旅の始まり〜第1番 書写山圓教寺〜

それは秋のある晴れた休日のこと。
旦那が突然、
「書写山へ紅葉を見に行こう」
と言い出した。
"書写山"とは、兵庫県姫路市にある書写山圓教寺というお寺のことである。
「いいねー!行こう行こう♪」
せっかくの休日、どこか行きたいと思っていた私は、そんな旦那の誘いに乗ることにした。  

書写山までは車で1時間ほどである。
「車で1時間」
を近いととるか遠いととるかは人それぞれだが、少なくとも田舎に住んでいて常に車移動が当たり前な私達からするとそこまで遠い訳でもない、いいドライブコースだ。
市街地を抜けて山沿いの道を抜け、川に沿って走っていくうちに書写山への入り口、書写山ロープウェイが見えてきた。
「あれ?」
ロープウェイ前の駐車場へ入る道に渋滞ができている。
やはり紅葉シーズンともなると人が多いのか…。
少し迷ったが、
「せっかくここまで来たのに帰るのも…」
と思い、その渋滞の列に並ぶことにした。  

渋滞しているからには、かなり待たなくてはいけないのではないか?
私達は覚悟した。
しかし、意外に入れ替わりがあったようで、数十分くらいで駐車場に入ることができた。
車を停めてロープウェイへ向かう。
こちらでもかなり人が多かったが並ぶことはなく、ほぼ満員という状態で出発。
5分ほどで山頂の圓教寺へたどり着いた。
しかしここからがまた大変だ。
ここから本堂の方まで約20分、少し上り坂になった、ちょっとしたハイキングコースのようになった道を歩いて行かなくてはいけない。
少し息が切れたが、数年前に参拝した時よりはまだマシだった。
きっと時々旦那について近所の山を歩いているのが良かったのかもしれない。
ちなみに私達は脇目も振らずに通り過ぎたが、一応追加でお金を払えば車で送迎もしてくれるようだ。  

そうしてハイキングコースのように木々が生えた参道を通り過ぎ、延々と続く石段を上って、私達は無事に本堂である摩尼殿にたどり着いた。
眼下には赤く色づいた景色が広がっていた。とても壮観だった。
早速写真を撮ってみたが、写真にするとその壮観さが失われて狭い感じになってしまった。
やはり、実際にこの目で見る以上にいい景色は存在しないのかもしれない。  

そんな私は参拝後、ここであるものを購入することにした。
「播磨西国三十三所」の御朱印帳である。
購入する際にお寺の人から、
「これは播磨西国の分ですが、西国と間違えていないですよね?」
といったことを念押しで確認された。
きっと間違える人がいるのかもしれない。  

播磨西国三十三所とは、一般的に有名な「西国三十三所」の兵庫県版、といったものだ。
調べてみると、播磨西国三十三所ができたのは江戸時代頃と、かなり歴史があるもののようである。
当時は今みたいに車がある訳ではなかったので、現在の関西一円を巡らなくてはいけない西国三十三所だと、制約があって行けない人もたくさんいた。
そんな人でも西国三十三所巡礼をしたのと同じ功徳を得られるように、ということで誕生したのがこの「播磨西国三十三所」ということらしい。  

私は現在、西国三十三所めぐり真っ最中である。
といっても「行ける時に行ける場所へ」「現地の料理や観光も楽しむ」という価値観での西国三十三所なので、かなりマイペースに巡っている。
そんな訳でまだ西国三十三所も終わってないのに手を出すのも…と少し迷ったのだが、思い立ったが吉日、ということで始めることにした。
播磨西国三十三所用の御朱印帳が手に入る場所が限られているからという理由もあるのだけれど。  

そんな訳で播磨西国三十三所の御朱印帳と圓教寺の御朱印を無事に手に入れて、私はワクワクした気分で摩尼殿を出た。
その後は以前に映画のロケ地として使われたという常行堂を見に行き、少し休んでから帰ることにした。  

"巡礼"という旅の中でどんな出会いがあるのか?
私はすごく楽しい気持ちで、旦那と一緒に帰りのロープウェイに乗り込んだ。