創作民話 ふたりの惣領

ある武家の惣領が朝帰りをした。しかし前日にも総領が家に戻っている。
ふたり居る総領を、それぞれを別室に通した。
我が家は長男の総領と次男坊がいる。家族に面通しをすると
誰が見ても区別がつかない。母親ですらわからないわからないとつぶやいた。
それぞれの前日の言い分を問いただすと
先に戻った方は茶屋からまっすぐ帰ったという
朝帰りした方は茶屋から戻る途中で眠くなり古寺の軒先で寝て朝に戻った。
どちらの言い分も茶屋から後の目撃者も居ないため確認ができない
総領同士は合わせないようにして、一族で相談をしたところ
剣客の叔父が話を聞いてみるという
先の総領と少し話をして、部屋に戻した
後の総領と話をしている最中に抜き打ちで殺してしまった。
叔父はどちらかが狐狸のたぐいで人に化けていたのだろう
古寺にも居るだろうし、外で寝るわけがあるまいと判断をしたという。
遺骸は人のままで本当に狐狸なのか判断はできない
先に戻った方も殺すわけにもいかず、そのまま総領として扱った
普段と何も変わらずに数年後に嫁を娶り
一夜明けてみると嫁は事切れており、総領も居なくなっていた。
藩には乱心のため逐電をした届けをして次男坊を総領として扱い
家を継がせた。叔父は後に切腹で自害をして納めたという。
狐狸なのか、乱心なのかは誰にも判らない。

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