様のエピソードが曹操にもあった気がしますが、それは誰かの小説の創作エピソードだったかもしれません。

曹操・身代わりというと、ちょっとテイストが違いますが、匈奴という北方の騎馬民族の使者の謁見を受ける際、曹操は自身の低身長を気にしていて、見栄えの良い部下を曹操役に仕立て、曹操自身は従者として謁見の場に臨んだことがあります。
後にその匈奴の使者は、「曹操よりもむしろ横にいた従者の方が大人物だった」と述べていたそうです。

おわりに

第7話は原作コミックにもない新展開。おそらく、アニメ放送済みのAZALEAとの10万イイネ対決までは原作コミックに沿い、そこからはオリジナル展開を経て前園ケイジとの対決に持ち込む構想なのでしょう。そして、三国志ネタもそこそこ散りばめられており、非常に楽しめました。

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