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「時給1000円とあんこ」のバイト。

自分の実家の最寄駅から徒歩1分の小さな商店街の一角に、むかしながらのお餅を売っている「マルヤ」という小さな店がある。
四国にある小さな町出身のおばちゃんと、その隣町で育ったおじちゃんの二人で経営をしている。もう、この場所にお店を構えてから、40年くらいらしい。

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マルヤは、自分が幼稚園の時から通っていた(おばちゃん談)。
電車通学をしていた小・中学生のときは、学校から帰るときに必ず寄っていた。
自分の好物はあんこと焼き芋だけど、祖父母と一緒に暮らしていたということだけではなく、多分、マルヤのおかげもあると思う。(毎週のようにあんこのお菓子食べてたら、そりゃそうなるよね。)

昔ながらの、もち米だけの、添加物ゼロのお餅をつかった和菓子は、本当に、たまらなく美味しい。

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おばちゃんはめちゃくちゃ気前が良くて(おばちゃんのことを説明するのにしっくりくる言葉が見つからないので今の所「気前がいい」を使っている,,,けどちょっと違う感じもする)、何かマルヤで買うたびに、ものすごくおまけをしてくれる。
470円のあんころもちを買ったら、普通に売ってるお赤飯おまけしてくれたり。お団子買ったら、一緒にゼリーと饅頭をおまけしてくれたり...毎回そんな感じで、逆に申し訳なくなる、というか小学生ながらにちゃんと儲けられているのか不安になるくらいおまけをしてくれていた。
いつも、「いいよ、いつももらってるから」と言っても「大丈夫だから持って帰り〜」
といってお土産を持たせてくれる。そして、おじちゃんはそんな様子を笑って見守る。

そんなお店だ。

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大学生になってバイトができるようになってからは、年末年始や端午の節句など、マルヤが忙しくなる時期に短期でお手伝いに入っていた。

今年11月ごろ、今年も正月やるんだったら手伝うよ〜と声をかけたけど、今年は二人とも大病をしたからやらない、と言われていたので、年末はのんびり、家の手伝いをしたり部屋の片付けなどしながら過ごそうと思っていた。

でも、12月28日の朝、突然電話がかかってきた。
「今年やっぱり餅やることにしたからきて欲しい」と言われ、とんで行った。


最低時給が985円のときも、1013円になった今も、計算しやすいから、時給は1000円。
休憩もちゃんとあるわけじゃなくて、「お客さんがきてないとき」なので、日によって、取れたり、取れなかったりする。
しかも、何時に店じまいするかも日によるので、何時間働くことになるのかも、行ってみないとわからない。

多分、普通のバイトを探しているのだとしたら、すすんでは選ばないであろう条件。それでも、今年は6人のバイトさんが入れ替わり立ち替わり、手伝っていた(直前に正月の餅販売が決まったので、それぞれ予定がすでに決まっており、6人で色々やりくりをしていた。)
やっぱりそれは、おばちゃんとおじちゃんの人徳なんだろうなと思う。


正直、このおばちゃん達の決断には、驚いた。二人とも大手術してたのを知っていたし、おじちゃんは、いくつか商品の作り方を忘れてしまうくらい、ぼけてきてしまっているので、誰が、いつ、どんな注文でやってくるのかもわからない中で、単価の高いお餅の製造販売をするのは、二人にとってかなり負担があるのではと思っていた。聞くと、今年はやるつもりがなかったけど、正月のお餅を売って欲しい、というお願いがたくさんきたので、今年もお餅を作ることにしたのだという。
「今年が、お正月お餅販売最後の年になるかもしれない」という感覚はすごくあった。だから、知人に状況を説明して、いくつかあった予定の時間を全てずらしてもらい、4日間、全日バイトに入れるようにした。

正直、4日間のバイトはかなり大変だった。例年よりも多い注文ミスや、おじちゃんがボケてしまっていて品物の大きさが異なったりして作り直したりする時間のロスなどが重なり、例年以上のてんやわんやで、毎日、家に帰ると、すぐにベットに倒れこんで寝た。


二人の手術費や入院費、入院期間に営業できなかった分の収入ロス(そして普段からめっちゃおまけしているので、そこでも「儲け」はあまりないわけで)今、ちょっとお金が大変なんだな、というのは、たまにおばちゃんのとこによって話を聞く中で感じていた。

自分は幼稚園の時から約20年ずっとお世話になってきたことや、(約20年の積み重ねを考えたら)ものすごい量のおまけをくれた、その優しさにお返しするつもりでお手伝いをしているので、お題をもらわなくてもいいくらいの気持ちでいて、それを伝えもするんだけど、おばちゃんは絶対にお金を渡してくれる。

おばちゃんは、働く時間にも妥協しない。マルヤにきた時間を記録して、15分単位で払ってくれる。
でも、私は、おばちゃんのお店の経営が苦しいのを知っているから、端数とかは別にもらわないでもいいよといって。

その二人の折衷(妥協)案が、「時給千円とあんこ」だった。

そんなわけで、私は今年の正月、3万2千円と、あんこ3パックをもらってきた。

たぶん、普通のバイトだったら、あんまりない「給料」。
私が実家生だから、お金の金額にとらわれ過ぎずに働ける、というのは、もちろんある。
でも、こういう「資本」の回り方も実際ある、というのをシェアしたくて、noteを書くことにした。

うまくかけているのかはわからないけど、(これを「完成」ということにして、投稿するまですでに3日かかっているw 自分の日本語レベルだと、もはや完成したということにする、思い込みの問題に近い気がする)
LDSのチャレンジということで、投稿してみることにする。

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マルヤは、また5日からー今日から、お店を出している。

これからも、マルヤが閉店するまで、お土産をもらい過ぎてお店の経営が心配になってしまわないレベルで顔を出して、あの、変わらないお餅をめでたいなと思う。


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12/31 午後9時半。お店を閉めた直後にとった写真。
私の知っている(留学前=1年前の)おばちゃんは、もっと背が高くてするする歩いていて、よたよた3分の一くらいのスピードで歩く姿に少し悲しくもなったけど、それでもお店を続ける姿に、元気をもらいもした。

おばちゃん、今年も一年、お疲れ様でした。

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