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消えた子供 (09/15)【橙狐は見た】

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あらすじ
 氷室愛優ひむろあゆは、玲子の妹で憑依ひょうい体質を持つ。危険な式神を二体を封印した彼女を橙狐だいだいきつねが見守る。行方不明になったクラスメイトを探すために深大寺真じんだいじまことの家へ向かう。

「居場所がわかったのか?」

 霊能力者の天之宮武雄あまのみやたけおが姉の氷室玲子ひむろれいこに質問をしている。玲子は嫌そうな顔だ。彼を嫌ってるわけじゃないと思うが苦手なのかもしれない。

「お姉ちゃんはツンデレなのよ」

 愛優あゆが、ませた口調で教えてくれる。ツンデレとは普段は素っ気ないけど人が居ない所ではイチャイチャするらしい。愛優あゆは、武雄に手を握られて嬉しそうだ。私から見るとお父さんと娘にしか見えないが、本人からすれば恋人気分かな?

 もっとも私は人工的に作られた式神でしかない。人の心を理解しているように見えても、実は何も理解してない。愛とか恋とかとても大事なのは判る、TVのドラマで男女がくっついたり離れたりして、人間は喜んだり悲しんだりする。でもなぜそうなるのか判らない。私には一生理解できないのかもしれない。

「理由がまったくわからないな」
「なにかの儀式に子供を使うとか?」

 武雄と玲子は、ずっと議論をしているが霊障れいしょうには理由がない場合もある。古来からある神隠しも理由は無い。単に子供が迷って消える。

「ここだ」
 深大寺凪じんだいじなぎさの家は、一軒家で二階建ての現代的な新築に見える。真新しい家に不穏な雰囲気は無い。愛優あゆが、いきなり玄関先のドアチャイムを鳴らす。しばらくしてから、女性の声が応答した。

「どちら様です?」
「クラスメイトの氷室ひむろです」

 しばらくの沈黙後に、女性が玄関を開ける。銀色の頭髪は老婆のように見えるが顔はまだ若い。穏やかな笑みを浮かべながら自己紹介をする。

深大寺凪じんだいじなぎさです」

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「まだまことは、帰って来てません」

 母親のなぎさは、とても落ち着いて見えた。少なくても取り乱している様子は無い。応接室で事情を聞く事になるが、子供達が、この家に居るならば、とても隠しておける人数では無い。九尾の狐の八夜狐やよきつねは嘘を言ってるの?

「まだ手がかりは警察から報告がありませんか?」

 天之宮武雄あまのみやたけおが、用心深そうに話を進めるが、なぎさも被害者だ。この家に居るのは判っても、何が原因なのかは判らない。だいたい深大寺真じんだいじまことも消えている。

まこと君は、ここには居ませんか? 」
 愛優あゆが強めの質問をする、すでに礼を失った暴言に近い。私がハラハラしていると、犬神が顕現けんげんする。

「隣だ!」

 爆音のように吠える、ここに居る霊能力者全員が私を含めて耳に手をあてる。なぎさは、じっと前を向いたままだ。愛優あゆが飛び出すと隣室に向かう。

「居たよ!」

 私たちが隣室に入ると、居間で深大寺真じんだいじまことが倒れていた。天之宮武雄あまのみやたけおが彼に近づき脈をみる。

「生きてる……」

 なぎさがゆっくりと居間に入ると落ち着いたまま息子に近づいて抱きしめる。

「良かった……どこにいってたの……」

 母親に抱きしめられている息子は目をつむったままだ、でも生きている感じはしない、なぜだろうか? 携帯電話に着信が入る、武雄や玲子の電話にクラスメイト全員が自宅で見つかったと連絡がきた。子供達はそれぞれの家で見つかる。

 この事件は家に戻った子供達が自宅で隠れていたと大人達は判断した。なにかの遊びと思われていた。集団でイタズラをした? 理由はわからないが、子供のすることで終わる。

 一緒に行方不明だった担任の山口かおりも自室のアパートから電話をしてきた。疲れが出て寝ていたと言い訳する。不自然だとしても全員が無事ならば、追求は無い。

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 私は姉の玲子れいこに聞いてみる。

「なにが原因か判ります?」
「私じゃ無理よ」

 天之宮武雄あまのみやたけおは、難しそうな顔をしながらぽつりとつぶやく。

「ヒトガタ……」


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