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【毒親系】たわいのない雑文

両親にからかわれながら、強いストレスを感じながら、人生冒頭の20年ほどを過ごすことを余儀なくされた。そのときに受けたダメージや、親子関係を通じての自尊心の毀損といったものは、私が社会に出て以後のコミュニケーション能力に大きく影を落としている。

とはいえ、それはそれ。いくら考え込んだところで、私にできることは洗脳を洗脳だと意識することだけ。55歳にもなって毒親毒親なんて言ってるのは、どう考えても不幸で滑稽な事態でしかない。いまの私に必要なのは許しだ。両親への許しであり、自己嫌悪への(つまり私自身への)許しである。

青年期にうけたいろいろの不条理に対して「目をそらせ」と言い続けたのは母親である。残念ながら、母親は加齢のため脳が萎縮してしまっているので、この人にどれほど罪深いことをされたにせよ、贖罪させることが不可能になってしまった。

昨年の暮れに帰省したときだった。恍惚の人である母親が突然キレた。父親の前ではしょっちゅう感情失禁を起こすらしいが、私の前であのような鬼の形相をこの人が見せたのははじめてだった。

「この子、自殺しようとしてる!」
「お願い! あんた、自殺せえへんってここではっきり言って!」

私が自殺しようとしていると言って泣き喚きだしたのだ。

父親は「何アホなこと言うとんねん!」と繰り返し繰り返しどやしつけるばかり。私は心のなかで失笑してしまった。〝アホなこと〟なもんか。エゴイストめ。

私は気前がいいから、あらゆる社会生活の場面でポジショントークやリップサービスをしてしまう(見抜かれているから友達が全然できない)。
このときばかりは努めて「絶対自殺なんてしないよ」とは言わなかった。
この顛末は、母親よりむしろ父親に回収してほしかったのだが、この人にはそういうチャンネルがない。投げつけるように「女々しいわ!」と怒鳴りながら逃げ回るばかりなのだ。


つい数時間前、家内と向かい合わせで自家製のおでんをつつきながら、この世からもし私が消えたなら、この人はちゃんと生きていけるだろうかとぼんやり考えていた。それにしても味のよくしみた旨い大根だな。こういう時間が持てるだけでも、すでに私は小さくて美しい幸せのなかにいるのだよ。だいたい贅沢なんだ、自分は。仕事で干されて孤立したなんて大したことではない。私の存在意義が家内のためだけであったとしても、ちゃんと生きんといかんだろう … これが今夜の私が出した一応の答えだ。とはいえ、このあと数年以内で死ぬことになったとしても、決して珍しいことなんかではあるまい。

最近は若くして亡くなってしまう有名人が多い。つい先日も。鳥山明さんが亡くなったことだけで十分ショックだったのに、ちびまる子ちゃんのTARAKOさんまで亡くなってしまった。
既視感があるな — 谷村新司さんが亡くなったことだけで十分ショックだったのに、KANさんまで亡くなってしまった昨秋。なにこのシンメトリーは。

話を戻そう。

家内と私はドライな関係を保っている。でも仲はいい。
ここまで気を許せるのはこの人だけしかいない。

とはいえ、気をゆるめてしまうと私は、母親みたく他人の感情を試すようなゲームをやってしまいかねないフシを自覚していた。自意識がその危険を孕んでいた。だから徹底して、私の態度が娘たちに対して支配的にならないよう努めてきた。教育的なコントロールの役割は家内に担ってもらった。娘たちと家内はとても仲がいいし、私とも仲がいい。

娘たちがふたりとも巣立ったところで、私は機嫌と気前のいい〝おとうさん〟を卒業して、本来の〝寡黙で気難しいおっさん〟へと戻った。娘たちが家で過ごしていたころみたいに饒舌ではない。いや、それほど言葉を過剰に用いなくたってうまくやれるのだ。身内であることに甘えずに、たがいを大切に扱うことさえできれば。


私の父親はものすごく言葉数の過剰な人間だ。私はほとんど喋らせてもらえなかったし、気恥ずかしいことを尋ねられておどおどしていると、たちまち面白がったり不機嫌になったりした。いまでもそれを仕掛けてくる。

呆けた母親はしばしば私を独身だと思い込んでしまう。そのとき父親は、母親を煽って、私に家内の名前を答えさせるのだ。はじめて連れてきたときじゃあるまいし。わざわざ家内の下の名を何回も連呼させないでほしいものだ。

そういや中学時代、バレンタインにケーキをプレゼントしてくれた奇特な女の子の名前をしょっちゅう言わされたっけ。赤面症を抱えていた当時の私には、あれはほんと公開処刑みたいなイベントだった。あの子どうしてるんだろ?

父親も、私が子供のときから現在に至るまでずっと変わらない。変わるまい。
おそらくはADHDみたいなものなのだろう。団塊の人間にけっこうそういうのはいると聞く。それどころか、そういう気質の人がむしろ才覚を発揮して出世しているだとか。この人は会社役員の地位にあったとき、どれほど非正規雇用した労働者たちをいじめ抜いたり追い出したりしたのだろう。

残酷なものだ。私が受けたハラスメントは実は、この人が職場で加えたハラスメントの埋め合わせなのかもしれないや。ふと思ってしまった。


もう1時だ。別にいくら夜更かししたって構わないのだけど、そろそろ寝ようか。履歴書も書かなきゃならない。まああしたでいいや やるべきことはさっさとやれ

おやすみなさい。

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