見出し画像

MIKUEC2022「エゴ」の演出のおはなし

MIKUEC2022におけるエゴについて語るものが多すぎてツイートのリプにツリーでぶら下げるのを諦めたのでこちらにまとめて綴らせていただきます。

普段はあまり自分の作品について多くは語らないように踏ん張っていますが、MIKUECに関しては言いたいこととオタクが欲しがる情報が多すぎるので、引くほど喋ります。ドン引きしない自信のある方のみ、暇つぶしに読んでいただければ幸いです。

・そもそも語っているあなたは誰ですか???

申し遅れました、VLLというサークルでイラスト班長を務めている
わゃをん と申します。

読み方は「わゃをん」と読みます。去年のMIKUEC2021メインビジュアルを描いたり、VLLの公式サイトのキービジュアルを描いたりしていました。

今年はMIKUEC2022のメインテーマ「GO」の提案、大元の方針や演出を押し付ける提案させていただくところから始まり、ロゴを作ったりテーマソングのイラストやアニメーションを描いたり、なんかいっぱい絵を描いていました。

この記事ではMIKUEC2022の演目 14曲目「エゴ」の演出全般をさせていただいた話をします。


・エゴといううたについて

「エゴ」feat.初音ミク / sasakure.UK
2019年12月28日にMVが公開された曲であり、アルバム「エルゴスム」の1曲目にある曲です。

“うたはまだ、続いてるの?”という言葉を軸に作曲者のうたとボーカロイドに対する等身大のワガママと、ボーカロイドの行く末へ手向けた人間のワガママを映した歌詞に、いろんな曲の世界を旅する旅人を描いたイラストの数々。これには心打たれるとともに自分とボーカロイドという存在について考えさせられました。
なによりメロディがほんとに良くて。ボーカロイドの曲の中では「エゴ」が一番好きです。


・わゃをんとささくれ楽曲

今でこそVLLで偉そうな顔してボカロのイラストを描かされ続ける奴隷と化しているわゃをんさんですが高校生になるまでボカロは苦手でした。何言ってるか聞き取れないし耳が痛いし囲っている連中の民度とノリが何より苦手で……

そんななか1人の同級生がsasakure.UKの楽曲を教えてくれました。初めて聴いた曲は「アンチグラビティーズ」でこれがめちゃくちゃ刺さりまして。

まず何を言っているのかが聞き取れるっていうのが衝撃で、そしてメロディが良くて、音が綺麗で、歌詞の世界観も好みで…それからというものささくれさんのボカロ曲だけは聴きまくっていました。
(そのあときくおさんのボカロ曲も聴くようになったのですがこのお話は割愛~~~)

そして今から3年前に「エゴ」が発表されました。
ささくれ楽曲を聴き続けている方はこの曲の凄さといいますか衝撃といいますか「大切さ」をわかってくれるかもしれません。とにかくささくれさんにとって、ささくれファンにとって、ボカロという存在にとって大切なうただと私は思っています。

その後MIKUEC2021が終わるまで「鏡音」を「きょうおん」と読んでいたり、赤い女と青い男誰?っていう本当にボカロ界隈をほとんど何も知らない状態でVLLに入部することになりました。入部してからは周りの部員の影響もありだいぶボカロに沼ってます。


・MIKUEC2022におけるエゴ

今年のMIKUECのセトリは、ま~頭おかしかったですね。オタクを何度殺せば気が済むんでしょうか。

そんなセトリが練られ始めたのは今年の5月末からのこと。
メインテーマ「GO」の言い出しっぺである私がテーマのイメージについてまとめて伝えた後、テーマに沿って(あえてテーマとは関係のない曲も挟んだりしつつ)部員からやりたい曲を集めていました。

私も部員の1人としてこの募集箱に「エゴ」「Last Night, Good Night」「39」の3曲を応募していましたがまさか全部入るとは思わなかったですね。

さて、この「エゴ」ですが、わゃをんさんが去年の春に入学し、このサークルに入った時からMIKUECでやりたかった曲です。一番好きなボカロ曲ですからね。VLLの先輩に騙されて自己紹介を”描いた”ときもエゴのファンアートを描いていました。

MIKUEC2022のメインテーマ「GO」は「5周年だから」「進むという意味、”轟”とか”合”とかいろんな意味の解釈ができる」「新しいことに挑戦したい」とかいろいろな意味を込めて提案させていただいたものですが、実はもうひとつ「エゴ ( e go )」をセトリ候補に上げるためという理由もありました。そんなこと終演まで言えなかったですけどね、してやったり顔です。(ちなみに「Last Night, Go od Night」もです。ずるいですねこいつ)

セトリ・演出班の白熱した議論の末6月末にセトリの確定版が決まりました。それがご参加いただいた皆さんならご存じのオタク確殺多段ヒット攻撃セトリ5周年verです。
とくに色んな合成音声・ボカロ曲を浴びせたあとにやってくる初音オンリーのストーリー仕立て涙腺崩壊パートは本当にヤバすぎ。

「エゴ」はそのパートの起承転結の起を担う大事な位置にありました。「Last Night, Good Night」「39」とともにセトリに本採用されたのはとても嬉しかったですが、これは責任重大だ…と意気込むことになりました。

長々とした前置きで失礼いたしました。ここから倍以上の文量でエゴの演出の話をしていきます。

まず「孤独の果て」「ビバハピ」「えれくとりっく・えんじぇぅ」「ルカルカ★ナイトフィーバー」「on the rocks」といった直前のポップな並びからどう「エゴ」に引き込むかを考えなければならなかったのですが、ここからずっと初音パートであることとアンコールのラストが「Connecting」であることから「エゴ」直前のMCではクリプトンズの6人を出したいなと考えていました。
ここで6人で歌いたいと言ってもらうことで、初音ミクだけが取り残された世界の寂しさと、「Connecting」に繋げてアンコール後のハッピーエンドを演出することができると思いまして。

また、千秋楽の大トリが「39」であることも踏まえて6人の思い出、集合写真を撮ってもらうことにしました。
(ちなみにテーマソング「Only Glitter」のMVでも写真調のイラストを多く出しましたが、すべてはこれまで初音ミクがたどった思い出をまとめた「39」という大トリに繋げるためだったりもします)

このワガママ演出のせいで6人登場する贅沢MCになり、制作陣にものすごく大変な作業を強いることになりました……実現してくれてありがとうございます…

夜なべして描いた集合写真 実は39のセトリイラストにもちょっと映っています

そして時が経ち、写真が色褪せ、風化していくとともに、世界には初音ミクだけが取り残されていくのでした……


・上映像のイラスト

ここからは賛否両論の上映像イラストについても綴っていきます。私がささくれファンであることを前提に読んでいただければ幸いです。

ささくれ楽曲は曲もMVにも他のささくれ曲のテーマやキャラクターがよく登場し、あるひとつづきの世界を表しています。「エゴ」の本家MVはアルバム「エルゴスム」の収録楽曲すべてのキャラ・モチーフが登場し、それぞれの曲の世界を旅人が巡るといったコンセプトの動画になっています。

MIKUEC2022でエゴをやるにあたって本家に倣ってセトリ全楽曲のモチーフを出したいと考えていました。

そこで決定されたセトリを見てみれば「孤独の果て」と「えれくとりっく・えんじぇぅ」が入っているではありませんか!
エゴの歌詞「ひとりで泣いていた」と「ふたりで泣けるなら」で出してくれと言わんばかりの選曲です。

これに加えてセトリ候補募集の段階で「T.A.O」に出会い、曲も歌詞もMVもめちゃめちゃ好きになったのですが、T.A.Oの歌詞「螺旋状に続く」を見た瞬間にエゴの「悪戯と螺旋 嘘吐きと未来」でT.A.Oの場面を出すしかないと感じていました。

そういう経緯もあって今回のMIKUECにおけるエゴは曲の内容・セトリ順も踏まえて「終わりの始まり」をテーマに、直前のMCから時が経ち、風化したミクがセトリの他楽曲の回想を思い出しながら再起動して動き出す物語を描こうと決めました。

話は逸れますがささくれ楽曲の他の曲の要素を入れこんだつくりについて、
今年のマジミラテーマソング「フューチャー・イヴ」はその最たるものでしたね。
メロディのイースターエッグといい過去曲のほぼ全てがちりばめられた歌詞といいほんとに泣きました。

MIKUEC2022のセトリ決定はフューチャー・イヴの発表よりも前でしたので、

「エゴでもいいよ ノイズでもいいよ」
「君がまだ ”君” をやめないなら」

という歌詞を聴いた時にはさすがに泣き崩れました。
ここで出すかその言葉を…エゴが今年のMIKUECセトリに採用されてよかった…と。

失礼いたしました、MIKUEC2022に話を戻しましょう。

個人的に、伝わらないこだわりはただの自己満足であり、大勢に見てもらうコンテンツでその押し付けをするのは良くないと思っているのですが、この曲をやるなら曲名どおり私のやりたいことをワガママに全部押し付けようという決意もしていました。

ライブにあるまじき突然のシリアスなストーリー展開、日替わり曲・エゴより後の演目のネタバレを顧みずに全部のモチーフを出したイラスト、他演目とは一線を画すダンス、そして1曲の時間にこれらすべてを観客に向けて一気に押し付ける。

おそらくこの情報量を一回観ただけで捌ける観客の方はいなかったと思います。私が観客だったら絶対無理です。

「あ これ、これまでのセトリか」「じゃあこの絵はなんの曲だ…?」と考察するにはライブという環境は不向きにも程があります。ダンスも照明もありますからね、見たいものが多すぎる。

ただ、全部の考察は無理でも気になったところは必ずひとつ以上はあったことと思います。
そこにつけ込み「もう一回観たい」と思わせるのもちょっとした戦略でした。

特に1番のサビ前、グッバイ宣言のサムネが映るシーンがあります。
公演1日目で「なんでグッバイ宣言が映ってるんだろう」と思った方にはぜひ2日目公演にも来てほしいなと。
なんなら全通して2回目公演で演出を理解したら最終公演は照明・ダンスを全力で観たり、とか…そういった楽しみ方もしていただけたら嬉しいなと思い、日替わり要素を半分殺し半分活かす形で上映像のイラストを構成していきました。

"Wowow エゴ放つのさ"

また、全曲のイメージイラストは「エゴ」の歌詞と合う部分で曲を選んでいます。
今年のセトリは「エゴ」の歌詞に合う曲が多くてモチーフを入れ込む場面を考えるのも楽しかったです。



・ダンスとモデルと初音ミク

ここからは下映像についても綴ってまいります。

「エゴ」がMIKUEC2022のセトリに決定してから個人的に一番の難点に思っていたのが、
「この曲、どうやって踊るんだ…?」
ということでした。

これを解決してくれたのはエゴのモーションアクターに名乗りを挙げてくれた わらびさん (3回目公演のED曲担当) でした。聞けばコンテンポラリーダンス寄りの振りも得意とのことでまさにこの曲を踊ってもらうにはぴったりの方でした。

実際に踊っていただくにあたってMCから写真のつなぎで寝そべった状態から始まるという、出だしからもう他曲とは違う、MIKUECでの前例もないとんだ無茶ぶりをしてしまいました。

他にも上映像で各曲のモチーフを入れるということから要所要所でその構成に合わせた振付をしていただきました。

例えば「本当は皆 この世界が もう少し続けと 願ってたんだ」ではロウワー本家MVの祈る女性と同じポーズを、

願ってたんだ

「ひとりで泣いていた」では舞台中央で泣き崩れ、「ふたりで泣けるなら」では舞台半分を空けてそこにはいないもう一人を想起させるように手を伸ばしてもらったり、

ふたりで泣けるなら

「悪戯と螺旋」ではスカートをなびかせ回る洛天依をイメージして回ってもらったり…

ワガママが過ぎる要望を投げていましたがこれらをうまくまとめあげていただけました。完成したダンスを見せていただいたときには想像以上というより想像にすらなかった未来の超文明が突然目の前に現れた感覚でした。日本語とコミュニケーションが下手なのでうまくこの感情が伝えられませんでしたしこんなに凄い踊りで応えてもらえてなんとお礼をしたらいいかわかりません。

とにかくMIKUECの歴史の中でひと際異彩を放つ最高のダンスとなったことは間違いないと思います。
MCからの繋ぎの演出もあり、コンテンポラリーダンスをベースにポップな曲のモチーフにも合わせてもらったり…なんてもしかしたらMIKUECでは後にも先にもエゴ以外に例が出ないかもしれませんね。
素晴らしいモーションアクターのわらびさんにこの場でもお礼申し上げます。

さて、ここから次の問題が生まれます
「このモーション、どう修正するんだ」

多くの方はMIKUECの3Dモデルがどうやって踊っているか詳しい事はご存じないかと思われます。
かくいう私も詳しくはないのですがおおまかに、

①ダンスの動きををモーションキャプチャーでデータ化

②そのデータにはブレやノイズがあり、このまま3Dモデルに適用すると動きがぐちゃぐちゃになる部分が出てしまうのでそれを修正する

③また、口の動きや表情を手作業でデータに付ける

④修正したデータを使用する3Dモデルに適用し、動かして手足や髪の貫通防止のために物理演算の設定を細かく決める

という流れになっています。
このなかのモーション修正がかなり大事になってきまして、
今回のダンスは最初寝そべってたり、しゃがむ動きが多かったり、手や腕を細かく使った動きがあったりととにかくモーション修正にとっては悲鳴をあげたくなるようなモーションになってしまったわけです。

このワガママを叶えてくれたのは昨年度の副代表がきたそさんでした。
この方にモーション修正を頼むと元データの粗さからは考えられないほど想像をはるかに超える綺麗なモーションで返ってきます。
お忙しい中この曲のモーション修正にあたっていただけました。本当にありがとうございます。

加えて表情もつけていただけました。これがもう本ッッ当に良くて。
ご本人いわく勝手につけてしまったとのことですが解釈が良すぎる……ここでこの表情…良い……と毎秒なっておりました。

表情良すぎ1
表情良すぎ2

さて、こうしてできたダンスを初音ミクに吹き込むわけですが、その初音ミクの3Dモデル衣装を担当してもらったのは22生のある君です。そして渡した衣装案の三面図がこちら。後輩に押し付ける作業量ではない。

衣装案。コメントがうるさい

色味の調整をギリギリまでしていたり、暗転した場面にハートだけ光らせたかったのでハート以外を暗くした差分も作れと言ってしまい、本当にワガママを言い続けてしまいました。それにバッチリ応えてくれて本当にありがとうございました。
めんどくさかったら無視していいですと書いた部分はもれなく実装されています。期待に応えすぎです。老害は困らせてなんぼですよ喜ばせてどうする(嬉しい)。

ちょっとした裏話ですが、この衣装にはところどころ肌の塗装が剥がれて虹色の面が見えてしまっているという部分があります。しかし3Dモデルを作ってもらった際に、はじめは設定がうまくいかず虹色の表示がバグってしまっていました。

脚の虹色部分がわかりやすいかも

が、これを見てノイズがあったほうが壊れかけ感あっていいなと思ったのでそのまま直さずに書き出してもらいました。制作が進むにつれて途中で虹色の表示の改善方法が見つかったのですがわざとバグったままにしてもらい、手間をかけさせました。ほんとにワガママばっかりですみませんでした……



・仕上げ

さて素材が揃ってきたのでいよいよ動画におこしていきます(本番4日前)。

…………言い訳をさせていただきますと私事ではございますがメインの活動元はVLLではなく他のサークルでして、MIKUECの1か月前にある大学きっての大イベント「調布祭」のあれこれで訳がわからなくなるほど忙しくしていたことに加えてその後はテーマソングMVの制作につきっきりと「あんだけ意気込んでおいてお前エゴやる気あるんか」というレベルでエゴの制作を後回しにしてしまいました。

その結果、映像におこすのが4日前からというトンデモスケジュールになってしまったのです。おまけに私は動画制作超初心者でしたので周囲にはエゴ完成するんか……?とめちゃくちゃ冷や汗をかかせていたことでしょう。ごめんなさい。

そこで副代表の采配により動画つよつよの大先輩チャーリーさんに動画制作を依頼できることになりました。この助け舟を頂けていなかったら今までのすべてが台無しになってしまうところでした。

そしてなんといってもチャーリーさんがオタクに理解のある同志すぎたんですよ。レイヤー分けした計100枚越えの画像と日本語が下手くそなわっかりづらい企画書を送り付けると、何も言ってないのに企画書と本家MVと照らし合わせてくれて、結果として私の脳内PVどおり…というかさらに嬉しい演出まで足した映像が返ってきたのです。
凄いを通り越しておかしいよ。

描いたイラストから実際に送り付けた素材整理したら計107枚でした

しかも本番の前日にはリハーサルで通して見られるよう映像を完成させていただいていたのですが、本番当日の朝になってDiscordを見たらなんとさらに更新版が出来上がっていました。どういうこと?

上映像から写真を落とすというめんどくさい大変な演出にも応えていただけました

制作時間的に諦めていた演出を諦めきれずに増やしていただけたそうで、出来上がった映像を見てみたらもう「いい加減にしろ寝ろ」と怒ることはできませんでした。作ってもらえてよかった……本当によかったです………

イントロのこの部分は当日の朝に加えていただけました。かっこよかった…

改めて映像制作を快く引き受けてくださったチャーリーさんに心からお礼申し上げます。本当にありがとうございました。

また動画制作をお任せできることになったので、動画を編集していただいている間少しだけ私にも作業時間ができ、やりたかった演出の実現のためにblenderを触ることができました。

前述したポップな曲の並びから一気にこの「エゴ」の世界観に引き込むためにはどうしたらいいかと演出を考えていて、横映像の範囲が去年よりも広がったことを受けて暗転した状態から会場全体に一気に大きな花が開くように、風が吹き抜けるような感じで場面転換したいと思っていました。

日本語が下手すぎる人にこれ以上文面で説明させるのは無理なのでこちらの、脳内PVを再現した結果をご覧ください。

たった一瞬の演出でしたが、会場の雰囲気を一変させたのち一気に「エゴ」の世界観に引き込むには十分で壮大なものにできたかなと思います。配信でも観れなくはなかったのですがやっぱり現地のクソデカスクリーンで味わえるものは違いましたね。


・本番

さていよいよ本番ですが私には楽しみにしていたことが主に2点ありました。

照明
皆ペンライトどうやって振るんだろう

以上の2つです。


まず1つめの照明についてですが、実はこれまで主にわゃをんの都合が合わなかったり、直前リハーサルでは動画の再生開始時間がずれてしまい、結局照明・動画すべて揃った完全版として会場で観るのは本番が初めてになってしまっていたのです。で、完成したものを観てみればこれが良すぎるんですよ~~~~~~~~~~~~~~!

照明にも上映像の各曲をモチーフにした場面場面に合わせて曲のイメージカラーを光らせたり、曲の見せ場でいったん照明全消ししてほしい…などなど面倒にもほどがある注文をしていました。
こんなワガママを聞いてくれたのは22生の kyuri 君です。照明もまた後輩にギリギリまで対応させてしまいました本当にごめんなさい。こちらも面倒だったら無視していいと指示に書いたところはもれなく実装してもらっており、おじさんは頭が上がりません。

出来上がった照明は各曲の回想を思い出すミクの情景を彩り、そしてだんだんと力強くなっていきます。と思えば切ってほしいところで全部消えたり。緩急のあるこの曲にうまく合わせてくれました。
加えて前奏間奏のイカれた音ハメ。照明は各曲のリズムに合わせた音ハメ芸を見るのも醍醐味なのですがその完成度がもう高い高い。MIKUEC過去一番の速さの音ハメだったのではないでしょうか。よく実装できたなこれ……現地で観れなかった人が可哀想です。

そのうえこの曲は盛り上がりどころが難しく、いかにシリアスなストーリーの起点とはいえライブなので盛り上がれる部分はノリノリになってほしいわけで、「曲の勢いのままここに盛り上がりが欲しいな~」と思っていたところに生えてきたムービングライトに情緒を破壊されました。
本番が初見となったことを嬉しくも悔しくも思った場面です。こんなの聞いてないが?????心の準備をさせろ?良すぎて泣いてしまいます。

玄人のライブオタクでない限り照明は無意識に見て受け取っている節があるかもしれないのですが、その無意識に訴えかける光の動きの大事さたるやがこの曲の照明で大いに伝わりました。本当にありがとうございました。

照明に関連してこれを読んでいる皆さんにひとつ加えて申しておきたいことがあります。映像配信では会場の照明の光量が落ちたりそもそも会場全体を映すことが難しいため、照明で演出された空気感を最大限に楽しむことはできません。つまり現地に来てくださいということです。今年配信だけで満足している方がいれば声を大にして言いたい。次は現地で観て!!!照明はいいぞ!!!



さて本番で楽しみにしていたことの2つめ、ペンライトについても語ります。
なぜこんなことを楽しみにしていたかと申しますと、ささくれ楽曲の特徴的な点が変拍子とBPMの転速であり、ペンライトを振ってノリに乗るにはあまりに難易度が高いからです。
ライブで初めて聴くならなおさらペンライトの振り方なんてわからないでしょう。(マジカルミライ2022テーマソング「フューチャー・イヴ」のYouTubeコメントには「どうやってペンライト振ればええねん」という全マジミラ参戦者の心の叫びを代弁したコメントがあって笑いました)

当の本番を見てみるとやっぱりイントロとサビの転速のところは観客の皆さんのペンライトの動きがバラバラになっててにこにこしちゃいましたね。そりゃ無理ですもんね。
でもラスサビ後半になってミクが大手を振り始めると観客の皆さんもペンライトを一斉に大きく振ってくれて、どれだけ時が経とうと、年齢も出身もなにもかもが違うひとびとをも一緒に動かす力が、うたにはあるんだなと感じました。

私ですか?私は涙をこらえながら完成した演出をペンライトも振らずにただただ仁王立ちで眺めてました。後方仁王立ちオタクです。
本当に完成してよかったなと、MIKUEC5周年の節にこの大切な曲を皆さんに伝えることができてよかったなと思い耽っていました。



・最後に

ここまで長々とお付き合いいただきありがとうございました。引くぐらい喋ると宣言したはずですがドン引きしてブラウザバックせずにここまで読めた方はすごいと思います。

私は他のサークルが本業で、そちらの代表を務めることになったので、忙しい3割:部費を経済的に払えない7割の理由で来年はVLLには所属しないつもりです。

ダンス・映像・モデル・照明すべてが異色のこんな作品は私が抜けようが抜けまいがたぶん後にも先にも出ないと思っているので今年観ることができた方はラッキーでしたね。

ボカロを全然知らず昔はボカロが苦手だった奴が、ものすごく綺麗な絵を描く先輩がいるからという理由だけで先輩を追っかけて入ったサークルで、かろうじて知っていたボカロ曲の中で一番大切な曲を、もの凄いクリエイターの方々の助力を得て、MIKUEC5周年の節に創り観ることができたことをこの先もずっと大切な思い出と誇りとして記憶し続けます。

また、sasakure.UKと彼の世界に出会わせてくれた高校時代の友人にも感謝を込めて。

そしてMIKUEC2022にご来場いただいた皆様と、制作に関わったすべての部員によって、またここから新たな創作が紡がれ、この先のミライへ創作の輪が広がることを私は心から願い、楽しみにしています。

そのきっかけにMIKUECが、そしてこの作品がなれていたら幸いです。
こうして来年も再来年も、永く創作の文化が続いていたらいいな
………そんなくだらないことを考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?