アニメ『境界戦機』の個人的な感想 第24話編①(デタラメばかりな最終決戦)

遂に始まる新日本軍と北米軍による戦い。
日本の、ともすれば世界の行く末を左右するかもしれない決戦である…となれば普通のアニメであれば気合いの入れたアクション、見る者を盛り上げるキャラ同士の駆け引きを見せて一話の全てが見所となるようなものを用意するのが常であろうが如何せんこのアニメでは望み薄である。

そもそも今こうなっている経緯だけ切り取っても『レジスタンス組織がそれまでの活動地域から遠く離れた場所にでっち上げられた傀儡勢力のトップをやる』という実質的な裏切り行為が起点となっていることもあり主人公サイドに好感を抱ける訳もなく、かといって敵対者の北米サイドも足並み揃わない悪巧みを連発してグダグダになってしまっているという体たらく。

前提からしておかしなことになってるが、本番となるとそれに輪をかけて酷くなる。

あろうことか新日本軍、自分達の領地とした場所に『敵を入り込ませてから』戦闘をやり出すのだ、それも住宅街や港のど真ん中、あるいはインフラ設備の間近で、である。

イヤイヤイヤイヤ
待て待て待て待て

元々住んでいただろう人々の意見を一切聞くことなく勝手に新日本なる代物をでっち上げたばかりか、人が生活しているだろう場所に戦火を持ち込むなどとは、この新日本なる輩はテロ組織か何かなのか!!?

あぁ、いや、そういえばハッキリと言われてたわ。『テロ組織』だって…

しかしこの『市街地での戦闘』だが政治的な主張の正統性を巡る争いについて見れば新日本側が完敗してしまっている。
敵である北米軍が攻めてくることが分かりきっているならば北米と自分等の領地の境界線…主要な通り道に部隊を配置して迎え撃てばいい。
空からの空輸があるというなら森に潜んで対空放火を浴びせてやればいい。
時間がないというなら呑気に演説なんてしたり聞いたりしてないで昼夜問わず陣地構築に力を注ぐべきだった。

作中の軍事作戦としても物語性としても本編で採用されたシチュエーションは『職務怠慢』そのものであると言わざるを得ない。

そのくせ新日本の司令部らしき場所では「境界線で戦闘開始!」などという実際の描写とはイマイチ齟齬のある台詞が飛び出してくるんだから始末が悪い。
ならば北米軍はというと相変わらずのノロノロ移動で固まって行動し、その調子のまま呑気に橋を渡るという緊張感が欠落したような真似をしている。ちなみにその橋は後のシーンでは爆破されたらしく川を挟んだ撃ち合いをやり続けていた。
何でこいつら間抜けっぷりを競い合ってるんだ?

余りにもあんまりな展開にのっけから見てるこちらの気力を削ぎ落とされそうになるがまだまだ序の口。

むしろここからが本番である。


さて上記の戦闘だが後の台詞で「阿賀野川防衛戦」などと呼ばれていることから新潟で行われていることが分かる。しかし主力であるはずのアモウらもといメイレスの姿がどこにも見当たらない。

ならばアモウらはどこにいるのか。
何を隠そう富山県の山中、おそらくは世界遺産にも登録されている『相倉集落』にいたのだ。
ご丁寧にガシンが配置されているダムは集落付近に実在する『小原ダム』に似せてすらいる。

イヤイヤイヤイヤ
待て待て待て待て

国の文化財どころか世界遺産を戦火に巻き込むとかマジモンのテロリストじゃねぇかよ新日本協力機構。

そして先ほどの描写を踏まえてみるとこれもとんでもない問題である。
というのもヤタガラスが新日本協力機構を任されることになったのはケンブはじめメイレスの能力を当てにしているところがあった筈であるが肝心のメイレスが3機とも新潟、あるいは沿岸部で戦ってる他の経済圏の部隊から遠く離れた富山の山中に配置されており、まともな連携を取っている様子もない。
これはヤタガラスが他の経済圏に対してのメイレスによる武力支援を放棄したに等しいのだ。

ただしこれは仮に作戦会議などのシーンを入れてこれこれこういう風にするみたいなことを言わせていればそれがどれだけ無茶苦茶でもまだ『作中の当事者が話し合って決めたこと』として受け止められる可能性もあるのだ。
演説やら無駄な背景流しなんてやってないでちゃんと画面で読者を納得されることをやっていればいいものを…と思わずにはいられない。

ちなみにアモウとガシンは山中に配置されてるがシオンだけは市街地で戦闘を行っているのだが、これはまだ空中戦を仕掛けられるシオンなら町への被害を抑えられる…と考えたものの普通にミサイルをブッパしてるので考えるだけ無駄なんだろうなとしか。

最終決戦にも関わらず作戦レベルでメチャクチャな状態なのだが実際の戦闘描写も中々酷い。
敵も味方もテクテク歩きで棒立ち射撃。キャラに「今までと動きが違う!」と言わせているが絵で見せられるものとあまりに乖離してしまっているから笑えないギャグでしかない。

そうこうしてるとアモウが従える無人機を軽々と撃破する敵が現れる。何を隠そうゴーストことブレイディファントム、そしてそれに乗るブラッド・ワットである。
かくして宿敵と再会したアモウはブラッドに向かい自分のいた施設への襲撃に関わっていたのかを問いただす。
対するブラッドは思わせぶりな反応を見せるも「だとしたらどうする?」という曖昧な返事を返してみせる。
それに対しアモウはそれまで見せたことのない怒りを募らせるのだった…

しかしこれアモウが怒ってるの『施設の子供に嫌われたから』って考えると物凄くバカバカしいとしか。何せ回想があるたびそのシーンが差し込まれているのだからよっぽどである。

ともあれ次回はその宿敵との決戦…もといグッダグダなすったもんたについてはなそうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?