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雑多なSF設定

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2024年4月の記事一覧

SS 新しい体【トラネキサム酸笑顔】 #毎週ショートショートnoteの応募用 (410字くらい)

 一枚のパンフレットを見る。 「トラネキサム酸笑顔で一杯」  声を出してキャッチコピーを読む。ふふふと笑ってしまった。当時の若い私は、肌もすべすべで真っ白に見える。 「また見てるのか?」 「だって、お別れだから……」 「まだ白いよ」  確かに同年齢の方よりも白いかもしれないが、もう歳だ。手の皺を指でなぞる。 「そろそろだ」 「判ってますって」  夫はせかすが気乗りしない。私は体を捨てるから……ベッドに寝かされて、目をつむる。自分で自分の手を握る。 「はじめます」

SS 評価

「あなたたちは選ばれました、それぞれを評価してください」  十数人の男女は初対面だ。椅子がサークルのように丸く並べてあるので、精神的な治療のグループディスカッションにも見える。 「いきなり呼び出されて評価と言われても……」 「そうよ、何を評価すればいいの」  選考をしている人物は穏やかに答えた。 「あなたたちは、小説に応募をしました」 「ええそうよ、呼び出されたので受賞かと……」 「ですから、小説を応募した人が評価をします」  みなが一瞬だけ絶句すると、応募者がそれ

私を見て【#花吹雪】 #シロクマ文芸部

 花吹雪が地面に落ちるまで舞い続ける。美しい桃色の花びらは晴天の青い空を、赤く染め上げた。 「帰ってくるの……」 「立派な侍大将になる」  若い雑兵は、ろくに鎧もなく刀もサビだらけだ。それでも功名心が高いのか明るい笑顔で、若い娘はさみしげに彼を見送る。桜が散る頃の話。  女は待ち続けたが、ついに帰らずに桜の樹の下で眠る。気がつくと自分は桜に生まれ変わる。 (私も生まれ変わるなら、いつかきっと彼も……)  何年も何十年も何百年も待ち続ける。春になれば、豊かな桜の花びら

SS カエルとストロー【#代用うんこ】 #爪毛の挑戦状

「代用うんこを入れます」 「代用ですか」 「代用じゃないとダメです」  近未来、腸内細菌で人体の健康を維持する研究が進んだ。そして発明されたのが「腸内細菌サプリメント」だ。 「このサプリだと、働く意欲が高まります」 「これは美肌ですね」 「老化を防止して皺を抑制します」  ただし、問題がある。口から入れると強力な胃酸で大半が溶けてしまう。そこで発明されたのが「お尻からビルドイン!」だ。 「それで代用うんこですか」 「他人のうんこは入れたくないでしょ」 「そりゃそうです