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【叙】シリア国内でイスラム過激派を一掃できないシリア・アラブ軍の悩み

3月23日、シリア・アラブ軍(SAA)はアレッポ西部のカハルの町を攻撃、HTSのメンバー11人を殺害した。

HTSとは?

HTSとはハイアト・タハリール・アル・シャムのイスラム武装過激派組織で、2011年のシリア内戦勃発後に猛威を振るったヌスラ前線の後任組織である。

2017年、アンサール過激派とヌスラ前線が統合され、現HTSとなっている。

ヌスラ前線はアルカイダの残党により対テロ戦争(イラク)中に結成され、アルカイダの前トップのビンラディン暗殺後、活動地域をシリアに移行した。

ヌスラ前線はアルカイダの分派組織とされているが、同組織はこれを否定している。


HTS過激派とISIS

シリア内戦勃発後から、現在に至るまでISと対立しているが、シリアをイスラム国にするという目的は同じである。

対立する理由としては
・組織間でのイスラム覇権争い
・組織を支援する国、民間パトロンが異なる
・HTSがISISを下に見ている
・活動拠点が異なり支配地域の拡大と維持に両組織とも必死である

HTS過激派とクルド統一民主党、トルコ

ヌスラ前線はシリア内戦勃発後は、SAAと対立するクルド人組織への攻撃を行うなどクルド組織とヌスラ前線との衝突は激しかった。

このシリア国内でのクルド人組織への攻撃はトルコも行っており、空爆などによってヌスラ前線をトルコがカバーしてしまう形となってしまった。

敵の敵は味方とはこのことだろうか(まあ正確に言うと全然違うが)


トルコ軍がシリア北部から撤退する事に対してのHTS過激派の反応

5月14日に大統領選を迎えるエルドアン大統領がシリア国内からトルコ軍を撤退させる可能性にHTSは危機感を覚えており、トルコ軍が撤退すれば、SAAはトルコ軍の目を気にすることなく、HTSへの大規模な攻撃が取れる。


HTS過激派とIS過激派の活動拠点

今回、HTSが攻撃を受けた場所は、シリア北部のアレッポ県西部であるが、3月16、17日にはシリア北西部(アレッポ国際空港から見て南西)のイドリブ県のナハサバ山のSAAの軍事拠点を攻撃するなどアレッポ県、イドリブ県での活動が大きい。

同日3月23日に起きた、ISによるトリュフ採取人への殺害は、イドリブ県より更に南のハマ県で発生しており、イドリブ県とハマ県は隣接している。

隣接しているのに、何故ISとHTSは大きく衝突しないのだろうか?

・両組織ともSAAを敵とし、シリア・イスラム国化の野望が同じであるゆえに、その野望が達するまでは相互不干渉と言ったところ。

・ヌスラ前線はイドリブ県を拠点に、ISはハマ県などシリア中央地域を拠点に活動し、各々地域干渉を行わない。

記事・ISによるハマ県での攻撃



シリア・アラブ軍が国内の過激派を一掃し切れない理由

有志連合が動かない理由として、有志連合の2011年直後の目的としてはISIS殲滅であり、アルカイダの一派は対象外であるという屁理屈とも取れるようなものである。


イドリブ県はロシア、トルコ、フランス、ドイツの四か国会合で非戦闘地域に設定された場所だ。

現状、非戦闘地域とし設置されている地域の治安維持がSAAの最優先事項であるが、自由シリア軍やISIS、その他イスラム過激派など各地域にSAAと対立する組織が国内で展開している。SAAのみでのイドリブ県保護は難しく、ロシア空軍などが過激派に対し3月23日以降空爆を再開したが、有志連合は未だ積極的に動こうとしない。

トルコ軍は先ほど述べたように、HTSと関係性がある故、イドリブ県での軍事攻撃は行えない。

イスラエル軍はアレッポ県における空港やSAAの軍事拠点を攻撃している。

この様な様々な理由で国内の過激派を掃討するのは現状では不可能だ。

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