ー帰還ー④

(いやいや、なんでそこでときめくんだ私。)

と、思いつつも銀狼には私と宗が喧嘩しながら黙々と歩いている姿を目撃されているから、もうこれは日常茶飯事のようなものだ。

(とはいえ、見慣れた光景だよなぁ…)

2人とも年が近いせいか、兄弟(という名の子守だ馬鹿野郎と宗に怒られそうだ)と見られる私達は、周りの兵士達に揶揄われ、長老から呆れ顔され、銀狼から笑われる。

小さい頃から何一つ変わってない。
そう私達2人の背丈や外見が変わった以外は…何一つ変わってないと思う。

(宗は本当に背が高いな、小さいときは本当に可愛いかったのにいつの間にか、大人と変わらない外見になってしまって…)

寂しいやらなんやら…嗚呼…と思って宗を見つめ続けていたら、いつの間にか事のあらましを既に話し終えていた。

「ははぁ、なるほどね」
「俺は危険だからやめろと止めたんですがね、総隊長。こいつ聞かないんですよ、自分がどれだけ…」
「しーっ、分かっているさ。我らが姫さんはお転婆さんなのは、何というか今に始まった事ではないからね。」
「はあ…総隊長も甘いですね…こいつには」

どいつもこいつも…やれやれと宗は呆然として言葉にならない、いや会話に加わることをしないでいる私を見つめては、再び溜息を吐いた。

その様子が面白かったのか、ふふと笑って宗に向けていた視線を私に移し、和かな顔で私にこう言った。

「本当に、白百合様が無事で良かったよ。何かあれば皆心中穏やかではないからね」

何かあれば皆傷ひとつでも、許さずと言った顔で相手を八つ裂きする勢いだろうなあと、思い出したように笑いだす銀狼。

「銀狼、それは大袈裟というものでは…」
「それが…意外と、そうでもなかったりするものだよ白百合様。」
「は?」

目が点になるぐらいに唖然とした顔つきになった私を見て、銀狼は目を細めて苦笑いをした。

「はは、自覚がないのも怖いものですな…」

と、悪戯っぽく笑いながら宗の肩をポンと叩いた後「それでは、また。宗、白百合様を頼んだぞ」と、そのまま狼に変幻した銀狼は見回りに行っている戦士達の元へ颯爽と向かって走っていった。

「自覚…?」
「…行くぞ」
「あ、ちょっと待ってよ!」

再び歩き出した宗を追っかけ、慌ただしく廊下を駆け抜けていった。

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