見出し画像

エッセイはじめました <ドライアイス>

 三月半ばから、某大型スーパーの食品レジで働いている。高校生のころに働いていた職場で、三月に大学合格の報告をしに行ったところ、従業員不足ということで、私は私で大学が始まるまで時間があったので、再び働かせていただけることになったのだ。


 食品レジでは、お客様に尋ねるべきことが多くある。まず、誰にでもお尋ねするのが、 レジ袋はご入用ですか? そして、お弁当をお買い上げになったお客様には、 お箸はお付けいたしますか? もしYESだった場合には、 何膳お付けいたしましょう? また、ワインや大きな背の高いお酒の場合は、 お酒用の袋はお付けいたしますか? 冷凍食品をお買い上げのお客様には、 ドライアイスはご利用ですか? である。


 そう。「ドライアイスはご利用ですか?」。私はこの言葉を一日に何回も何回も発するのだが、七割五分くらいの確立で伝わらないのだ。 えっ? 何? はあ? あぁん? 何度聞き返されたことだろうか。私はいたって普通に「ドライアイスはご利用ですか?」と言っているのだ。いや、もしかしたらそれは普通に言っている「つもり」なのだろうか。もし、私の「ドライアイスハゴリヨウデスカ」を聞き取れる人がいたら、その人はきっと……


*****


こんばんは いらっしゃいませ
ピッ ピッ
レジ袋はご入用ですか?
はい、お願いします
かしこまりました お付けいたします
ピッ ピッ ピッ
お箸はお付けいたしますか?
うーん…と、二膳お願いします
はい、二膳ですね お箸二膳、お付けいたします
ピッ ピッ ピッ ピッ
ドライアイスはご利用ですか?
ああ じゃあお願いします
えっ……
えっ… あ、なんか……だめでした?
私の…わ…私の「ドライアイスハゴリヨウデスカ」がわかるんですか…
??? ……はい、わかりますよ?
彼女はおかしそうに目を細める。おもしろいことを言う人だと思ったのだろうか。


*****


これが、私の一生の友人となる人との出会い(妄想)である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?