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東京一極集中が起こるのはなぜか

地方都市から東京圏への流入に歯止めがかからない。安倍政権が2014年に「消滅可能性都市」というセンセーショナルな未来を発信し、その対策として地方創生施策を掲げた。施策の狙いは出生率の低い東京に若者が集まるのを防ぎ、比較的出生率の高い地方に若者をとどめることで日本全体の人口減少を緩和しようというものだ。

 2020年までに東京圏への転入と転出を同じにすることを目標としたが、その差は縮まるどころか年々拡大している。目標達成は事実上不可能な状況で、政府が6月に示した20年度から5年間の地方創生施策案では「定住人口」ではなく、兼業や副業などで地域を関わる「関係人口」を増やす方向に切り替えざるを得なくなった。


 地方創生の議論においても、自治体が消滅するというフレーズで全国の自治体を煽り、補助金をぶら下げ人口減少対策に注力させている。その前提に「自治体や議会などの組織を維持するために住民がいる」という意識が働いている。

人口増減を決める要因

人口の増減を決定するマクロな構造的要因として、もっとも目立つのは、①交通である。高速移動を可能にする交通手段が新しく敷設された場所の周辺で、人口が伸びる。

そうした交通の便のよいことが条件であるが、②新しく広大な住宅団地が開発された場所で人口増加が起きている。そしてしばしばこうした人口増地帯は、都心に近接して(つながって)生じるよりは、やや離れた場所に、浮島のように現れるという特徴も持つ。

①②をあわせてみれば要するに、こういう事が起きているのである。結婚し子育てをしようと考える若い人々が住宅をもつ際に、都心に通勤できる場所でかつ安価な住宅を求めることができるところに、人口増の場所がうまれる。

これは要するに、都心の仕事と家族の暮らしをどうにかこうには両立させようとして、新しい住宅団地でかつ安価でかつ交通の便がよい、そういう場所を人々が求めた結果である。

加えて、③新たな産業立地・再編のあった場所にも人口増が起きる。ただしここにも付言が必要である。

近年は新たな製造業などはなかなか興こらないので、基本は関係する企業や業界の再編統合によって(とくにグローバル化や業界全体の再編の波の中で)「選択と集中」が行われた際に、集中の方に選ばれた場所で人口増加が起こっている。

政策の柱となる考え方

**人口減少地帯の出生率を回復すること

社会増減もふくめて人の移動のあり方を今一度見直すこと**

東京一極構造解決策

地方への国家の権限委譲や、財源移譲、なにより地方分権を進めることである。分権によって、これまで国の権力集中に伴って過剰に集まりすぎた都心の働く場を、首都から分散させていくことである。

このところ地方創生で話題になった一部の国家機関の地方移転ではなく、まして企業版ふるさと納税などではなく、権力の再編を伴う企業の再配置が進むよう、もっと抜本的な対策が求められる。それも長期的視点で進めるしかない。

これを働く首都圏民の側からいえば、郊外住宅=持ち家=遠距離通勤=夫婦共働き型を目標とするのではない、もっと別の、暮らしにやさしい生き方のモデルを工夫し、生み出し、一般化していくことである。