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【超短編小説】街

俺はコンビニの前に一人立ち、タバコを吸っていた。
ついこの前まで暑かったというのに、最近急に、涼しくなって来た。
秋の気配が近づいている。  

目の前を、いかにも幸せそうなカップルが、手を繋いで歩いている。
俺は「チッ」と小さく舌打ちする。
こちらが見ていて眩しく感じるくらい、美男美女である。
ああいう、いかにも人生楽しそうな感じの人種が、俺は嫌いだ。  

俺は、気分が下がったから、少しぶらぶら歩く事にした。  

俺は生まれも育ちもこの街に住んでいる。
昼も夜もガヤガヤしていて、決してキレイな街とは言い切れないけど、俺はこの街が好きだ。
俺は、ぼーっと空を見上げながら、歩く。
特に行くあてはないけど、こんな時間が好きだ。  

その時、
「おお!」
いきなり呼びかけられ、俺は振り返る。
近所に住む、友人が立っていた。
「こんな所で何してるんだよ? どっか行くのか?」
彼は、やたらと俺に食いついてきた。
いつもの事だ。
「いや、別に。」
俺が返すと、彼は、
「今から飲みに行かないか?」
と誘ってきた。
飲みにって、まだ昼だぞ?
俺は思ったが、面白いから、
「いいよ。」
と返した。  

友人と、いつもの居酒屋に行く。
椅子に座り、俺達はくだらない話に花を咲かせる。
取るに足らない、明日になれば忘れているような、くだらない話題だ。
でも、そんな時間が、俺の息苦しい日々に、ちょっとだけ、風穴を開けてくれる気がする。  

俺は決して、あのカップルみたいに美人にモテる事もないだろうし、金持ちになる事もないだろう。
最近は特に飲み過ぎている自覚もあるし、健康に自信はない。  

でもなんだかんだで、こんな社会不適合者のどうしようもない俺も、なんとか毎日、生きる事ができている。
これ以上の幸せが、あるだろうか。  

俺はそんな事を思いながら、また、ビールを飲んだ。  

ー終ー