創作民話 辻男


夜中に辻を通ると男がいる。夜盗かと恐れるが何もしてこない。
こちらから問うても話さない。
ただ居るだけなのだが、片腕を上げて道を指している。
自分の行きたい方向でもないので無視をして歩くとまた辻にでる
そして男がいる。
迷ったかと考えるがまっすぐ歩いているだけなので間違うわけもない
狐に騙されていると思いそこらの枝で男を追い払おうとすると
消えてしまう。
安心して歩き出すとまた辻にでる。
男もいる
怒鳴っても懇願しても男は何も話さないし何もしてこない
ただ道を指しているだけ
仕方がないので、男の指している方向を歩くと目的の地に着いた
そんな噂があると、腕自慢の男たちが物見がてらに辻で待ち伏せする
もちろん出てこない
その地の長老などに聞いて、辻に道標を置いた
行き先がわかるものがあれば迷う事もないだろう
辻男はそれきり出なくなった
ある晩に行商が辻男にでくわした。道標もある
噂を知っている行商は、男が指している方向に行く事に決めたが
戻る道を指していた。
戻る道を選択すると出発した村に着いてしまう
辻に戻る気もなくなり一泊して昼に行くことにする
朝に起きて辻を通り村に到着してみると山津波で村が消えていた。

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