生成AI(ChatGPT)のすごさをできるだけわかりやすく説明したい
何がすごいのかをわかりやすく噛み砕いてみようと思います。
GPTはGenerative Pre-trained Transformerの略である、みたいな小難しいことは言いませんし、ChatGPTの使い方や正しさの議論もしません。
対象読者
ChatGPTを使ったことがない方。
ChatGPTを使ってみたことはあるが、よくわかってない方。
でもChatGPT(そして生成AI)のすごさをざっくりでもいいので理解しておきたい方。
ChatGPTって何?生成AIって何?
まずは生成AIから。
生成AIとは、与えられた文章の続きを出力する仕組みです。
インターネットや書籍など世界中の情報をもとに推論を行うので、かなり高精度に続きを出してくれます。私たち人間が期待する質問や依頼や会話にはほぼ答えてくれますし、もちろん知識量もすさまじいです。
このような仕組みは2021年くらいからようやく現実的となり、急速に盛り上がってきました。
次にChatGPT。
生成AIと呼ばれる技術は様々存在しますが、GPTもその一つです。
この GPT をチャット形式で使えるようにしたのが ChatGPT です。
つまり ChatGPT は、生成AIをチャット形式で利活用できるWebサービス(アプリもあります)の一つです。
ChatGPTはどのように使うの?
チャットで何か書くと、その続きを出力してくれます。
出来が良いので、まるで人と対話しているかのような錯覚さえおぼえます。
よくある比較として、Google検索と比べてみましょう。
例は適当ですが、従来は Google 検索で「お茶 ピッチャー 黒いカビ」みたいに検索して、検索結果を自分で見る必要がありました。
これが ChatGPT だと、以下のようにチャットで尋ねる形になります。
チャットだけなの?他の使い方はできないの?
Ans: できます。
ChatGPTは、生成AIという「与えられた文章の続きを出力する仕組み」をチャット形式で提供するサービスです。なのでチャットしか使えません。
しかし生成AIの使い方は他にもあります。たとえば音声を受け付けて、それを文章に変換してから生成AIに与えるサービスをつくったら、会話の延長で使えるでしょう。実際、スマホアプリ版の ChatGPT なら可能です。
他にもつくりかた次第で、様々な使い方が可能です。
しかし生成AIを直接使う(使った何らかのサービスをつくる)のはITエンジニアの仕事です。私たち一般人は、彼らがつくったサービスを使います。
生成AIの何がすごいの?
なにがすごいかを詳しく見ていきます。
1: 出力される「続き」の精度が高い
まるで人間とやりとりしているほど自然ですし、世界中の情報をもとにしているだけあって、割と何でも答えてくれます。
難しい試験を高得点でクリアしたりもします。現時点ではチューニングが難しい&お金もかかる感じで、万能ではありませんが、たぶん東大も受かれるレベルのものをつくるくらいは可能だと思います。
何より色んな指示に答えてくれる幅広さが便利です。資料つくってとか、要約してとか、翻訳してとか、アイデア10個挙げてとか、画像つくってとか、色々できます。従来の技術では考えられないことでした。つい最近までコンピュータは厳格に命令したことしかこなせない、融通の利かない機械だったのです。
2: 精度が高いのに、返事が早い
さすがに一瞬ではないですが、数秒とか十数秒で返ってきます。
人間だともっと時間がかかりそうな複雑な答えも、人間離れした早さで答えてきます。
3: いつでもいくらでも使える
まず生成AIは機械なのでいつでも使えます。朝でも夜でも関係ないですし、何回でも使えます。無茶振りにも応えてくれます。
ただし悪用はできないようガードされてはいます。エッチなこと言わせたり、爆弾つくらせたりといったことは不可能でしょう。
4: そして安い
無料で使える分は性能や品質がしょぼいです。
ChatGPTの場合、ちゃんとしたものを使いたいなら ChatGPT Plus が必要で、これは月額20ドルです。サブスクにしてはかなり高額ですが、この技術を自由に使えるのは破格です。
API という生成AI(与えられた文章の続きを出力する処理)を呼び出すための窓口を使えば、もっと安くできます。
※プログラムが呼び出すための窓口であり、ITスキルは必要
API は呼び出した分だけ課金される従量課金ですが、Google検索のつもりで1日何十回と尋ねるのを1ヶ月やっても百円かかりません。
生成AIには宝が眠っている
API (窓口)の話をしました。
何がすごいかまだピンと来ないと思いますが、要は API という「生成AIを安価で自由に使えるおもちゃ」を誰でも使えてしまうことがすごいのです。
※再載しますがITスキルは必要。誰でも簡単に使えるわけではない
この現状はとんでもないことで、お宝が眠っていると言えます。
具体的には、現状は以下の二点を模索する状況となっています。
1: どんな入力を与えれば質の高い続きが得られるかの模索
2: 生成AIという「続きを出してくれるおもちゃ」をどう組み込むか・組み合わせるかの模索
順に見ていきましょう。
1: どんな入力を与えれば質の高い続きが得られるか
私たち人間はコミュニケーションを行いますが、このコミュニケーション、言うまでもなく奥深いですよね。
上手くやらないと機嫌を損ねたり、最悪仲違いしたりします。物騒な事件が起きてニュースになることもあります。逆に上手くできたら、驚くほどかんたんに色んなことが上手く運びます。
生成AIも同じです。どんな風に入力するか次第で、出力される続きの内容がずいぶんと変わるのです。
専門用語で「プロンプトエンジニアリング」と言ったりします。プロンプト(Prompt, 「指示」の意味)をエンジニアリング(工学的に突き詰める)するという意味ですね。
すでに何冊も本や論文がありますし、マニアみたいに持論を延々と語れるボリュームもあります。学問になるポテンシャルもあるでしょうし、もうあったとしてもおかしくはありません。その程度には奥が深いのです。
こんな奥深い世界において、いかにして上手い続きを出させるか。
現在も世界中で模索が進んでいます。
2: 生成AIという「おもちゃ」をどう組み込むか・組み合わせるか
生成AIとは続きを出力してくれるおもちゃです。
またITエンジニア向けに、API(窓口)の形で提供されています。
このAPIの使い方次第では、かなりのことができるかもしれません。
いくつか例を挙げましょう。
まずは普段仕事で使っているアプリに組み込むことです。
AI要約機能、AIで素案を作成する機能などは既にあちこちで見られます。ボタンを押すだけで呼び出せるので便利です。ChatGPT のように自分でチャットで投げかける必要さえありません。
アプリの内部では、生成AIのAPI(窓口)にどんな入力を与えて、出てきた出力をどのように加工して表示して、といったことを全部やってくれています。私たちはアプリにしたがってボタンを押したり、出てきた結果を読んだりするだけです。
要はアプリがさらに便利になります。生成AIというおもちゃが使えるようになったわけですから、これを組み込んでしまえば、かなり便利になるわけです。従来はアプリがあっても、作業は全部自分で行う必要がありましたが、それが軽減します。まるで秘書や部下に頼むかのように、かんたんな操作で済むようになります。
次にリアルタイムにAIの力を使うのも強力でしょう。
たとえば5ヵ国語リアルタイム同時翻訳するくらいはできると思います。英語に翻訳する命令、中国語に翻訳する命令、ロシア語に、ハングルに、スペイン語に――これらの命令をAPI(窓口)に投げて、その出力を受け取って、画面を反映して、といったことを裏で常に処理すればいいわけです。
このような忙しい処理に耐えうるほどの性能は、API(窓口)にはあります。となれば、あとはただのデザインと使い方の話であり、デザイナーやITエンジニアであればつくれます。
高性能で使い放題なおもちゃがもうあるので、あとはこれをガンガン使い回すだけです。
それからAIエージェントをつくることも現実的になってきました。
先日の東京都知事選にて「AIあんの」が公開されました。候補者安野たかひろさんを模したAIであり、AIが配信者のように YouTube でライブ配信を行い、視聴者からの質問にもリアルタイムに答える仕組みでした。
※選挙期間中の稼働であり、現在は動いていません。
これも内部では結局生成AIの API(窓口)を使っています。API を使って、裏の処理は全部隠して、表ではバーチャルなアバターが答えてるかのように見せているだけです。
現在はまだまだ専門的なITエンジニアが頑張ってつくって、ようやく形になるくらいですが、目処は見えていると思います。そう遠くない将来、ひとりひとりにAIエージェントがつくかもしれません。
それこそ「今、手が離せないからこいつ(AIエージェント)に話しといて」といったことが可能になるかもしれません。
そろそろキラーが出そう?
生成AIを使ったキラーアプリはまだ出ていませんが、そろそろ出てきてもおかしくはないでしょう。
キラーアプリとは普及を決定づける「すごいアプリ」を指します。以下いくつか例を挙げます。
ファミコンにおけるスーパーマリオブラザーズ
サンドボックスゲームにおけるマインクラフト
SNS におけるTwitter、Facebook、Instagram
Windows における Microsoft Office
将棋でいう藤井聡太、野球でいう大谷翔平
※アプリではないが、盛り上がりを象徴する存在としてはわかりやすい
ここまで書いてきたように生成AI、そしてこれを自由に使えるAPI(窓口)は既に整っています。この高性能な素晴らしいおもちゃが、割と誰でも使えてしまうのです。
あとは、これをどう使って何を生み出すかですね。現代は活用の段階に来ています。
活用といっても、現状細かいチューニングなどがまだ難しくて、素人には到底無理ですし、お金もかかりますが、それでも既に様々な利用例やサービスが出てきています。皆さんが普段お使いのアプリでも、AI機能を搭載したものがあるのではないでしょうか。
まだキラーアプリは出てませんが、もし出てきたらどうなるでしょうか。どんなものが出てくるのでしょうか……。
おわりに
生成AIと聞くと難しく聞こえますが、根っこは単純です。
ただ「何か文章を入力すると、その続きを高精度に出してくれる」おもちゃができたよ、しかも自由に使える窓口もあるよ、というだけの話です。
そして現状は、このすごいおもちゃを使って一体どんなすごいもの(キラーアプリ)ができるのかなー、というところです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?