アニメ『境界戦機』の個人的な感想 第21話編(唐突すぎるなんちゃって政治劇)

前回北米同盟に対抗する形で他の三つの経済圏から新日本協力機構(以降新日本と呼称)を立ち上げるからと協力体制を取ることになったヤタガラス。その選択が正しかったのかという問いやキャラの葛藤がありそうなものだが当のヤタガラスがノリノリということでそれは問題ないらしい。

そして先んじて新日本と北米で会談するからとアレクセイとアモウが東京まで呼ばれることになった。
それで東京に着いたアレクセイらを出迎えた人間達の中にアモウを指名したブラッドの姿を見て表情を固くするアモウ。
マトモに因縁の描写されていない相手にかえって怪しいと思われるリアクションをするものなのか…というのはこのアニメでは通用しないのは言うまでもないが。

ホテルまで連れられたアモウはテレビで新日本との領土返還交渉に出向いた北米の議員が狙撃されるのを見てしまう、そして何を思ったかアモウを庇うアレクセイ。

ここのアレクの行為も「誰かに撃たれたわけでもないのに何でアモウを庇ったのか」よく分からないのだが、それよりも北米の議員が「一体誰と交渉をしようとしていたのか」もサッパリである。アンタらんとこの軍隊の副司令がテロリストとは交渉しない!とか言ってたのをあっさり反故にするんかいと。

アモウら以外に新日本から誰か来た様子もないがリモート会談でもするつもりだったのか?でもそれならわざわざ迎賓館?に出向く必要もないように思える。

こんな事があったせいで行動に制限をかけられてしまうアモウらだったがそこにブラッドが面会してくる。軍人が尋問をするのかと訝しむアレクセイにあくまで個人的な意志で面会をしに来たに過ぎないと返すブラッド。
そんなブラッドを見たアモウはいきなり脳内連想ゲームを展開。アモウが聞いたはずのないナユタの発言まで引っ張り出してトライヴェクタ施設の襲撃に北米軍、ひいてはブラッドが関与してるのではと考え怒りを覚えるもアレクセイに制止される。
ここで止めたアレクもまさかアモウが連想ゲームやってたとは思わないだろう。アレクが一番マトモとか初登場時の彼の姿を思えば誰が予想できたか?
そしてここでも『子供に怖がられた場面』を思い出していたアモウにやっぱりそこなのかと脱力感を感じるのであった。

さて北米軍の副司令が会談を行い、北米と新日本の領土交渉の中止と狙撃事件の捜査を行っている旨を述べる。そこで記者からの質問という形で新日本が事件に関与しているという印象操作を行い実質的な新日本への宣戦布告を行うのだった。
これをテレビで見ていたゴベールは『見事な世論誘導だ』と誉めちぎったり『これで新しいビジネスが出来る』と言ったりでご満悦の様子だが、よくよく考えるとゴベールは黒幕というよりアドバイザー兼人員派遣のようなものになっていて北米の側が率先して悪巧みをしているに見える。

正直作り手の側ですら『ゴベールに唆された北米軍が暴走している』のか『ゴベール抜きにしても北米軍が悪さをするようになっている、あるいは元から悪どい手段を使うのも辞さない』のか曖昧にしたまま進めてしまっていたと考えざるを得ない。

会談の場面に前後して「境界戦の発端は北米支配領域で起こった狙撃事件だった」との発言もあるから認識としては後者に寄っているとも取れる。

それにしても二期になって唐突にアメリカ悪玉論を主軸にしたのは一期における北米の描写とあまりに食い違い過ぎていて「パラレルワールドかよ」と言いたくなってしまうが、そもそもこのアニメにおいて設定の齟齬は当たり前であった。
よくもそんなものを地上波に流そうと思えたものだ。

その次に始まるのは北米軍による自由アジア圏への侵攻である。
ここでいきなり新日本を攻撃したら「あっ(察し)、ふーん…」されてしまうのでまだ分からなくもないのだが、これに対してキリュウらが「もしこのまま自由アジアの支配圏が狭まれば日本からの撤退もあり得る。そうなっては新日本構想は破綻する」とか言い出している。

かつて統治代官による人身売買などの悪行が明るみになったせいで威信が傷付いた経済圏を後見人として新しい日本!…とかやっぱりあり得ないよな、という気持ちを新たにした。これ絶対に新日本でも同じことするんだろとか陰口叩かれてるよ…

まぁそんなこんなで自由アジア軍を助けるために新日本にいた(んだよね?)ガシンらが向かうことになった。
…これやっぱり離間工作だよね?アモウは東京、ガシンは中国地方へ、シオンは新潟で待ちぼうけ。最高戦力が各地にバラバラにされるとか普通にヤタガラスピンチじゃねーかと。

ともあれ場面は戦場に移り、北米軍の人海戦術に圧倒されながらも踏みとどまる自由アジア軍の姿が出てくる。
それに向かい「お前達(自由アジア軍)の動きは単純なんだよ!」と棒立ち横並びで部隊展開している北米軍の指揮官、お前自軍のこと棚上げしてよく言えるなと。
しかし自由アジア軍は自由アジア軍で橋を落として遅延工作しようとしたら川の深さが思ってたより浅くてアッサリ通過されちゃったりとポカやってるから呆れてしまう。

そんな再び巻き起こったバカのバトルロイヤルに真打ち登場。
指揮権を譲渡された自由アジア軍の機体に謎のホッピングさせたと思ったら、足が丸出しのシールド搭載型ガトリングガンで棒立ち横並びの北米軍部隊をなぎ払った後にガトリングガンをその場に放っぽりだしてサブマシンガン二丁持ちで敵のど真ん中に単身突入するガシンとケイのお出ましである…!

いやこれ自分で書いてて相当頭悪いよなとなってしまう。
複数の機体が一糸乱れぬ様子でピョンピョンしだしたのを見た時思わず吹いてしまったが、それはまだ序の口で実弾もレーザーも効かないが足元を全くカバー出来ていないシールド頼みの固定砲台やったと思いきや何故か僚機も連れずに敵中に突っ込んでいきサブマシンガンを両手にして敵を一方的に倒すシーンに至っては大分前に見た実写映画『デビルマン』さながらのオトボケ具合を感じてしまった。流石にアレよりかはマシだが。

とにもかくにも北米軍を撃退することが出来た新日本陣営だがこれを重く受け止めた北米軍がタダで済ます訳もない。その証拠に副司令も声にバラエティ番組みたいなエコーがかかるレベルでご立腹である。
そして実質的に囚われの身であったアモウらにブラッドが接触してきた。彼はアモウらに対して偽装IDカードを渡してここを離れるよう促す。思惑が読めないがそれに乗ったアモウらはホテルを抜けて仲間のいる場所に戻るために走り出すのであった。

間違いなくお話は進んでいて作画も問題はない筈なのに、見ていて何処となく違和感が拭えない。それはやはり特定の陣営…ここでは北米軍を無理矢理に悪玉にしようとしているからであると自分は考える。
強引な善悪二元論で話を進めるのは一期からしてそうであったが、二期になり明らかに序盤がアモウが容赦なくなったと思ったらアッサリ改心するとかいう無意味なグダグダで時間の無駄遣いをしてしまった。
そのせいで話の展開に説得力を持たせられないまま進めてしまうという一期よりもかなり不味い状況に自分で陥ってしまっている。
悪手であるという前提で話すが、二期から出演するキャラに事態の解決をさせるというテコ入れも出来たはずだ。
しかし二期からの出演キャラが実質ゲストキャラみたいなぞんざいな扱いになってるくせに一期からのキャラに余計な設定生やしてキャラへの印象を悪くしたり関係性をおかしく思ってしまうものに『改悪』はしたりする。
この作品作ってる会社のお偉いさんが以前関わっていた作品の悪いところが余計に悪くなってお出しされるとか地獄かな?

さて話を戻すと、来週で脱出劇を終わらせたとして残り2~4話でどうにか出来るものではないだろう。

前線の北米軍をやっつけたところで新日本はあくまで本来の日本政府とは別物である。普通に考えれば日本人同士の内乱に陥り世界から「勝手にやってろ」と見放されるエンドになりそうなものだ。
しかしこのアニメは『境界戦機』、どんな頓痴気な展開が起こっても不思議ではないのだ。次回も身構えていこう。


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