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また一つ失ったもの

「捨てる」ことよりも「失う」ことの方が本来の自分が何者なのかを教えてくれるのかもしれない。

今よりも若い頃の私は、目の前のことを満足にこなすにはいつも無知だった。

しかもその無知は歳を重ね、経験することでしか改善できないものだった。

だから常に無知な私はいつも失うことを恐れ、そのためにこれまでにさまざまなものを失ってきた。

そして何年も経った今も、私は目の前のことに対していつも自分が無知だと感じる。

ただ、若さを失うたびに私はその無知を少しずつ楽しめるようにはなった。

同時に失うことへの恐怖も少しずつ失いつつあるのかもしれない。

無知を楽しめるようになり、恐怖を失っていけば、最終的に何も失うこともなくなる。

そんな私は今日また一つ、若さを失った。



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