ー帰還ー②

「本当に何度も申し上げますが白百合様。同じことしたら今度こそ監視強化しますからね。宗お前もそう認識しとけ。」
「はあ…わかったよ、おい!行くぞ桜織」

いつまでしょげてんだ?お前はと、ガシッと強く首根っこ掴みながら、グイグイと引っ張った。それに対しての反応した私はというと

「…うん」

と、元気なさげに頷いたと同時に大きな溜息を吐いた。

(取り敢えず監禁は免れた…!良かったのか悪かったのか分からないけど)

うんうんと悩む様子をじっと見ていた宗は、深く溜め息をした後、強く首根っこ掴んだまま、ずるずると私室まで連れていこうと強引にすたすたと歩き出した。

「…イタタタ!ちょっと、ちょっと宗!乱暴にしないでよ!」

ただでさえ、小鬼に噛まれた首筋はまだ痛いのに!しかも返り血浴びたまんまの姿を皆に見られたくないのに!と泣きべそになりながら、痛みから逃れようとジタバタ暴れ出した私に、宗は決して離さなかった。

「宗!本当に、痛いんだってば!」
「そりゃ、お前、自業自得だろ?」
「ぐっ」
「…あのな、あの本屋は何が起こるか分からないから、俺は危険だと言ったんだし、その本が欲しいんなら一緒についてくよって俺はお前に言ったはずなんだが…」

全然、というより絶対に聞いてなかっただろ?むしろお前強行突破をしたよな?兵士達の監視を欺いて…と、私の首根っこを掴んだまま、後ろへ向き立ち止まった宗は、かなり呆れたと言った顔で私を見つめてきた。

(だって、どうしても欲しかったんだもの)

とは、口が裂けても言えない気まずさを感じた私は、無意識にふいっと明後日方向に目を反らした。

その動作を見逃さなかった宗は、カチンときたのか無理やり私の顎をグイッと掴んだ。

「…その結果が、その様かお前は…」と、怒りに震わした低い声で、私を叱った。

「…はい、ご尤もです。」

だから、なんていうの?小鬼に噛まれたところを、強く掴むのは止めて下さい、いや真剣に痛いんですがと、必死に、そう、私は必死になって宗に哀願すると

「離したら、どうせまたお前は抜け出すんだろ?」

と、私の気持ちを読んだかのように、釘を刺されてしまった。

「しーゅーう!本当に痛いんだってば!」
「…部屋に着いたら、離してやる。」
「嘘つき、そう言って絶対離さないくせに!」
「うるせー、ぎゃんぎゃん騒ぐな阿呆娘。」
「なにさ!阿呆、阿呆言わないでよ馬鹿狼!」

煩い!大人しく首根っこ掴まれてろ!と叱られた私は、子供の様に拗ねて、プイと顔を横に向いた。

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