アニメ『境界戦機』の個人的な感想 第一期総括編①(展開ありきのキャラ付け)

人生なげやりな少年がロボに乗りレジスタンスに参加、下働きをやってるうちにいつの間にかそれにのめり込んでて、挙げ句にしなくていい特攻かまして生死不明…
これが境界線機の一期の物凄い大雑把なあらすじである。これだけでも「何だこりゃ?」と言いたくなるが、細かいところまで見ていくとその気持ちが余計に膨らんでくる。

まずこのアニメ、展開を優先させるせいかその場その場でキャラが変わるかマトモなキャラ付けがされてないかのどっちかなのだ。
一期終盤で唐突な悪堕ちフラグを立てられたブラッドが前者の、中盤からの登場で居ても居なくても問題ない程度の存在感しかなかったシオンが後者の良い例であろう。
アレクセイのようにそういう印象が薄いキャラもいない訳ではないが、如何せんそういうキャラに限って登場シーンが少ないのだ。

しかしこの話で取り上げるべきはガシンであろう。
亡き父の遺志をくんで冷徹なレジスタンスとして動いてるのかと思ったら、父の仇のゴーストに怒りを剥き出しにして突撃をかます。
ついでに言えばかつての兄貴分が敵に寝返っていたのを身内の情からか甘い対応をしたり、「戦うことで人助けしてる」と言ったと思ったら「オレには仇討ちしかないんだ」と言い出していちいちキャラのスタンスが安定しない。
それに限らず口にしたことが悉く裏目に出たり拙い一面を晒されたりとその扱いはコメディリリーフというよりも道化役と言った方がいいのかもしれない。

ガシンのようなキャラが貶められる場合、大抵はそれの反対に主人公が持ち上げられることになると考えられるが、このアニメではそれすら外してみせてくる、勿論悪い意味で。
このアニメの主人公であるアモウだが、ある意味で誰よりも扱いが悪いのだ。というのも5話までは彼を中心にして話が進行していたのだが、6話でマトモな活躍がなかったと思ったら急速に『モブキャラ化』が進行し、主体性の感じられない言われたことだけをするだけのキャラに成り下がってしまうのだ。
その情けない有り様は5話で威勢よく啖呵を切っていたのも相まってかなり強く印象に残ってしまい、それが終盤になって多少出番を増やしたり格好つけた物言いをさせたところで到底挽回できるようなものではなくなっていた。

雑なやり方で退場させられた(?)アモウ。
キャラが不安定なガシン。
居ても居なくてもどうでもいいシオン。

主役サイド、というか主役格であるはずのキャラがこれであるというのも中々ないが、より致命的なのが敵方のキャラ達であろう。

北米軍の一員ながら敵地に入り浸りどんどん仕事をしなくなっていくブラッド、真面目に仕事をしている筈なのだが三枚目な印象の拭えないアレクセイはまだ良い方だ。
他の勢力圏…中国とオーストラリアが元ネタらしい連中に至ってはマトモなネームドすら用意されておらず、現場回りを嫌がってるくせに柄の悪い軍人とかアモウに脅された途端それまでの強気が嘘のようにびびり散らした悪代官とかお粗末なキャラばかりなのだ。
ここまでくると欧米を上にみてそれ以外を見下している性根の人間がスタッフにいるんじゃないかと勘繰ってしまいたくなる。

とにかく視聴者は全13話を通して敵にも味方にも心から共感出来るキャラがおらず、そればかりか決められた段取りをやってるだけのお粗末な芝居を見せられ続けた訳である。
しかしこの点について演者の方々に責任はないことは明らかであり、責めを負うべきはこのシナリオを書き、また了解を出した人間らだと言っておきたい。

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