1:手をつなぐ

文豪とアルケミストのキャラで30日CPチャレンジ(連続で書くとは言ってない)

史実に基づかないし、文アルに寄せてるかも怪しい、完全個人解釈で好きに書いています。
またCPは日によって変わります。閲覧は自己責任。


本日は鴎重。

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 深く槍を突き刺すと、目の前の羊を模したような侵蝕者がゆっくり、バラバラと崩れ去る。

「……これで最後か」

 森鴎外はそうつぶやくと、自分の頬に手を当ててみる。浅く入った傷から、少しだけ血が滴っていた。軽く手でぬぐって周囲を確認する。
 今までこの不調の獣と言われる侵蝕者に後れを取る事はなかったが、最近何かしらで強化されているのか、油断するとあっという間に動けなくなるまで深手を負う。特務司書が加護と言っていたが、衣装に縫いつけた錬金糸で、とどめが刺される前に図書館に帰還可能な術を施されているため、以前のように潜書先でそのまま戻ってこれなくなる……という事はなくなったのだが。
 会派の皆の状態を見ると、やはり予想外に苦戦したのか、皆肩で息をしていたり、倒れたりしている者もいる。幸いにして田山花袋は被弾が少なかったようで、近くで膝をついていた北原白秋に肩を貸していた。鴎外も、自分より少し先で倒れている中野重治を見つけた。かなりの深手を負いつつも最奥に向かったせいか、倒れたままピクリとも動かない。気を失っているのかもしれない…と思いつつ近づいて声をかけた。

「中野くん、意識はあるか」

 おそらく返答などできない状態であると想定していた。背負っていくことになるだろう…と思っていた鴎外の予想は外れ、中野が返事をした。

「意識は……あるよ。さすがにこれ以上戦うのは……厳しい、かな」
「無理に動かなくて良い。周囲の敵は掃討済だ……浄化は、終わっている」

 鴎外がそう話しても、中野は自らぐっと身体を起こし、自分で周囲を確認した。鴎外を信用していないわけではない。だが、中野は自分の目で見て確かめたかった。
 中野は森鴎外に対して思う所があり、今でも批評を書こうと試みているが、その批評内容はいまだ的を得ない、ぼんやりとした内容になってしまっている。今では図書館で文学を守る仲間として上手くやっていく意志もあり、無駄なつっかかりはしていないが、それと批評をする事自体は別の話である。何となく、鴎外に対して素直に言葉を受け取ることが出来ない、複雑な感情を抱えていた。

「手を貸そう」
「……大丈夫、自分で立て……ッ」

 鴎外から伸ばされた手も、素直に取る気にならずに自分で立とうとしたが、思ったより傷も深く体力が残っていなかったらしい。再び地面に膝をついてしまった。
 鴎外自身も、何となく中野とは壁があるように感じているので、下手に近づきすぎないよう距離をはかっていた。本来であれば、同じ図書館の仲間である。あまり壁らしい壁は作ってほしくはないのだが……
 差し出した手を取らずに立とうとして、ふらついて立てない。きちんと診察したわけではないとは言え、見ただけでそんなキビキビ歩ける状態ではないのは明らかだった。だからと言って、肩を貸すと言っても素直に中野が応じるとも思えず、鴎外はどうするか…と思考をめぐらす。

「傷は決して浅くない。早めに図書館に戻った方が良いだろう。辛ければ肩を貸すが」
「……そこまでは、しなくても大丈夫」
「そうか。ただ、歩くのも厳しいと思う。せめて俺の手につかまれ」
「………」

 そういわれると、中野はしぶしぶと手を取った。実際、立つのも辛いのだが、さすがに肩を借りるまではしたくない。
 鴎外の手を取ると、ぐいっと力強く引き上げられ、ふらつきながらも何とか立ち上がれた。ただ、歩くとまたふらふらとしてしまう。
 取った手に体重をかけても、その手はしっかりと中野が倒れないように支えてくれる。頼りに思うのも何か悔しく、小声で聞こえない程度の感謝だけ述べて、鴎外の手を借りたまま皆で図書館まで帰還した。

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手は繋いだ(真顔)
まぁこれくらいの量なら!頑張れるかな!!笑。

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