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薄曇の空 第九話

 
     9.生暖かい年末の青空、そして絶望が再び


  若い頃は肩がよくこっていた。自分の出生の怨みつらみが肩に蓄積されたのかもしれない。
  祖母がお世話になっていた按摩師に当時私もよく揉んでもらった。
「デコちゃんはお婆ちゃんに似て骨がしっかりしとるから長生きしまっソ〜。」
と、揉まれる度に言われた。
  骨で寿命が分かるのか?本当だろうか?と思ったものだ。
  祖母は九十二歳まで生きた。私はそこまでは生きたくない。長く生きて一体何が楽しいというのだ。

  セラピストとなり日々お客様の骨や筋肉に触れるようになった私だが、あの按摩師の言う事はまんざらでもないと感じている。
  脊髄に触れると、そのひとの性質を感じる。しっかりした脊髄からは良い気を感じとる事が出来る。逆に弱々しい気も感じとる。病が隠れている気配を感じる事もある。


  ミルちゃんや死んだハジメの骨格を気に入っている。顔立ちや身長は異なるが後ろ姿のバランスの良さに共通点を感じる。私はあの按摩師に刷り込まれたのだろうか、男性を骨の質で選んでいる様だ。
「ミルちゃんのヒップ格好良いから…もしかして男性から声かけられた事ない?」
「有るよ。」
「ああやっぱりね、私が格好良いとおもったひとは何故かゲイにもモテてるし。」
「鏡で見たら俺の尻って色気あるかもって思った、ふふっ。でもそれはちょっと、やっぱり縮んじゃうなあ。」
「おっとそれは早速施術しなきゃね?」
「うんっ、頼むよぉ。」



  十二月とは思えないなまぬるい空気を感じる日々が続き、年が変わった。
  私も年を重ね、色んな地獄を見てきたり体験をしてきた。…もう十分だ、これ以上残酷な世の中を見たくない、体験したくない。そう思ったとて世の中は淡々と残酷な事を私に見せる。
  地球にとってはにきびが出来たくらいに過ぎないのかもしれないが…虫けらの様な私には耐え難い事ばかり起きる。


  元旦から仕事での通勤中、西宮駅に着いたがそこから電車が止まった。
「地震が発生しました、安全確認の為暫く運転を見合わせます。」
阪神電車の駅員のアナウンスがはいった。
  なんとなく揺れた様な気はしたがはっきりと分からなかった。震源はどこだろうと端末に目をやると、地元だ。
  大津波警報‼︎……連絡帳で分かるだけ連絡をとった。
「アンタんとこ避難しないと‼︎津波大丈夫なん?」
「ここは海抜高いから大丈夫やと思うゲン。わざわざ気にしてくれてあんやと、デコちゃんも昔神戸がぁ大地震に遭ってひどかったもんね。」
   端末で返信もあった。
「いま、車で逃げてる。」
「ウチは高い所から物が落ちたりしたけど大丈夫だよ、ありがとう。」
「今富山に遊びに来てたら揺れて。でも家は大丈夫みたい…。」

(途中です、すみません)

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