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家族 その2

4月17日(水)
早朝、実家のグループLINEに、夜勤明けの姉から、これから実家に向かう旨の連絡が入った。高速を飛ばしても、おそらく3時間以上はかかる。仕事明けにすぐ駆けつける姉を尊敬する。今日は葬儀。

出社。GW前の出荷に関してあれこれ電話がかかってくる。手帳のメモ欄がぎっしり埋まっていく。話過ぎで喉の調子があまり良くない。合間に龍角散ダイレクトを服用。

退社。郵便局に向かい、現金書留の封筒購入。コンビニで香典袋を購入。帰宅。

家族のグループLINEに、姉から、葬儀が滞りなく終わった旨の連絡が入った。母親はおそらく疲れているのだろう、一言二言コメントの送信があったのみ。

夕食後、香典を用意。夫もお金を下ろしてきたわ、と言って出資してくれる。本当にありがたい。

4月18日(木)
朝5時に起きたら、LINEに、16件ものメッセージが。驚いて開くと、姉からの葬儀の様子の詳細と、夜中の地震に関して私以外がやり取りしている履歴が。私は全く気が付かずに寝てしまっていた。
地震は大丈夫だったらしいが、葬儀の様子の詳細を読んで、しっかりと落ち込む。姉曰く、母親の認知機能と身体の衰えは思った以上に進んでいるとのことで、葬儀でもなかなかに難儀したとのこと。医療職の姉のレポはさすがにうまく、長文を読んで母親の状態をしっかりとイメージすることが出来た。落ち込む。苦しくなる。うまく歩けない、指示が通らないという内容を何度も読み返す。49日の法要に、また母を参加させてあげたいが、それには必ず付き添いがいると思う、とのこと。姉は自分が付き添うのがベストとも書いていた。私もそう思う。私が付き添ったらきっと母と喧嘩になるだろう。私のキャパの小ささは、自分でも自覚があるし姉もよく分かっている。できることが少なくなっていく母に対して、私はきっと苦しくなってしまう。文面を読むだけでももう、きつい。

母と姉は、私たちが送った電報が読み上げられた時、二人で号泣したのだそうだ。想像できた。私たちが小さいころから見守ってくださりありがとうございました、と言うような内容の電報にしたから、いろいろと思い出すことがあったのだろう。その場にいたら私も泣いただろうなと思った。
と同時に、父親の葬儀に関するあれこれが脳裏に浮かんできてしまい、出社のために乗っている電車の中でまた泣く羽目になってしまった。普段は思い出すこともないのに、どうしても思考の再生が止められない。特に、父親の遺影を持って霊柩車の助手席に座る8歳の姉のことを思い出し、もう駄目になる。わたしがもし大人としてあそこにいたら、わずか8歳の姉にそんなことさせなかったのに。その後、誰よりも強く強く成長した姉のことを考える。電車で隣に立っている人が、泣いている私に気が付きぎょっとして、こちらの様子をうかがっているのが分かる。会社勤めと情緒の相性が悪い。
泣いてしまうのに、姉からのLINEを何回も読んでしまう。それにしたってこの姉の文章のうまさ、すごいなと思うなど。

どうしても思考の再生が止められない。それとともに、母親の衰えに関して気持ちが落ちこむ。仕事中、全国各地の営業所から電話がばんばんかかってくる。咳き込みながら電話し、龍角散ダイレクトを喉にぶち込み仕事する。喉の違和感が半端なくなり、うまく唾を飲み込むことが出来なくなっていた時に気が付いた。
これ、電話しすぎで喉がおかしくなっているんじゃない。ストレスだ。
いわゆる呑気症というやつだ。喉がマヒしたような状態になり、呼吸がうまくできない。
たまにこの症状が出てくるのだが、やり過ごしていればやがて落ち着く。今回も放置していたら何とかなるやろと思いながら仕事をし、ついに咳き込みすぎて電話中に会話不能となる。だめだ。これ対処しないとだめだ。仕事ができなくなる。
会社帰りに、喉のつかえに効く漢方を買う。

帰宅してさっそく一包服用、ソファに寝転ぶ。夫が帰ってきて、冷凍餃子を焼いて夕食。昨日までは大丈夫そうだったのに、今日はもう喉の調子が悪く声がうまく出ていないことについて、これはもう、あれだ、カウンセリングを受けるのを早めたほうがいいかもという話をする。弱い自分が嫌になるが、仕方ない。叔母が亡くなって、次は母かもしれないと思っただけでもうこの様だ。本当に母親が死んだら、私は仕事ができなくなるかも、と言うと、夫は、仕事できなくなるくらいじゃ済まないかもしれないと答える。
その通りだ。二人とも具体的なことをそれ以上は言わなかったが、すなわちその言葉は私の自殺の可能性を示していたと思う。二人して黙り込む。とにかくもう寝るわ、寝れば何とかなるかもしれないし、と言って、二人でアイスを並んで食べた後、本当にすぐに寝た。

4月19日(金)
朝起きたら、喉の違和感は半分くらいになっていた。よかった、薬が効いたのかもしれない。
終日、在宅勤務。とはいえ今日はあまり自分が使い物にならなかった。今日だけは仕方ないと思うことにする。

トラウマとかフラッシュバックとか、自分には関係ないことだと思いたかったが、今起こっている身体症状はそういったものからきているなと思いうんざりする。物理でねじ伏せたい。インナーチャイルドを抱きしめたり、トラウマケアのために自分にやさしくしたりしたくない。そんなもん、外に放り投げて雨風にさらしとけばそのうち風化するやろ、と思いたい。そういうわけにいかんのだろうな。自分が面倒くさい。叔母の死を、叔母の死単体で考えることなく、上から自分のトラウマをかぶせて考えているようで自分に違和感がある。なんでも自分のことを上からかぶせりゃいいちゅうもんじゃないぞ、と、自分に思う。

夕食を作る気にならず、夫にお弁当をテイクアウトしてきてもらう。一緒に買ってきてもらったトマトがとても美味しく、食べながら二人で喜ぶ。
北斗の拳新装版の最終巻を入手した夫、さっそく読み込んでいた。私も読みたいと思いつつ、今日も早く寝るわ、と言って就寝。脳の再生を止めるには、寝るしかない。






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