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薄曇の空 第七話
7.何もかも溶けてしまう程の猛暑に
コロナがやっと五類扱いとなる。
人々は絶望の闇から一筋の光を掴み、恐怖から解放されつつあった。
ぴしゃりと閉ざしていた雨戸を開けて日差しをとりこみ、大気をしっかりと吸い込む。そんな、当たり前が当たり前でなくなった日々をリセットしようとして再度動き出した。とは言え、常に現実がのしかかる。誰しも仕事をしなければ生活していけない。私もそうだ。
先日また仕事を辞めた。悪い癖だ。
先ず仕事を覚えてこなせるようになると飽きる。更に純粋に職務をこなしたいと考える私を理解出来ずにいる、同僚や先輩上司に苛立ち気が散ってしまう。
生活の為の仕事であるから飽きるなどとの理由で辞めるのは意味不明である。しかし、およそ2年過ぎると疲れたり面倒になったりで新しい職場を探したくなるのだ。
リセットがけっして悪い事だとは思わないが…端末のゲームの様な生き方が私の求める生き方、それでいいのかと考える。
と言うか、私は一体何を行なえば満足したり幸せな気分になれるのかがいまだ分からない。死が訪れるまでの間暇をつぶす、そんな人生で良いのかと何となく迷っている。
色々な職務を経験した。一般事務、販売業にサービス業、清掃…貴賤を問う体質ではないので何でもやってみた。どれもそこそここなすがこの仕事が好き‼︎…と言う事は無い。先ず事務は向いていないと感じる。机にじっと座っての作業は身体が硬って辛い。 今は何でもオンラインなので少なくなったがアダルトトイショップの店員…そうそう、風俗デリバリーの営業事務経験もある。テレビショッピングの受電オペレーターもやった。清掃も高級ホテルのメイクに手術室、商業施設…
そう、色々やってはいるのだがこれこそ天職だと考える仕事に出会っていない。
次はどうしようかと色々考えセラピストにチャレンジしようとしている。若い時に大手のエステサロンに勤めていた経験があり、それが私の中では勤続年数の長い仕事だった。些細な役職を任されていた事もある。あの頃の私はじつに華やいでいた。
「そうなんだ…僕にも施術してくれる?色々、こことか?」
ミルちゃんに話すと何か変な想像をされた。
「あのねえ、そういうお店じゃないから…ったく、でもミルちゃんはいつでも指名料無料だよ。」
店舗のやり方がある為、デビュー前にはギチギチに型にはめられる研修がもうすぐ始まる。
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