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雑多なSF設定

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SF設定の小説を集めます ・ケモナーワールド ・ジェリービーンズ ・猫探偵
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2024年5月の記事一覧

SS 戦場の少女【#戦国時代の未来】 #爪毛の挑戦状

 ザムザ844は、センサーから入力したデータをフィルターで選別する。 (人は居ない)  思考はあるが感情は無い。そもそも感情が判らない。気分の高揚なのは判る。楽しい、嬉しい、悲しい、怒り。その状態になると行動にメリハリがつく。 (ノイズに思えるけど……)  戦場は長く爆撃されたせいで荒廃している。鉄くずと骨のかけら、人だったものが銃を握っていた。ゆっくりと歩く、敵がいれば……。ザムザ844は、人の形をした兵器だ。  少年はとぼとぼと歩く少女を見つけると駆けよる。敵兵

SF 永遠

 老人は暗い部屋で白黒の映像を見る。映像の男達は、何も不安も心配もなさそうに見えた。映像の男たちは死んだ友達だ。 「幸せか」 「幸せだ」  電脳に自分の精神をアップロードをして、永劫の命を楽しむ。 「俺もそちらに行くよ」 「待ってるよ」  弱った体は、どこもかしこも痛い。早く楽になりたいが自然死以外は、脳データをアップロードできない。 (自殺した奴が永遠の命を得ても……)  人の魂は、どこにあるのか。記憶だろうか? 人格だろうか? 脳のどこに含まれているのか……

SF 選別

 暗い部屋のブラウン管は、歪んだ映像を映している。私は選ばなくてはいけない。  かすれてよく見えない映像の中の男達は、不安そうに見えた。私がボタンを押す事で男は死ぬ。それが判っているかのように、おびえている。 (男が増えすぎたせい……)  男達は無作為に街から拉致をされて閉じ込められた。もちろん普通に働いている男は選ばれない。  女は希少で貴重だ。そんな女に害を与える可能性があるならば、駆除しなくていはいけない。だから女が選ぶ。  男達は何が起きるのか知らされていな

SF 映画館

 古い無声映画を見る。音の無い映画はBGMはないので、ひたすら画面に集中する。  内容は女が男に追いかけられる話だ。執拗に恋人にしたい男は、女を部屋に閉じ込めてしまう。よくある展開だ。  だが男は何かの理由で死んでしまう。部屋に戻れない。路上に男の倒れている手が見えるだけ。  女は男の帰りを待つしかない、飢えと恐怖でしだいに冷静さを失う。極限の彼女は、出られない部屋をさまよう。  いきなり映画が途切れた。  フィルム映画なので切れてしまう事もあるので黙って座って待つ

SS くされ縁【お題:#腐れ縁だから】青ブラ文学部参加作品(550文字位)

 出会いは偶然で永遠に思える。海の中でそっと触れた時に、つながれた。 「私と死のう」 「わかったよ」  何回も繰り返す言葉。海を散歩すれば気が晴れて忘れる。彼女が落ち込み、僕がなぐさめる、くされ縁だと思う。いつもと同じで夕暮れの中を歩けば気分がかわるはずだ。その日も一緒にでかけると大きな波がうねるように砂浜を洗う。彼女は嬉しそうに近寄っては逃げた。 「危ないぞ」 「平気よもう平気」  波にさらわれる、いやさらわれるのが運命だと感じる。 「おなかも大きくなったから……

SF いつもの朝【#帰りたい場所】#青ブラ文学部(550文字くらい)

 低くうなる音が聞こえる。ヴーン――ヴーン――ンンン  音が途切れると目覚ましの音がした。 「起きなくちゃ……」  学校に遅れると思って上半身を起こすが、今日は休日だ。いつもの癖で目覚ましのスイッチをONにしていた。キッチンに降りると父と母が深刻そうな顔をしている。 「もうダメなのか……」 「別れましょう」  離婚の話を延々としている、毎日なので飽きないのかな? と思うがいつも母が折れていた。でも今日は違う。母がすっと椅子から立ち上がり父の後ろに回ると手に持っていた

AI: 偽りの真実(ショッキングな映像があります)

 今日はお父さんからのお手紙をもらう。学校がお父さんに頼んだみたい。 「10歳のお誕生日、おめでとう!」  読み進めると奇妙な事が書いてある。私は自転車の乗ったり、歌ったりはしない。  本当は反抗もしたいけど、出来ないの。私もお父さんの本当の子供になれたら良かった。  でも嬉しい、お父さん大好き…… 「反応はどんな感じ?」 「とても喜んでいるよ……」  10歳になった人培養脳には目玉が1つだけある。それを興味深そうにくるくる回す。  AIで作成した作文に反応して

SS 人の居ない街【#風薫る】 #シロクマ文芸部

 風薫る だれもおらぬ 道を吹く  Λは、無機質な通路をぶらぶらと進みながら、人間に習った俳句を口ずさむ。 (今日は、きゅうりとトマトを植えるかな……)  空気が人間の体感で最適の温度と湿度を保っている。花の香りがするのはΛが花を育てているせいだ。  紫陽花、花菖蒲、薔薇、薫衣草、色とりどりの花は人工で作られた種を利用している。 (人間は何をしたかったのかな……) 「やぁΛ」 「γ、今日は動けそうかい」 「無理だね」 「部品を作ろうか?」 「このままでいいよ」

SS 【#永久欠番のあなたへ】#青ブラ文学部(550文字くらい)

 書類仕事がたまり疲れていた時にピコンとPCが鳴る。 「ん? メールか?」 【永久欠番のあなたへ】と書かれたメールが来た。イタズラじゃないようだ。メールに添付されたファイルを解凍するとドキュメントが表示される。 「業務連絡です、あなたは永久欠番になりました、ただちに社内から退社してください」 (……退職の強要か? 意味がわからん)  メールを印刷して上司に見せた。 「ああ、永久欠番制度が始まったんだよ」 「なんすかそれ?」 「国民の一定数が、永久欠番扱いになり国外