アニメ『境界戦機』の個人的な感想 考察とも言えない感じのアレ編①(ここが変だよ!新日本協力機構)

前回は全エピソードへの感想も一段落したので総括記事でも書いて終わらせようとしたものの中々何から話したらいいのか決められなかったので時間が掛かってしまったが、結局その前段階として色々とツッコミが必要な所を思い付き次第話していくことにした。

今回話すのはアニメ二期後半において間違いなく主軸要素といえるが同時にそれまでの話どころかアニメ全体のコンセプトに真っ向から喧嘩を売っている『新日本協力機構』についてである。

まずこの新日本協力機構(以降は新日本と呼称)が設立されることになった経緯について簡単に説明する。
日本を分割統治している4つの勢力のうちの3つ…
大ユーラシア連邦(以降ユーラシアと呼称)
自由アジア貿易協商(以降自由アジアと呼称)
オセアニア連合(以降オセアニアと呼称)
…以上が最後のひとつである『北米同盟』相手に負けが込んだことにより協力するようになり、その一環としてそれまで日本解放を掲げて活動していた主人公らのいるレジスタンス組織のヤタガラスに土地の一部を譲ることを提案したのが発端となっている。
これに対してヤタガラスの代表が経済圏との調整や他レジスタンス組織を説得した後に受諾したことで、新日本の立ち上げが成立したのである。

つまりこの新日本とやらは占領している側の経済圏の都合ででっち上げられた傀儡国家(のようなもの)であり、そこに特定の者ーここで言うとヤタガラスの面々-以外の日本人の意向などは全く汲み取られていないのである。
何だったらヤタガラスは「何か強いオリジナルアメイン持ってるから」というだけで新日本を任されていて、実際のところは『雇われ』の立場に過ぎないのだ。

これだけみても相当な厄ネタ。無かったことにしても何もおかしくないと思えるのだがこれだけでは終わらない。

お次はそんな新日本が治めることになる土地についてである。作中でも描写がされているのだが(一応)味方となった自由アジアの飛び地の占領地帯とユーラシアの占領地帯(後にユーラシアの日本人保護区を含んでいると言われる)が中心となっている。

だが地図をよく見ると北米軍が占領している土地も加えられているのだ。敵対している相手の土地を勝手に自軍の土地に組み込むとは、中々考えられない図々しさである。

この事は同時にその土地を巡って新日本と北米同盟が確実に衝突することも意味していて、それを想定して両者を潰し合わせる手筈であるというならまぁ悪くない策であると言えなくもない。

まぁ領地以前に勝手に新しい日本であると名乗るのは北米を後見としている日本政府としては絶対に認められないし遅かれ早かれ衝突するのは目に見えているのだが。

さて北米軍から目をつけられる事が確定しているのならそれへ備えなければならないが、これについても実質的な足枷が付けられている。
新日本発足にあたり経済圏との取り決めの中に『新日本領土内へ新たに日本人を入れることを禁止(制限?)する』という旨のものがある。
これを代表は「日本人らしく生きられる場所が出来たとしても一度に受け入れられる人間には限りがある」「迎え入れる準備が出来たら緩和していく」と語っているが、デタラメも良いところである。

さてこれから話すことは結果論と憶測が多分に含まれていることを事前に話しておきたい。今までもそういうところはあったかもしれないがこの先は殆どそうなるから。

まずこの取り決めにより他のレジスタンス組織を日本各地から呼び寄せることが不可能になってしまっており、ヤタガラスと他組織が実質的に分断された格好になってしまっている。現に北米軍が侵攻を仕掛けてきた際に新日本の軍隊として数の上での主力を担ったのは後見の立場を取っている経済圏の軍隊から出向いてきた者達ばかりである。
これにより将来的にはヤタガラスは各経済圏との結び付きが強くなる代わりに新日本の外で活動していた他のレジスタンスとの関係は薄れていき、その連携は立ち消えになってしまう可能性が出てくるのだ。
そうなればヤタガラスはレジスタンスのネットワークからは弾かれて、今後経済圏の後ろ楯をなくした際に他レジスタンスからも見放されかねない。


つまり今回のヤタガラスのやりようは、かなり遠回りな分断、離間工作を自ら進んで行っているようなものとも取れてしまうのだ。


さて少し話はズレるのだが今言った分断は何も実戦部隊に限った話ではなく、その土地で暮らす民間人にも当てはまり、むしろ長期的に見ればこちらの方が問題かもしれない。
というのも後ろ楯になっている三つの経済圏のうち二つ…自由アジアとオセアニアでは『駐屯軍による民間人への直接的な加害行為』が描写されている。これは他の取り決めとして『経済圏の支配地域の日本人の権利を保証する』というものが出てくるあたり、逆説的に考えて相当なものであることが窺える。
ちなみに実際に出てきた描写だが親子への恫喝にはじまり統治代官による収奪行為、挙げ句の果てには双方の軍隊が日本人の暮らす市街地で民間人の巻き添えを躊躇せず戦闘を繰り広げてすらいる。
…これだけでも普通にアウトである。
そうした場面を見せなかったユーラシアにしてもレジスタンス組織をテロリストと見なして壊滅的寸前にまで追い詰めていたりと、日本人への扱いについてはあまり期待できるものではない。

そんな連中と嬉々として手を組んだヤタガラスを一般人が肯定するとはとてもではないが考えられず、かなりの高確率で「経済圏に媚びへつらってその手先に成り下がった裏切り者」と見なされ、他ならぬ日本人から強い軽蔑、あるいは怨嗟を向けられるだろうことは想像に難くない。

しかしこんな見えている地雷、北米への当て馬として引っ張り出されて他の日本人から蔑まれるかもしれないような提案をヤタガラスは受け入れたのである。
それもほぼ満場一致で、嬉々としてである。

次回はそれについてと北米軍と事を構える経緯などを話していきたいと思う。

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