エッセイはじめました <雨の思い出>
雨が好きかどうか聞かれれば、特別嫌いというわけではない。高校時代は、甘っちょろい学校だったので大雨警報のみの発令で休講になった。梅雨なんかは連日休講なんてことも少なくなかった。私は学校が好きだったので、この頃大雨は好きじゃなかった。
雨の日にはいつも思い出す出来事がある。その出来事も、高校時代のことだった。
その日、外は雨だった。駅から学校までは地下街があり、うまく歩けば外を歩く距離は短くできた。雨に濡れるのは避けたかったので、私は無論地下街を行く。そして、地下街から学校までのほんの少しの距離を傘を差して歩いた。
学校に着き、私を見た担任の先生がひどく驚いた顔をしている。
「ふうちゃん、どうしたの!」
どうしたもこうしたも、今学校に着いたばかりだ。私は何が何だかわからない。先生は私に言うのだ。
「どうしたの?!そんなずぶ濡れで!」
これが私の雨の思い出だ。うーん、知らなかったが、どうやら私は傘を差すのがえらく苦手らしい。いわれてみれば、雨の日は傘を差して歩いてもたいがい濡れる。かなり濡れる。家族と歩いていても、みんなはカバンだけ濡れていたりするのに、私はカバンはもちろん、服の色が変わるくらいまで濡れている。そんなことがかなりの頻度であった。
一度、大雨でとても悲しい思いをしたことがある。私は高校時代に一年半くらい、未就園児と遊ぶボランティア活動をしていた。その日は大雨で、学校は休講だったが、それでもボランティアはあるというので電車に乗って、雨のなか歩いて、ボランティア先へと向かった。それは確か夏の頃で、屋根があるところではあったものの、外で大雨のなか流しそうめんをした。なかなかクレイジーである。どうにか流しそうめんを終え、「大変だったねえ」なんて言いながら私もそうめんを食べる。朝は、「正直こんな大雨のなか行きたくないなあ」なんて思っていた私も大変満足していた。そして、帰りはまた大雨のなか歩いて、電車に乗って帰る。帰りは雨の激しさが増していた。家に着いたとき、私は全身ずぶ濡れで洋服は絞ると大量の水が出た。髪もお風呂上がりのようだし、カバンは中身までびしょびしょだ。
あっ
私は左手首に目をやる。その日は私のお気に入りの、漫画「おやすみプンプン」の腕時計をしていた。そして、そのプンプン腕時計の針は見事に止まっていた。
やってしまった。大のお気に入りなのに、やってしまった。そう。プンプン腕時計は防水ではなかったのだ。
雨が好きかどうか聞かれれば、特別嫌いというわけではない。ただ、梅雨という季節がある国に生まれて十九年、もう少し上手に傘を差せるようになりたい。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?